セキュリティ

視覚障碍者ホームからの転落防止にAI活用

セキュリティ警備業
視覚障碍者ホームからの転落防止にAI活用

各地で実証実験 一部は実用開始
セントラル警備保障開発の技術も検証

 
 後を絶たない視覚障碍者の駅ホームからの転落事故。国土交通省は、痛ましい事故の防止を目的として、ホームドアが整備されていない駅ホームでの防止策の検討のために視覚障碍者団体や支援団体、学識経験者、鉄道事業者などからなる「新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会」を2020(令和2)年10月に設置し、AI(人工知能)などの先端技術を活用した複数の方策の導入について議論を進めている。こうした中で、東京メトロではQRコードを利用した案内サービスを1月から開始したほか、相模鉄道では2月にセントラル警備保障が開発した画像解析技術を応用したシステムの実証実験も行われた。

 国交省が公表している検討会の資料などによると、主な防止策は「ホーム端接近時に注意喚起」「駅員等による案内・支援」「誘導ブロックによる適切な案内」の3種。このうち、1月27日から東京メトロ副都心線西早稲田駅など 5 駅に導入されたのが、「視覚障がい者ナビゲーションシステム『shikAI』(シカイ)」。駅構内の点字ブロックにQRコードを設置し、iPhoneのカメラで読み取ると現在地から目的地までの駅構内の移動ルートを導き出して音声で目的地まで案内する仕組みだ。東京地下鉄株式会社(東京メトロ、東京都台東区、代表取締役社長:山村明義)とリンクス株式会社(東京都港区、代表取締役会長:小西 祐一)が2017年に開発を始め、東京メトロ総合研修訓練センターや有楽町線辰巳駅、新木場駅などで合計150人以上の視覚障碍者に協力してもらい、実用化に向けた検証を重ねてきた。その結果を踏まえ、利用者の要望を反映したシステムが完成したという。2021(令和3)年4月までに合計9駅での運用を予定している。

「shikAI」のイメージ(東京メトロのニュースリリースから)

 利用には事前準備が必要だ。まずiPhone(アンドロイド機種には非対応)でAppStore から「shikAI」をダウンロード。アプリを起動し、アカウントを登録すると登録したメールアドレスに利用案内のメールが届く。利用案内に沿って必要事項を入力すると、後日、歩行指導員から電話でアプリ説明日程の案内がある。その日に歩行指導員がアプリの操作方法を説明し、点字ブロック上で使用して歩行指導員から認証キーが付与されると、実際にアプリが利用できるようになる。無料(通信料は利用者負担)だ。なお、このアプリは視覚障碍者向け専門のため、晴眼者は利用できない。問い合わせはリンクス(電話 : 050-8880-6234)。

カメラが設置された相鉄線二俣川駅

 一方、相模鉄道株式会社(横浜市西区、社長:千原広司)は、2021(令和3)年2月16日~28日、相鉄線二俣川駅の改札口・コンコースで、セントラル警備保障株式会社(CSP、東京都新宿区、社長:澤本尚志)が提供する防犯カメラシステム「VACS」を応用 したサポート実証実験を行った。体の不自由な利用者をCSP監視員の目で確認し、その情報を駅係員に通知。通知を受けた駅係員が、利用者のもとに行って必要な支援をするというもの。VACSは設置された画像解析装置で防犯カメラ映像内の 11 項目の異常を自動検知し、CSP画像センターが映像を確認してパトロール員が急行するか利用者に連絡するシステム。検知するのは①物の置き去り、②転倒、③白杖、④車いす、⑤ベビーカー、⑥アルミ風船、⑦侵入、⑧うろつき、⑨混雑、⑩顔認証、⑪盲導犬だ。

障碍者を確認するCSP画像センター

今回の実証実験では、白杖や車いすの利用者に着目した。相鉄側によると、実験では60件を超える通知があり、検知精度も確認できたという。ただ、通知に少し時間がかかった点もあり、今後、認知精度向上を含めシステム改善の可能性を検討していく。

同様のカメラによる障碍者の改札通過の認知実験は、京阪電気鉄道株式会社(大阪市中央区、社長:中野道夫)も株式会社アプリズム(大阪市中央区、代表取締役:仙敷久善)の画像解析の技術を使って2月19日から4月末まで実施している。このほか、ホーム上のカメラの映像からホーム端へ接近する人をAIで検知し、音声で注意喚起を行うとともに駅務室へ通知する実験も京急蒲田駅で行われている。

(阿部 治樹)

Security News for professionals main center ad
Security News for professionals main footer ad