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7月導入に向けて成田空港と羽田空港で顔認証システムを活用した国際線搭乗手続きの実証実験

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7月導入に向けて成田空港と羽田空港で顔認証システムを活用した国際線搭乗手続きの実証実験

 成田空港を運営する成田国際空港株式会社(本社:千葉県成田市、代表取締役社長:田村明比古)及び羽田空港国際線旅客ターミナルを運営する東京国際空港ターミナル株式会社(本社:東京都大田区、代表取締役社長:土井勝二)は、NEC(日本電気株式会社、本社:東京都港区、代表取締役執行役員社長兼CEO:森田隆之)の生体認証システムを活用した、国際線における新たな搭乗手続き「Face Express(フェイスエクスプレス)」の実証実験を4月13日にスタートさせた。

 Face Expressは、チェックイン時に搭乗者の顔写真、パスポート情報、搭乗券情報を紐付けすることで、航空機に搭乗する際の所定の手続きを簡素化できるシステム。手荷物預け、保安検査場入り口、搭乗ゲートにおいて「顔パス」で通過できるようになり、搭乗券やパスポートを提示する手間を省くことができる。これにより、搭乗手続きがスムーズになるだけでなく接触リスクも軽減され、新型コロナウイルス感染症対策にもなると期待されている。

 航空業界において顔認証を用いた搭乗手続きは、世界的には「One ID」として認知されているが、日本においては一般的に馴染みが薄く、利用客に直感的に理解してもらえるようにFace Expressというサービス名とロゴを新たに作成(名称、ロゴは成田国際空港株式会社の登録商標)、両空港では7月からの本格運用を目指している。

 Face Expressを利用した搭乗手続きは次の通り。①自動チェックイン機でパスポートを読み込ませる。②顔認証を行うかどうか同意画面が表示され、同意するとカメラが起動して搭乗者の顔データを読み取る。この際、マスクやメガネ、帽子等は取り外す。同意しない場合、以後の手続きは従来の方法で行う。③パスポートの顔写真と読み取った顔データを照合して本人確認。照合は瞬時で終了。④確認されれば搭乗券と、荷物を預ける場合は手荷物タグが出力される。⑤荷物を預ける場合は自分でタグを荷物に装着し、自動手荷物預け機に移動。⑥荷物を預け機に置いて顔認証を行う。⑦本人確認が終了すると荷物が収納される。⑧預ける荷物がない場合、荷物を預け終えた後は保安検査場へ。顔認証だけで入場できる。⑨セキュリティチェックを受ける。⑩出国審査を受ける。⑪搭乗ゲートも顔認証だけで通過して搭乗できる。なお、各ゲートでの顔認証の際には、マスクやメガネ、帽子等は取り外す必要がある。

*サービスの詳細は特設ウェブサイト参照(https://www.narita-airport.jp/jp/faceexpress/

Face Expressの利用イメージ
Face Expressによる搭乗手続きを表すロゴ

 従来の手続きだと、チェックイン、手荷物預け入れ、保安検査入場、出国審査、搭乗の5か所で必要だったパスポート提示が、チェックインと出国審査の2か所だけとなる。空港や航空会社では、人的手続きが軽減されフリーになる人員が増えることでより手厚いサービスやサポートが可能になるという。

 Face Expressの運用に参加している航空会社と機器の配置場所は、成田空港では全日空と日本航空の2社(今後順次拡大予定)で、第1・第2ターミナルのチェックインカウンターと一部のゲート。羽田空港では国際線を運航する各航空会社で、第2・第3ターミナルのチェックインカウンターと全ゲート。Face Expressは主に飛行機の利用に慣れた人をターゲットにしており、慣れていない人や家族連れ等は従来通りの手続きで対応。実証実験では、運用における課題や利用者からのフィードバックを集積して本格運用につなげ、航空需要の回復を見据えて利用可能なゲートや航空会社を拡大していく予定だ。

 本システムの導入は、航空需要の増大や人手不足等の課題に対応しつつ、世界最高水準の空港利用サービス提供実現に向け、国土交通省が推進している「FAST TRAVEL(ファストトラベル)」の取り組みのひとつで、東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて準備が進められてきた。国内における顔認証技術についてはレジャー施設の入退場管理等、既に空港以外の分野でも様々な活用事例がある便利なサービス。しかし、一方では顔認証情報は強い追跡機能を有していることもあり、利用を拒否される事例もある。そのため、個人情報保護法等の関連法令を遵守するだけでなく、旅客に利用目的や情報管理に関してわかりやすく説明し、十分な理解と納得を得ることが求められる。

 そこで国土交通省では、2019(令和元)年10月に顔認証技術の活用による個人データ取り扱い方法を検討する「One ID導入に向けた個人データの取扱検討会」を設置し、事業者が旅客と適切なコミュニケーションを図るうえで配慮すべき事項を整理。2020(令和2)年3月13日に「空港での顔認証技術を活用したOne IDサービスにおける個人データの取扱に関するガイドブック」を公表。個人データの取扱については特に厳重管理するように求められており、Face Expressに登録された情報は搭乗手続きにおける利用のみに限定。24時間以内に削除されることになっており、個人情報保護やプライバシーの配慮がしっかりなされている。

「7月からの運用に向けて様々なイレギュラー事案にシステムが対応できるように検証を行っていますが、現時点で問題は生じていません。Face Expressに登録された情報につきましては、搭乗手続きのためだけに用いられ、利用規約に記載のない目的で利用することはありません。このシステムは利便性を向上させるためのものですので、少しでも多くのお客様に利用していただきたいと考えております」(成田国際空港株式会社 経営計画部)

 2020(令和2)年度の国際線の旅客数は、成田空港が1,265,465人(前年比4パーセント)、羽田空港が260,067人(前年比1.5パーセント)と大幅に落ち込み、過去最低を記録。今年度も依然として厳しい状況が続いているが、両空港が再び多くの海外旅行客で賑わう頃には、より快適に空の旅を楽しめるシステムが整っていることになる。

(藤原 広栄)

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