セキュリティ関連

減り続ける公衆電話、あり方の答申案まとまる | 情報通信審議会の電気通信事業政策部会

セキュリティ関連
減り続ける公衆電話、あり方の答申案まとまる | 情報通信審議会の電気通信事業政策部会

災害時の有用性も踏まえ「不可欠なサービス」継続

 スマートフォンの普及や人口減少、過疎化などの影響で減り続けている公衆電話の今後のあり方について、総務大臣の諮問を受けた情報通信審議会(内山田竹志会長)は2021(令和3)年5月21日、答申案を公表した。公衆電話を、災害時の有用性も踏まえて引き続き「電気通信事業法の上で国民生活に不可欠な日本全国で提供が確保されるべき役務」(ユニバーサルサービス)と位置づけるよう求めた。

 審議会の電気通信事業政策部会とユニバーサルサービス政策委員会は同年1月から4月まで6回のWEB会議を開き、事業者や消費者団体、地方自治体にヒアリングも行った。今回の答申は、利用者視点に立ち、公衆電話をより一層活用できるようにするための取り組みの方向性について取りまとめたとしている。案では最近の電話事情についても触れている。携帯電話・PHSの契約数が固定電話の契約数を越えたのは2000(平成12)年度だが、2019(令和元)年度には携帯電話・PHS の契約数は1億8700万件なのに対し固定電話は1900万件と10倍近い差になった。同年度の通信利用動向調査によると、20~50代の90パーセント超がモバイル端末を保有しているという。これに加えて人口減少と過疎化が公衆電話を取り巻く今の社会情勢だとしている。

 公衆電話は大きく分けて常設のものと災害用の特設のものがある。常設にはさらに設置基準が定められている第一種と基準がない第二種に分かれている。このうちユニバーサルサービスの対象となっているのが第一種公衆電話だ。設置基準は市街地でおおむね500m四方に1台以上、その他の地域ではおおむね1㎞四方に1台以上とされている。常設公衆電話は2002(平成14)年度にはNTT東西合計で58.4万台あったが、2020(令和2)年度末では15.1万台まで減った。減ったのは第二種で、第一種は設置基準を満たす10.9万台が維持されているという。

 こうした状況下で公衆電話の利用は大幅に減少しているが、表に示すように、2011(平成23)年3月の東日本大震災では、常設公衆電話の使用回数が大幅に伸びた。2020(令和2)年に実施したアンケート調査でも、災害時に公衆電話が必要と思うかという問いに、55パーセントが「必要」、25パーセントが「どちらかといえば必要」と答え、公衆電話に対する期待が高いことが示されたという。加えて、過去の利用実績にかかわらず「公衆電話がなくなると困る」と答えた人が一定程度いることが分かった。さらに、携帯電話を利用できない人や状況を含めて、全ての国民と外国人らが、事前契約なく利用できる公衆電話は依然、「戸外における最低限の通信手段」となっていることもうかがえた。これらを踏まえて答申案は「第一種公衆電話を引き続きユニバーサルサービスの対象とすることが適当と考えられる」と結論づけた。災害時用公衆電話も、役割やこれまでの災害時での利用状況を考えると、第一種公衆電話と同様にユニバーサルサービスとして位置づけるのが適当だとしている。

【東日本大震災後の常設公衆電話の利用状況】(答申案から)

  通信回数
3/11の対前日比 3月の対前年同月比
東日本全域 約10倍
(50万→500万回)
約1.3倍
(1650万→2200万回)
首都圏 約15倍
(27万→400万回)
約1.4倍
(1000万→1400万回)
岩手・宮城・福島 約6倍
(5万→30万回)
約1.5倍
(160万→250万回)

 
 そうした上で、災害時用公衆電話の維持には費用の一部を交付金の対象とすることが適当であるとし、利用が減っている第一種公衆電話も効率化を図る必要性を挙げ、設置基準を現行から「市街地でおおむね1㎞四方、その他の地域ではおおむね2㎞四方」と緩和することを提案している。すなわち、現在の10.9万台から約2.7万台と減らすことになるが、これは一般的に「徒歩圏内」にある小学校(約2万)、郵便局(約2.4万)、交番・駐在所(1.2万)の数字と比べて遜色がなく妥当性があるとしている。
                  

(阿部 治樹)

     

Security News for professionals main center ad
Security News for professionals main footer ad