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ニューノーマル時代のセキュリティシステム 「非常時から日常のセキュリティに転換を」|セキュリティショー2021・セミナー

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ニューノーマル時代のセキュリティシステム 「非常時から日常のセキュリティに転換を」|セキュリティショー2021・セミナー

 会場でのセミナーのトップを切ったのは9日午前10時40分からの「ニューノーマル時代のセキュリティシステム」。セキュリティ産業新聞の野口勇人・編集長が司会進行を務め、コロナ禍の中で定着しつつある「新しいビジネスのあり方、考え方、そして働き方」(ニューノーマル)の時代にどのようなセキュリティシステムが求められ、変化してきているのかを探った。防犯カメラなどでの画像センシング事業を行う「パナソニックi‐PROセンシングソリューションズ」(福岡市、代表取締役社長:尾崎祥平)の佐藤秀一・広報課長と、金庫をはじめとするセキュリティシステム構築事業を展開するクマヒラ(東京、代表取締役社長:渡邉秀隆)の木下友和・企画部長の2人が登壇し、それぞれの新製品・サービスを紹介しながら時代のニーズの変遷を語った。

セキュリティショー2021・セミナー ニューノーマル時代のセキュリティシステム 「非常時から日常のセキュリティに転換を」

 最初に野口編集長がメディアの立場から現状を分析。このところ新聞で扱うテーマの中で「テレワーク」「ネットワークカメラ」といった言葉に絡むものが急増したことを紹介した。それにあわせてセキュリティサービスを提供する側と受ける側ともに、これまでと違う状況に対応する必要が出てきたとし、読み解くキーワードは「見直し」ではないかと話した。まず、働き方の「見直し」でテレワークが広まり、これまで持ち出しが禁じられていた業務用パソコンで社外から会社のサーバーにつなぐことが日常的になりつつあることを挙げ、その拡大に比べて会社のセキュリティゲートを通過する際の手法が「なりすまし」などを防ぎきれないID、パスワード方式がまだ主流だという点や、テレワークをする人が利用するルーターなどの接続機器が暗号が見破られやすい危険性をはらむ家庭用レベルである点を指摘。顔認証や、より難解な暗号機能を持つ機器などの新しい選択肢が必要だと訴えた。また、監視カメラも含めてネットワークにつながるカメラが当たり前になっている現状では、カメラからシステムに侵入される恐れが高まっていることに着目。アメリカと中国の間で中国製カメラに不正侵入のためのバックドア(裏口)があるのではないかという疑いが浮上するなど信頼度についての摩擦が起きたことを踏まえて、「そのカメラは安心か?」という「見直し」も必要だとした。野口編集長は、これらの危険性が潜む現状ではセキュリティの場で脆弱性と引き換えになりかねない価格の安さを求める姿勢も「見直す」べきだと強調した。

 i‐PROの佐藤課長が力をこめて述べたのは、米中のバックドア疑惑摩擦を念頭に、会社として画像・映像システムのセキュリティを重要課題ととらえ、真剣に品質の管理を自らの手で完遂できるよう「見直している」ということ。「ネットワークにつながった瞬間から世界規模のセキュリティが求められる」との認識を持ち、機器のなりすまし防止を含め機器に内蔵するファームウェアの脆弱性を排除するよう出荷の際のクリア基準を厳密にしているという。社会のニーズでは、映像・画像の使われ方は従来は録画後というのが中心だったが、今はリアルタイムでの状況把握に主眼が移っており、加えて、AIプロセッサーを組み込んだカメラによる「人の目+ソフトウエア」のインテリジェント化も求められていると説明した。同社は今年3月に、「AI混雑検知アプリケーション」を開発し、ネットワークカメラのエッジ(端末側)処理により、カメラ単体で特定エリアの混雑・行列状況を検知することができるようにした。映像監視ソフトウェアやネットワークレコーダーとも接続・連携し、トータルな監視システムとしての運用も可能だという。「3密回避」による新型コロナウイルス感染防止とサイバーセキュリティを両立させた、同社としてのニューノーマル時代に対するソリューション(解決策)と言えそうだ。

 クマヒラの木下部長は同社を、明治の創業以来培ってきた金庫技術を活かす「物理セキュリティの会社」と紹介。1972年には日本初の防犯カメラ(フィルム式)を開発した実績などを示しながら、「守るべき価値への脅威に対策を講じる」という基本理念を説明。価値と脅威は時代とともに変わり講じる対策も変わるとして、同社のしてきたことは絶え間ない「見直し」に通じると話した。1970年代は外部からの不正侵入が脅威だったが、ニューノーマル時代の脅威は内部からの情報漏洩だとした。木下部長は情報漏洩の8割が内部関係者によるもので、同じく8割が物理媒体によるというデータを提示し、70年代の「錠と鍵」による対策から「行動制限と行動記録」がニューノーマル時代の物理セキュリティの基本対策だと提言。入退館を管理するセキュリティゲート、入室許可者だけが鍵を取り出せる鍵管理装置、部屋の出入りを記録する入退室管理システムの連携を、同社の新しいセキュリティ対策として紹介した。ほかに、コロナ禍の人手不足に向けたソリューションとして、体温測定、マスク着用チェック、手指消毒の3機能を搭載した「感染症対策ゲートパッケージ」を開発したことも報告。物理セキュリティとネットワークを連携させた新しい展開の可能性も示した。

 最後に、野口編集長が「ここで紹介したようなセキュリティのあり方が、緊急時だけではない日常の中でノーマル化することが期待される」と締めた。

(阿部 治樹)

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