GPSを悪用したストーカー対策で警察庁が防犯カメラを無料貸し出し
GPS(衛星利用測位システム)を悪用したストーカー犯罪が深刻化していることを受け、警察庁はストーカー被害者に車載型の防犯カメラを無料で貸し出す事業を2021年度から始める方針を固めた。車に無断でGPSを付けられて、居場所を探られる被害が相次いでいるため、設置する様子を撮影することで相手を特定し、ストーカー被害を防ぎたい考えだ。
都道府県警が事業を導入する際の費用を補助する形で、2021年度予算の概算要求に1,500万円を計上。各都道府県警に5式(1式あたり4台)の録画用カメラを整備することを想定した。
GPSを使って元交際相手らを見張ったとして全国の警察がストーカー規制法違反で摘発したのは、今年6月までに59件に上る。一方で最高裁は7月、GPSを車に取り付けて遠隔操作で居場所を確認することについて、ストーカー規制法で定める「見張り」の定義には当たらないとの初判断を示した。警察庁は、他人の車にGPSを付けることは、ストーカー行為につながる恐れがあるとして、被害者保護の一環としてカメラを貸し出すことにした。(毎日新聞)
7月に最高裁が「見張り」に当たらないと判断したのは次の2件。
1件目の被告は、当時の妻の車にGPSを取り付けたとして同法違反罪などで起訴。1審福岡地裁はGPSによる位置情報の把握を含め同罪が成立するとして懲役1年としたが、2審福岡高裁は見張りを「視覚など感覚器官を用いた行為」と限定的に判断。実際に近くで妻を注視した行為のみの成立を認め、懲役8月とした。
もう1件の被告は、元交際相手の女性の車にGPSを取り付け、長期にわたり位置情報を把握し続けたとして起訴され、1審佐賀地裁が有罪と判断。しかし2審福岡高裁は位置情報の把握を見張りと認めず、1審判決を破棄した。ただGPSを取り付ける際に女性がいないかを確認する行為などが見張りと解釈する余地があるとして、審理を地裁に差し戻した。(産経新聞)
ストーカー規制法は2000年に制定され2013年の改正では、電子メールの送信行為を規制対象に追加、警察の関与が強化されるなど法の整備が行われたが、GPSによる「見張り」については法解釈の問題としてとらえられてきた。
8月22日付け公明党の【主張】「ストーカー規制GPS悪用した手口に対策を」によると、ストーカー・DV・性暴力等対策推進プロジェクトチームが20日に開いた会合で、山本香苗座長(参院議員)は「時代に合った必要な法改正を検討したい」と強調。警察庁に対し、都道府県警と連携して巧妙化する手口の実態を調査するとともに、有識者の意見を聴く場を設けるよう要請。
ストーカー被害の相談件数は、7年連続で2万人を上回って高止まりしている。被害者保護の視点に立ち、悲劇を未然に防ぐため、法改正を含めた対策の強化に取り組むべきである、との見解を示している。