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業界の慢性的な人手不足、オリ・パラ後も続く?

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業界の慢性的な人手不足、オリ・パラ後も続く?

東京オリンピック・パラリンピックが終わると慢性的な人手不足は、解消されるのではないかと予測する人の声を耳にする。確かに、東京オリンピック・パラリンピックが終わると景気の停滞感が強まると予想する経済評論家もいる。反対に、活況のオフィス市場を森トラストの伊藤美和子社長は、昨年12月末時点で、オフィスの空き室率は1.55パーセントまで下がり過去最低を記録し続けてオフィスは足りない状況にあるという。また、賃料も72か月連続で上昇しており、この状況はこのまま続くと予測している。さらに3月には、オフィスで最大規模の「東京ワールドゲート」を基盤とする「神谷町トラストタワー」はほぼ満室で稼働となるなど、活況なオフィス市場は、オリ・パラ後も企業のスペース拡張需要は根強く2022年までは堅調と予測する。その他、オフィス賃料が上がりはじめたのは、インバウンド(訪日外国人)が増えた時期と重なる。ビジネスがあるところに人は集まり、予想以上に観光客は伸びている。「カンファレンスに出るので観光もしよう」と考える訪日外国人を取り込む投資が必要という。地価や建設費、人件費などの上昇で開発や運営のコストは高くなっている一方、低金利が続き資金調達環境は悪くないという(日本経済新聞:1月21日)。

総務省の調査でも就労人口の伸びがオフィスの需要につながっている。賃料の上昇ペースはバブル期に比べて緩やかで、当面需要のバランスが崩れるリスクは小さいという。そして、政府も観光来日外国人6,000万人を目指している中で、東京都においては、建築需要は大きく変動することがないと想定すると、警備・ビルメンテナンス業の需要がオリ・パラ終了後に低下するとは考えにくい。しかも、テロ対策については、オリ・パラが終わったからといって、警戒を弱めるものではない。事実、新幹線の乗客の手荷物検査はオリ・パラが終わった後も継続するというように、ソフトターゲットによるテロ対策は、強化することはあっても緩めることはない。このような現状を鑑みて、人手不足の短期的な予想をすると、まだしばらくは、慢性的な人手不足が続くと考えるのが妥当ではないか。特に、空港保安警備業務と交通誘導警備業務の状況は、依然厳しい状況が続くと予想される。

では、長期的にはどうであろう。昨年生まれた日本の赤ちゃんは過去最少の90万人を下回り、人口の自然減は51万人余りで、人口減少は加速している。その要因の1つに団塊ジュニア世代がほぼ出産年齢を過ぎ、いよいよ人口の少ない世代が親となる。縮小する親世代が、さらに小さな子世代を生む「縮小再生産」がはじまっているといい、生産人口の減少対策は、女性の就労促進、仕事と子育ての両立を可能にする政策、さらに、移民受け入れが必須という(金子隆一明治大学特任教授;日本経済新聞)。政府の統計調査でもこのまま人口減少が続くと2047年には、日本の人口は、1億人を下回ると予測している。

警備・ビルメンテナンスともに、人手不足対策として、ロボットの開発、業務用機器の開発による効率かつ合理化を進めているものの、人がかかわる量的なものは減少するが、最終的には最低限の人が必要であり、その最低限の人の確保がどれくらい可能なのかということである。特に、警備業務の需要は拡大傾向にあるとともに、警備業務そのものが多様化され高度化傾向にある。警備ロボットや警備犬、ドローンパイロットの養成と機器を管理する警備員、新幹線全線に警備員が添乗して爆発物や危険物の発見、不審者や犯罪者と対峙する警備員、爆発物探知犬によって乗客の手荷物検査を実施する警備員等、これから要求される警備人材も多様化、高度化に対応できる人材が不可欠となる。

また、働き方改革による有給休暇を与えるためには、それを補足する人が必要である。それ以上に、人不足による事故や法令違反が発生すると業界内の問題では済まされない。宮崎空港の空港保安警備業務の資格者配置の警備業法違反のように人手不足が違反を招くという状況は何としても避けなければならない。

このように、合理化がなかなか進められない交通誘導警備業務や空港保安警備業務のように慢性的な人手不足となっている業務については、積極的かつ長期的な対策なくして解決策はないように思われる。

インドネシアの人口は2億5千万人、日本語学校も盛んで日本で働きたい若者は多い。移民を認めない日本、当面、特定技能、技能実習制度による外国人の活用を検討すべきではないか。

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