不動産取引で告げるべき「人の死」ガイドラインが決定 | 「告知しなくてよい範囲」は自然死など3分類 国交省
本サイトで2021(令和3)年5月27日に、宅地建物取引業者が不動産取引で告げるべき「人の死」のガイドライン案を報告した(2021.5.27 不動産取引での「人の死」告げるべき内容を提示 | 宅建業者に対するガイドライン案が決まる)が、パブリックコメントを経て内容が決定し、国交省が同年10月8日付けで公表した。ガイドラインではまず「告知しなくてよい範囲」として自然死や不慮の死など3分類を提示、これら以外で取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合や問われた場合を告げるべき場合とした。
ガイドラインの策定には、事件・事故に巻き込まれて亡くなったり自殺したりする人のほか、近年、高齢者の孤独死の増加もあって、売主・貸主が買主・借主にどこまで告げるべきかが課題となっており、これを巡るトラブルを回避するための「判断基準」がなかったことが背景にある。国交省は2020(令和2)年2月、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」(座長:中城康彦・明海大学不動産学部長)を設置し、宅地建物取引業者がとるべき対応と、業者が宅地建物取引業法上負うべき責務の解釈について議論を続けてきた。対象は居住用とし、宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈については現時点で一般的に妥当と考えられるものを踏まえて策定したという。
告知については次の3項目を「告げなくてもよい場合」とした。
①賃貸借・売買取引の対象不動産で発生した自然死または日常生活の中で発生した不慮の死(転倒事故、誤嚥など) ※事案発覚からの経過期間の定めなし。
②賃貸借取引の対象不動産と日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した①以外の死または特殊清掃等が行われた①の死が発覚してからおおむね3年間が経過した後
③賃貸借・売買取引の対象不動産の隣接住戸ないしは日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した①以外の死または特殊清掃等が行われた①の死 ※事案発覚からの経過期間の定めなし
(下線と太字は筆者)
その上で①~③以外の場合では、「人の死が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告げなければならない」とした。また、②と③の場合でも事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は告げなければならないとした。さらに、「取引の対象となる不動産における事案の存在に関し、人の死に関する事案の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合」(下線筆者)、宅地建物取引業者は業務上の調査で知り得た範囲で告げる必要があるとしている。
調査については、「売主・貸主に対し、告知書等に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする」とした。その際、留意点として、記載が適切に行われるよう必要に応じて助言するとともに売主・貸主に対し、故意に告知しなかった場合には民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましいこと、告知書により売主・貸主からの告知がない場合であっても人の死に関する事案の存在を疑う事情があるときは売主・貸主に確認する必要があることを挙げている。
ガイドラインの全文は「001426603.pdf (mlit.go.jp)」から。
(阿部 治樹)