【特集・取材】航空保安検査、警備員等に特別な権限を付与
航空法の一部が改正され、本年6月11日に公布された。改正されたなかでも警備業として行われている航空保安検査(空港保安警備業務)に深く関係するものとしては、航空機を利用する旅客等(乗務員等も含む。)に対する搭乗前の「保安検査」や航空機に預ける「預入手荷物検査」の受検が法律上義務付けられ、違反すれば「危害行為の防止に関する罪」として、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられるようになったこと、そして、航空法第86条第2項の規定に違反し、航空法施行規則第194条第1項に定められている凶器や危険物等を航空機に持ち込んだ者に対する罰則が、「50万円以下の罰金」から「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に改正され、その刑罰が一段と重くなったことが挙げられる。 また、保安検査及び預入手荷物検査を行う警備員(保安検査員)等については、その職務遂行のための指示を出す権限が与えられたことも大きなポイントであろう。そもそも警備員には、警備業法によって特別な権限を与えられるものではないが、空港保安警備業務を行う保安検査員については、航空法の規定に基づいて検査業務を実施することが明確化されるほか、旅客等に対して、検査等の必要な措置の実施を妨げる行為をしないことを指示する権限を有することとなる。
国内における航空保安検査は、1970年(昭和45年)3月に発生した国内初のハイジャック事件(よど号ハイジャック事件)を契機に開始されてから半世紀が過ぎた。過去50年の歴史の中で発生したハイジャック事件や航空機テロ・テロ未遂事件等の発生とともに、国は航空保安対策の強化を重ね、空港における保安検査についても徹底的で厳しいものとなった。その一方で、ハイジャックやテロ等防止のための要となる航空保安検査については、これまで法的な位置づけが明確ではなかった。旅客は、利用する航空会社との間に結ばれる運送約款の条項に基づいて、検査に協力するという位置づけであった。今回の法改正によって、これからは運送約款のほか、検査場を通過した後の検査済みエリア(危険物等所持制限区域)に入るための義務として検査を受けることとなり、預入手荷物についても、航空法の規定に基づく義務として受検することとなる。
この改正によって、航空保安検査の実施にどのような変化をもたらすことになるのだろうか?
<危険物等を機内に持ち込んだ場合の罰則強化について>
<新設された保安検査及び預入手荷物検査の受検義務について>
<保安検査員に与えられる権限について>
このたび、約30年にわたって航空保安検査の実務や教育事業等に携わってきたA氏に取材した。
<危険物等を機内に持ち込んだ場合の罰則強化について>
「航空機に凶器や危険物等を持ち込んだ場合の50万円以下の罰金については、以前から検査場等に掲示されていました。今後は、その掲示物に“懲役”という文字が加わりますので、お客様に与えるインパクトは大きなものとなるでしょう。ただし、罰則が強化されたことによって、検査場で検出する機内持込制限品や輸送禁止品の数が減少し、検査員の負担が軽くなるかというと、