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RISCON TOKYO2021/ SEECAT’21 | 液体危険物を検知するスクリーニング装置と検査装置

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RISCON TOKYO2021/ SEECAT’21 | 液体危険物を検知するスクリーニング装置と検査装置

 近年、世界を震撼させるテロ事件が多発し日本でもテロに対する不安が高まっている。欧米に比べるとテロに関するリスクは低いイメージがある日本だが、過去には地下鉄サリン事件等の無差別テロがいくつも発生している。さらには、京都アニメーション放火事件といった凶悪事件も多発しており、日常の安全安心が脅かされているのが実情。高まるテロや凶悪犯罪のリスクを取り除く対策に、日本も真剣に取り組まなければならない情勢にある。とはいえ、人的警備を強化するには限界がある。そのため重要になってくるのが防犯機器の活用。最近では自治体や企業の施設だけでなく一般住宅でも監視カメラの設置が進み、記録されたデータが事件解決の糸口になることも少なくない。もはや日常の安全確保は、治安当局任せではなく官民一体となって取り組まなければならない時代になっているのだ。今回の危機管理産業展(RISCON TOKYO)2021/テロ対策特殊装備展(SEECAT)’21では、テロや凶悪事件防止対策に関わる機器も多数出展されていたが、その中で注目したのが液体危険物を検知する検査装置。

金属だけでなくガソリンも検知する一次スクリーニング装置

 帝国繊維株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:桝谷徹)が輸入販売を手がける「Human Security Radar」(以下、HSR)は、施設保全、大量殺傷、犯罪防止目的に開発された一次スクリーニング装置。今回は、2019年のG20大阪サミット開催の際、関西国際空港での運用等の実績がある「HSR Ver.3」をスペックアップした「HSR Ver.4 CP(セントラルピラー)」を出展。「ピラー」と呼ばれるゲートのようなふたつの装置の間に金属製脅威物探知強化のための磁気センサー(セントラルピラー)を追加設置。ピラーに囲まれた検査エリアにマイクロ波を発信し、その反射波、透過波の変化を検出して危険物を検知すると、ピラーに搭載されたカメラから対象者と隠匿場所、危険物の概要を検査員にリアルタイムで自動転送されるオペレーション不要のシステム。Ver.3では検出対象外だった刃物に加え液体であるガソリンの検知が可能になったのが最大の特徴。歩く人の流れを制限することなく、衣服の下やバッグに隠された刃物、自動小銃、爆発物、ガソリンといった危険物を検出できるようになった。

「展示場の設置の都合でピラーを結ぶ配線が通路上に設けられたが、本来は通行の妨げにならないようにピラー上部に設置される
展示場の設置の都合でピラーを結ぶ配線が通路上に設けられたが、本来は通行の妨げにならないようにピラー上部に設置される

 同社の防災開発部セキュリティビジネスグループ・三上晶彦部長によると、「物質がもつ固有の誘電率を測定することで危険物を瞬時に検知できます。Ver.4では爆発力が強いガソリンが液体で唯一危険物検知の対象になりました」。金属とガソリンは異なるセンサーで検出し、モニターに色違い(赤とピンク)で表示されるという。

 海外では有名な大規模映画祭等でも使用されているという。国内での運用は、公共交通機関、展示場、空港一般エリア(ランドサイド)、スポーツイベント会場、ショッピングモール、オフィス、クルーズ船検査場、原子力発電所といった施設を想定。前回(昨年は不出展)まではSEECATへ出展していた同社だが、HSRをなるべく多くの人に知ってもらいたいということでRISCONへ初出展となった今回。参考出品だった「HSR Ver.4 CP」は、今後ブラッシュアップされ来年3月の販売を目指す。

左手に刃物を持ってゲートを通過。危険物を検知すると監視モニターにアラートが発せられる
 
 
性能、操作性ともに優れた国産ハンディタイプ液体検査装置

LSR-HN1の持ち運びや落下防止対策として、ベルトを装着することも可能
LSR-HN1の持ち運びや落下防止対策として、ベルトを装着することも可能

 入場審査を通過した人のみ入場できるクローズドショーのSEECATで、入退室管理システムやスタイリッシュで機能的なセキュリティゲートの展示で一際目を引いていたのが株式会社クマヒラ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:渡邉秀隆)のブース。金庫の販売・修理を手がける会社からスタートして120年あまり。時代のニーズに応えたトータルセキュリティシステムを提供し続ける同社が、ハンディタイプの液体検査装置「LSR-HN1」を開発したというので訪ねてみた。

 同社では、ペットボトル、ビン、カン等の容器に入った液体爆発物や可燃物を1〜4秒で検査できる、据え置き型の液体検査装置「LSR-M2」を既に開発しており、国内約400か所で利用されている。しかし、据え置き型は不審な液体があれば検査装置のある場所へ移動させなくてはならないため多少なりともリスクが生じる。そうしたリスクを回避するだけでなく、容器に触れずに検査できるとなれば衛生面でも安心なハンディタイプの検査装置の有用性は高い。
 同社の企画本部・木下友和部長は、「価格は据え置き型の半額以下、重量も1kg以下で900g(電池、ACアダプタ除く)に抑えました。操作もセンサー部分を容器にかざしてボタンを押すだけで簡単に検査できます。据え置き型の液体検査装置は空港の保安検査場や美術館といった施設での利用が主ですが、ハンディタイプはもっと用途が広がると思います」と、警察、警備会社、鉄道会社等、多岐にわたる団体や企業での利用を見込んでいる。

「

 LSR-HN1の開発が急ピッチで進んだのは、昨年のSEECATが終わってから。昨年は3Dプリンターで製作したプロトタイプが展示されていたのだが、多くの反響があったため製品化が決まったのだという。
 開発を手がけた株式会社熊平製作所・製品開発部TSグループの高取大輔主査は、「当社としては、携帯型の機器を製作するのは初めてのこと。昨年出品した試作品をベースに試作を繰り返し製品化にこぎつけました。軽量化のため電源は単三電池4本のほか、外部給電ポートを設けてモバイルバッテリーを繋げての使用もできるようにしました。耐衝撃性は約70cmの高さから落下しても大丈夫。防水性は飲料水がかかる程度であれば問題ありあせん。データベースを共有しており、検査性能はLSR-M2とほぼ同じ。数種類の物質については名称が表示されるようになっています」。ただし、容器がカンのものは検知できないため、別容器に移して検査することになる。

 空港保安検査経験のある来場者は、「最近はペットボトルに爆薬やガソリンを入れたテロや殺傷事件が多い。サリン事件のように液体危険物をビニールに入れるケースもある。据え置き型のLSR-M2も画期的だったが、ハンディタイプでこれだけの精度と性能、使い勝手のいい液体検査装置ができたのは素晴らしいことだと思う」と絶賛。

 今夏、東京で開催された国際的な大規模スポーツイベントでも採用されたというLSR-M2とLSR-HN1。ハンディタイプの液体検査装置・LSR-HN1は11月からの販売を予定している。
3.kumahira

(藤原 広栄)

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