【2回連載①】全警協中山会長が自ら主導する警備業の成長戦略検討委員会(基本問題諮問委員会)いよいよアクションプラン策定に向け最終段階へ ①
中山泰男会長が自ら主導して進める基本問題諮問委員会は、警備業の今後の成長戦略に欠かすことができない基本的問題として、「外国人雇用の問題」、「ICT(情報通信技術)等のテクノロジーの活用」、「成長戦略に資する警備業法の見直し」、「単価引き上げ策、経営基盤の強化」、「災害時における警備業の役割の明文化」の5つのテーマを掲げ、本年度の基本問題として、各委員会で検討してきた。
中山泰男会長が自ら主導して進める基本問題諮問委員会は、3月15日新型コロナウイルス感染防止のため、全国警備業協会会議室より規模の大きい「エステック情報ビル(東京西新宿)」において、従来の対面会議とWēb会議を併用したハイブリット形式で実施された(以下、全国警備業協会発行「セキュリティータイム4月号」から)。
警備業協会が設立されてから48年の歴史の中で、全国警備業協会会長が自ら主導して警備業の成長戦略として位置付けた基本的な問題を検討するのは、はじめてであり、その経緯は、極めて現実的かつ機動的な委員会である。
本会議で第4回を迎え、いよいよアクションプラン策定に向けた大詰めの会議となる。会議には、オブザーバーとして、警察庁生活安全局生活安全企画課の警備業担当が2名参加された。
最初に中山泰男会長のあいさつがあり、続いて、各作業部会の部会長5名が検討テーマに関する協議・検討の進捗状況について報告した。その要旨については以下のとおり。
当セキュリティーニュースは、当該問題が警備業における成長戦略として現実的かつ必要不可欠な課題であることを考慮して、全警備業者の方々が「より良い警備業の構築・実現」を目指すべきものとし、全文を紹介するものであります。
今回はテーマ1「外国人雇用の問題」とテーマ2「ICT(情報通信技術)等のテクノロジーの活用」を掲載し、次回2・3・4のテーマを掲載しることとします。
=中山泰男会長あいさつ全文=
各作業部会での議論も大詰めを迎え、いよいよアクションプラン策定に向けて最終工程に入る段階にきております。昨年からこれまでの委員の皆様のご努力、ご尽力に対して改めて感謝申し上げますとともに、各作業部会での議論の成果に大変期待しております。
さて、昨年2月から続くコロナ禍の中、我々警備業はエッセンシャルワーカーとして改めて社会に広く認知されるところとなりました。いついかなる事態においても、エッセンシャルワーカーとしての責務をしっかりと果たすことができるよう、警備業務に身を置く我々自身が常に「より良い警備業」の構築・実現を目指し、一貫して努力し続けることが何より重要であります。この基本問題諮問委員会の意義と役割もまさにその点にあります。委員の皆様方のご協力、ご尽力もそのためのものであります。今後とも社会の要請と期待に的確に応えていくために、そして警備業のより確かな未来のために、警備業自ら変化に対応できるよう自らの力で変革していくことが重要であります。環境適応能力、変化対応能力を失った生物は、消えるのみです。
また、長引くコロナ禍は、社会や行政のデジタル化を急激に推し進めることとなりました。企業として、そして業界としてデジタル化への対応を急ぐ必要があります。ここにも当委員会の役割があります。警備業にけるICTの活用推進の作業部会での議論がそれです。デジタル化というのは、大きく言えば、無形資産の認識と活用にほかなりません。そして無形資産の最たるものが人であり、その価値を高めることができないところは今後の生存が非常に厳しくなっていきます。本委員会は、そこを一歩先んじて議論しているわけです。
6月の定時総会を目途に策定するアクションプランは、提言してそれで終わりではありません。実行段階に移り、継続的に活動がなされ、具体的に成果をあげていく必要があります。当委員会はその役割の一端を果たすため存続し、他の委員会等と緊密な連携を図りながら、次の新たな1年に臨みたいと考えております。
皆様方の引き続きの更なるご努力、ご尽力を賜りますようお願い申し上げます。
■ テーマ1「外国人雇用の問題」
発表者:折田康徳部会長(福岡県警備業協会会長)
○ 要旨
全国の4号業者全社4500社を対象に行った「外国人雇用に実態に関するアンケート調査」の結果がこのほどまとまった。3072件の回答のうち、現在、外国人を雇用している割合は、14パーセント(延べ1293名)で、そのほとんどが交通誘導警備、続いて施設警備に従事している。雇用形態を見ると、75パーセントはアルバイトや有期契約社員となっている。在留資格は、就労活動に制限があない「永住者」、「日本人の配偶者」、「留学生」、「定住者」の割合が多い。
一方、外国人警備員を現在雇用していない会社のうち、現行制度でも外国人を雇用できることを知っている会社は7割を超えたものの、雇用していない理由では、「言語や文化、宗教の違いによる不安がある」、「教育指導が難しく手間と感じる」、「社内の受け入れ態勢が未整備」といった理由が上位を占め、「社内や契約先への抵抗を感じる」との回答も多かった。大半の会社において、外国人雇用に関して「現状は、不安な要素が多数ある」ことがうかがえる。
在留資格「特定技能制度」に警備業が今後指定された場合、「活用したい」は、24パーセント。「活用したくない」が16パーセント、残り6割が「未定」と回答した。「活用したい」会社のうち、7割近くが「5名以上採用したい」とし、従事させたい業務は交通誘導、雑踏、施設の順で多かった。特定技能制度を活用して外国人警備員を雇用したい理由としては、「日本人の採用に苦慮」、「真面目・熱心な人が多いと感じる」、「一定水準以上の日本語能力が担保されているから」という回答が目立った。
警備業が「特定産業分野」に追加指定されるためには、様々な新たな制度設計が必要となる。また、今回のアンケート調査結果から、特定技能制度に関する知識、知見が十分でない警備会社が少なくない実態が浮き彫りとなった。警備業務によっては、そもそも外国人雇用自体が難しいものもあることから、試験区分を施設・交通誘導・空港保安の3業務に限定するなどの検討が必要になるものと考えられる。今後、警察庁とも相談させていただきながら、外国人雇用の制度設計についてさらに検討していきたい考えである。
■ テーマ2「ICT(情報通信技術)等のテクノロジーの活用」
発表者:豊島貴子部会長(山口県警備業協会会長)
○ 要旨
これまで計7回にわたり作業部会を開催し、タブーを恐れることなくあらゆる角度から業界を見つめ直し、各種議論を深めてきた。結論的に言えることは、前回会議でも指摘したように、警備業のICT化を推進する上では、
小規模事業者のICT化をいかに適切に進めるかが最大のポイントになるということである。しかしながら、同時にそこにこそ、最大の問題と難しさがあるのも確かと言わざるを得ない。
もとより、企業規模の大小が企業の優劣や経営者モラルの高低を決めるものでは決してないが、現状における警備員の低賃金問題やダンピング問題などを見る限り、経営者のモラルの問題はこの業界に歴然としてあり、それは決して小さな問題ではない。警備業界のICT化を進める上では、この問題が最大の壁、ネックとなり、それを是非とも解決する必要があるというのが、当作業部会の委員の一致した共通認識である。その解決の道筋としては、まずは「低すぎる参入障壁」の改善と自浄作用の効く「明確な業界ルール」の設定が挙げられる。
しかし、それらの課題解決には相当な時間を要することは否めず、一方で経営環境は恐ろしいスピードで変化していることから、当作業部会では、それらの業界全体の課題をしっかりと見据えつつ、来るDX(デジタルトランスフォーメーション)社会に対応できる業界へと成長するための議論を活発に行った。
そしてこのほど、アクションプランの具体的内容となる、警備業のICT化に向けた企業規模ごとの「課題・ミッション・現状・問題・工程」をまとめるとともに、各項目及び各段階おける全警協並びに各都道府県協会のそれぞれの果たすべき役割を挙げている。また、自助・共助・公助の考えに基き、短期・中期・長期の視点でICT活用へのロードマップを作製した。
各作業部会での議論を踏まえたアクションプランは、PDCAサイクルに乗せて継続的に活動でいてこそ意味を成すものであり、また、そこにこそ基本問題諮問委員会の意義があると考えている。今後は、アクションプランの継続的な活動ができる仕組みづくり・体制構築に向けて、新たに議論する必要があると思われる。