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警備業・ビルメンテナンス業の労働者にかかわる働き方改革関連法施行

警備業・ビルメンテナンス業の労働者にかかわる働き方改革関連法施行

働き方改革関連法の最後の一つ「同一労働・同一賃金」制度が中小企業に適用されるのが2021年4月からとなる。

 

働き方改革関連法によって、同一労働・同一賃金にかかわる正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差の禁止が、中小企業者は2021年4月から適用(大企業では2020年4月適用)となる。

 
 働き方改革関連法は、前内閣(安倍内閣)が掲げる「一億総活躍社会」実現のための横断的課題に対する、一つの解決策として打ち出されたものですある。
 警備業界やビルメンテナンス業界には、様々な労働形態の非正規社員がいる中で、とりわけ、6か月以上働く非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者等)は、働き方改革関連法による正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の、不合理な待遇差の解消が必要となる。
 この法律で目指すところは、働く人はどのような雇用形態を選択しても納得できる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるところにある。
 
働き方改革関連法の主なものは、
 
1 時間外労働の上限規制
2 年次有給休暇の確実な取得
3 正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差の禁止
 
である。上記1は、2020年4月、2は、2019年4月から施行されている。
 
 1の時間外労働の上限規制についての法定労働時間は、1日に8時間、1週に40時間なのに対して、「36協定」と呼ばれる労使協定を結べば、1か月に45時間、1年に360時間までの時間外労働(原則的限度時間)が免罰されている。
 さらに、特別条項を設ければ、1年に6回までなら、原則的限度時間を超えての時間外労働が免罰されている。
 「例外的限度時間」は、1年に6回まで1か月に100時間、1年に720時間以内と規定されており、さらに、第6項では当月を含む直前2か月から6か月の 1か月平均時間外労働時間が、80時間を超えてはならないことも規定している。
 
 2の年次有給休暇の確実な取得については、これまでは、仕事の多忙さによって「取りづらさ」等から、労働者が有給休暇を消化できないケースが多々あったが、この法改正によって、これまでどおり労働者からの希望による年休取得や計画的付与で取得した日数を合算して5日に満たない場合、不足日数分について年次有給休暇を取得させることが義務化された。
 年次有給休暇の取得義務化について企業は、業務時間の縮小によって経営が圧迫されるなどの影響がでることが懸念されていたが、実際には、有給取得率がアップするのに比例して、「効率が上がり売上もアップした。」、「退職者が減少した。」という企業もあり、また、有給休暇取得率がアップすると、従業員満足度もアップするという調査結果も労働基準局がまとめた。それによれば、有休暇の取得率0パーセントの企業では休暇に対する満足度29.6パーセントに対し、取得率100パーセントの企業では満足度73.0パーセントと格段にアップする(「長時間労働の抑制と年次有給休暇取得の必要性」)。

 この満足度は、従業員の定着率にも大きな影響を受ける。1人でも人材が定着すれば、求人広告費などの各種経費も削減することが可能となる。その結果、労働者が気持ちよく働けるだけでなく、企業への好影響をもたらすことにつながるはずである。年次有給休暇の取得義務化に伴い、義務を果たさない事業主に対しては、対象となる労働者1人当たり30万円以下の罰金が科される。

 3の「一労働・同一賃金」とは、同一企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者等)との間の不合理な待遇差を解消することを目的に制定された規定である。
 正規雇用、非正規雇用労働の選択は、雇用される側のライフスタイルによる場合も少なくないものの、それでも仕事内容によっては、不公平な待遇を受ける場合も多々あり、また、正規雇用を望んでいても、やむなく非正規雇用を続ける人によっては、より強く公平な評価を求める傾向は強いと考えられている。
 同一労働・同一賃金は、同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の、不合理な待遇差を解消することによって、いずれの雇用形態を選択したとしても、労働者が納得できる処遇を受けられることが、多様な働き方を自由に選択できることの実現を目指すことを目的としている。
 厚生労働省から待遇差が合理的なのか、また、どのような待遇差が不合理とされるのかを示す「同一労働・同一賃金ガイドライン案」が策定されている。
 ガイドライン案について要点をまとめると、次にようになる。
 
《賞与》
 「賞与」とは、定期又は臨時的に一時金として支払われるものであり、会社が就業規則や賃金規程等で定められたものである。ところが、これらは会社の業績等によって支払われるものであるから、おおよそ、その業績に貢献した貢献度によって査定されて、支給されることが多い。この場合、正規雇用労働者と同一労働によって貢献した非正規雇用労働者にも、同一の賞与等を支給しなければならないと規定されている。
 ガイドライン案では、業績や目標数値に対して、正規雇用労働者に対してのみ未達の場合に処遇上のペナルティを課しているような場合は、その見合いの範囲内であれば同一賃金の考え方は当てはまらないとされている。また、賞与の趣旨を職務内容や貢献等にかかわらず、正規雇用労働者全員に支給している場合は、非正規雇用労働者に対しても同一賃金の考え方から、支給しなければならない。
 業界だけではなく、他業界でも見られるのは、正規雇用労働者に給与の1か月分の賞与を支給したとき、非正規雇用労働者が正規雇用労働者と同一労働にもかかわらず、寸志と称して正規雇用労働者の支給の10分の1しか支給されなかった場合には、不合理な待遇差が生じることとなる。
 
《役職手当》
 役職手当は、役職の内容、責任範囲・程度に対して支給するのが一般的であるが、役職の内容、責任の範囲や程度が同一の場合、同一の役職手当を支給しなければならない
 
《その他の手当》
 業務の危険度当に応じて支給される特殊作業手当、精皆勤手当、時間外(深夜)割増率、転勤等で特定の地域で働く場合の補償として支給される地域手当についても、正規と非正規労働者の間で同一労働・同一賃金の考え方が該当し、不合理な待遇差が生じることのないように、それぞれの手当の性格や趣旨に照らして、各種手当について定義を明確にしておく必要がある。
 
《教育訓練、福利厚生の均等、均衡待遇の確保》
 食堂や休憩室及び更衣室といった福利厚生施設の利用のほか、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除、有給保障や病気休職などについては、正規・非正規に関わらず、同一の付与・利用、法定外年休及び休暇についても、同一の勤続期間であれば同一の付与が求められるとともに、現在の職務に必要な教育・訓練や技能・知識の向上を図る実習など、同一の職務内容であれば同一訓練や実習を行わなければならないとされている。

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