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海の救難に頼もしい助っ人 | 海上保安庁の中軌道衛星利用システムが稼働

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海の救難に頼もしい助っ人 | 海上保安庁の中軌道衛星利用システムが稼働

 四方を海に囲まれた日本にとっては、海路も欠かせないインフラの一つ。往来の安全確保は国の重要な責務だが、海難事故は陸上に比べて発生地点の特定が容易ではない側面がある。この難問に海上保安庁は低軌道の通信衛星を利用する位置特定システムで対処してきたが、2021(令和3)年3月に日本も参加する政府間機関で中軌道衛星を使う海上保安庁の新システムが承認され、より迅速で正確な位置特定が可能となった。

 海上保安庁は1993(平成5)年から、人工衛星によって遭難者を迅速に発見し救助するための政府間組織「コスパス・サーサット」に参加している。組織は国際協定を締結した45の国・地域と3つの機関が設立し、これまで低軌道衛星(3月22日現在4機)を利用した「LEOSAR(Low-altitude Earth Orbit Search and Rescue)」システムを運用してきた。しかし、1機が全世界を周回するのに約100分かかり、遭難警報が発信された際に衛星が上空を通過しなければ受信できず、しかも位置特定には2回受信しないといけないため、遭難警報の受信と位置の特定に時間を要していた。

 (海上保安庁の広報資料から)

システムの近代化が図られ、各国・機関が中軌道の衛星を利用する「MEOSAR(Medium-altitude Earth Orbit Search and Rescue)」システムへの転換を進めるなか、海上保安庁は2020年12月に地上受信局をはじめとした必要な設備や運用手順などの諸準備を終えて運用体制を整え、今年3月17~26日のコスパス・サーサット理事会で正式に承認を受けた。MEOSARシステムでは、船舶・航空機等からの遭難警報を受信する中軌道衛星(3月22日現在42機)が常に複数機上空にあり、私たちがふだん自動車で使っているGPSと同じ原理で位置を測定することから、遭難信号を発信直後に検知でき位置の特定も可能だという。海上保安庁は「北西太平洋地域の基幹MCC(※)として、今後はより迅速で確実な捜索・救助に貢献でてきる」としている。

※MCC 地上局で受信した遭難情報を適切なRCC(救助調整本部、日本では管区海上保安本部など)へ配信するための機関。その中の基幹MCCは各地域で中核的立場としての責務を負う。

基幹MCCは他の基幹MCCや地域内のMCCから入手した遭難情報を担当MCCに中継・配信するほか、地域内での運用指導なども行う。日本は1997(平成9)年から基幹MCCを務めている。他に米国、フランス、スペイン、オーストラリア、ロシアが基幹MCCとなっている。

海難救助について説明する海上保安庁のパンフレット

(阿部 治樹)

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