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水上・上空で運用できる飛行艇タイプのドローンがついに登場か!

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水上・上空で運用できる飛行艇タイプのドローンがついに登場か!

飛行艇の活躍

 
 キャスターの辛坊治郎氏(65)が日本時間6月17日にヨットでの太平洋単独無寄港横断を成功させ、アメリカ サンディエゴに無事到着したとの報道を読者の皆様も最近のことであるから覚えておられる読者も多いと思う。
 同氏は、8年前の2013年6月にもチャレンジしたのだが出航から5日目の21日 午前7時8分頃、宮城県石巻市金華山の南東約1,200km辺りの沖合で不幸にもクジラと衝突したことによりヨットが浸水して約一時間後には、その状況を衛星携帯で知人に「沈没間違いなし」と連絡し、ヨットを放棄して「救命いかだ」に避難した。
 連絡を受けた知人は、118通報をしたところ第二管区海上保安本部長が災害救助派遣要請をして、海上自衛隊厚木航空基地所に分派されている第71航空隊所属のUS-2(飛行艇)が厳しい気象状況にも拘わらず無事救助して帰還したという事案があったのをご存じであろうか。
 タイトルにもある「飛行艇」が登場するまでの書き出しが長くなったが、「飛行艇」とは?と、考える読者も皆様も多いのではないであろうか。
 そもそも「飛行艇」をご存じない方のために前出の「US-2」の画像をご紹介する。

離水するUS-2飛行艇(これは、国産で海上自衛隊の機体です。)
離水するUS-2飛行艇(これは、国産で海上自衛隊の機体です。)

 

飛行艇とは?

 

US-2の画像をご覧いただいたところで、その仲間の機体について付記する。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/17 07:19 UTC 版)から

飛行艇

飛行艇(ひこうてい、英語: seaplane or flying boat)は、水面発着出来る機体のうち、胴体部分が水面に接するように設計された飛行機である。日本工業規格 (JIS) では「水上にあるとき、主に艇体によってその重量を支持する水上機」と定義される。この点で「フロートによってその重量を支持する」フロート水上機と区別される(JIS W 0106 航空用語(航空機一般))。

水陸両用機
水陸両用機(すいりくりょうようき、英語: amphibious aircraft または英語: amphibian)は、陸上と水面の両方から離着陸(水)が可能な航空機である。固定翼の水陸両用機は、水上機(飛行艇およびフロート水上機(英語版))に格納可能な車輪を装備したものである。代わりに、陸上専用または水上専用に設計された飛行機に比べて、重く複雑で、航続距離と燃費が劣っている。水陸両用機のいくつかには、スキーの役割をする強化された竜骨が組み込まれており、これによって車輪を上げたまま雪や氷の上に着陸可能なので、tri-phibianと呼ばれることもある。

水上機
 
水上機(すいじょうき)は、水面上に浮いて滑走が可能な船型の機体構造、あるいは浮舟(フロート)のような艤装を持つことによって、水上にて離着水できるように設計された航空機である。水上機として最初から設計されたものと、通常の航空機が水上機として再設計されたものがある。

飛行船

飛行船(ひこうせん、英:airship)は、空気より比重の小さい気体をつめた気嚢によって機体を浮揚させ、これに推進用の動力や舵をとるための尾翼などを取り付けて操縦可能にした航空機(軽航空機)の一種である。
 
 4つの機体の中で水に関係がないのは、最後の飛行船であるのでご注意いただきたい。
 水陸両用機と飛行艇の違いは、降着輪(着陸する際に使う車輪)があるかどうかだが、US-2は、降着輪があるので水陸両用機が本来の位置付けと考えるが、通常は、飛行艇で通っているのが現状である。
 今回ご紹介するドローンには、降着輪が無いので「飛行艇」となる訳であるから当然、離着水するには、河川・海・湖などに限定されるが、陸の上空を飛べない訳では、無く離着水する場所であって運用範囲では、無いことを予め申し上げておく。

 

HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)が登場!

 
 研究開発を行っているのは、株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー(以下、同社)で研究開発センターを神奈川県川崎市に置き、主な実験などは、福島県南相馬市の産業創造センターB棟区画1を福島支社として実施している。
 先ずは、6月開催の「ドローン・ジャパン展」において公開された機体をご覧いただきたい。

HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)
HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)筆者撮影

 機体の大きさや詳細スペックなどは、後に同社の資料をもとにご紹介するが、ご覧いただいた通り、どこから見ても飛行艇である。
 同社の配布された資料によると主な特徴の三点として、
 
①安全な水上での離着水と高い飛行性能
 第三者や人工物が少なく安全な河川や湖、海洋など日本に多く広がる水域から離着水を行うことで、高い飛行性能を持ちながら開けた平地の少ない日本では、運用が難しい固定翼型ドローンの課題を解決します。

②過酷な洋上使用までを想定した耐環境性
 ドローンでは、数少ない過酷な洋上での使用までを想定した耐環境性を有します。
 堅牢な構造であることは、もちろん、海水や潮風による劣化を防ぐため、機体全体を水洗いすることが可能です。
 また、可搬性や使用の簡便性を重視した設計です。

③様々なミッションに対応できる拡張性
 空中から水面や地面のセンシングを行うだけでなく、水上で離着水を行えることで遠方まで進出し着水し水面から水中のセンシングをしたり、水質などの調査をおこなうことが可能です。
 また船舶からの投入回収機構と合わせて活用することにより、外洋での運用もでき、今までのドローンでは、想像もできなかった分野利用の可能性が広がります。

 と、ある。                
(下線 筆者 以下に③の同社資料からのイメージ)
  

HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)
HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)
HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)

 
 これら3種の資料からもご理解いただけると思うが、多種多様のセンサー類を搭載して飛行、水上航行をおこなうことで海洋観測や監視に幅広く運用できる機体であることから水難・捜索に活用できるのでは、ないかと考える。

HAMADORI(飛行艇型ドローンの名称)

   

 

水難による要救助者捜索への活用

 
 
  この資料にも多少記載は、あるが救難に活用できる高性能のカメラについての記述がある。
  広大な海洋においては、座標を入力して捜索活動ができ、尚且つ赤外線まで搭載した光学30倍という高性能カメラで夜間でも要救助者を捜索できる点は、素晴らしい。
  1機だけでは、捜索時間も長くかかるが、ある程度の大きさのフェリーや貨物船などの船舶が夫々飛行艇ドローンを普段から搭載しておくことで水難現場付近を航行していた際には、お互いに船舶無線などで連絡を取り合って担当する捜索エリアの座標を入力し、「索敵線」に沿った捜索をおこなうことで救助率も高くなると考える。

 

「索敵線」とは?

 

 ミッドウェー海戦時における大日本帝国海軍の計画図を先ず、ご覧いただきたい。

ミッドウェー海戦時における大日本帝国海軍の計画図
ミッドウェー海戦時における大日本帝国海軍の計画図

 当時は、「電探」(現在のレーダーの様なもの)と言われていた機器に対する信用度は低く、開発も欧米諸国に比べると遅れていた状況から、空母搭載の艦上偵察機や各戦闘艦から射出される水上機が複数で事前に決められている、座標と方位角を担当(これらを線で表したものが索敵線)して偵察結果を無電で旗艦に報告していた。
 この索敵(捜索)方法をとれば、仮に水難事故発生海域付近の飛行艇型ドローン塔載の船舶が夫々船舶無線を使って担当する座標などを決めて「索敵線」に沿った捜索をおこなうことで要救助者の早期発見が期待できるのでは、ないかと考える。

 

「遭難信号用周波数」の受信と飛行経路と発信機の関係

 

国際的に遭難用に使用されている周波数が「121.5MHz・243MHz・406.037MHz等」
と決められているので、それらの周波数を遭難海域において夫々の船舶で受信した際には、三角測量の要領で遭難位置を特定して飛行経路を決めて飛行艇型ドローンを飛行させ状況映像を母船に送るなどの運用も可能であろう。
 一部の小型飛行機などは、「国際航空遭難信号発信機」を装備していない機体もあるが参考までに腕時計に発信器が備わっているものがあるとのことで、何やらスパイ映画の話みたいであるがご紹介すると、これは、ブライトリング社製の「エマージェンシー(その名のとおり)」という、高級時計である。
 ただし、この発信機を誤用した場合、緊急救助機関及び航空交通を乱す恐れがあるとして購入者の資格要件を定めていて「航空従事者(パイロット又は準ずる者で技能証明を有する者)」しか購入できないとなっている。
 それでは、パイロット以外が遭難した場合はどうなるのか?と、御尤もな心配もあるので時計機能は無いが個人用発信器もご紹介させて頂きたい。

PLB本体
PLB本体

 日本でもようやく2014年から総務省で導入に向けた審議(救命用携帯無線機の技術的条件)が始まり、2015年8月13日付の法改正「電波法施行規則等の一部を改正する省令(総務七〇)」で日本でも個人でも使える安全設備として登場したのがPLB(Personal Locator Beacon)で利用が可能になった。
審議においては国産PLBの開発についても検討が進んでいたが、現在日本で利用できる(つまり技適が通っている)PLBは、米企業のACR Electronicsが製造した「ResQLink」※が唯一の製品だ。
                 ※画像は、同社HPから

PLB本体使用イメージ
使用イメージ

      
 ResQLinkのパッケージには、「工事設計書」などが既に記入してある申請用紙が付属しており、購入者は氏名と住所、連絡先、非常時連絡先などを記入するだけで申請できる。この免許申請に4250円がかかる他、電波使用料として毎年600円の費用が発生する。また、無線局免許の有効期限は5年間で期限が来たら再度申請をする必要がある。
 これで、無線局申請時に記入していた氏名と国籍、非常時連絡先に加えて、GPSで取得している位置情報を人工衛星に向けて自動で発信し続ける(406.037MHz、出力5W、データ長144bit、400bps)。同時に救助機の誘導電波(121.5MHz、出力25W)も発信する。バッテリーはリチウム電池で起動から24時間程度発信を繰り替えすことができるとメーカーは説明している。
 ResQLinkは防水仕様、その動作保証性能は「水深5メートルで1時間、水深10メートルで10分」となっている。
 税別約4万5000円で購入でき、PLBの利用にあたっては「遭難自動通報局」としての無線局免許を取得して「開局」する手続きが必要になる(なお、利用者においては無線従事者免許などの資格は必要ない)。

 

飛行艇型ドローンの今後の活用

 

 多種多様のセンサー類を搭載して飛行、水上航行をおこなうことで海洋観測や監視に幅広く運用できる機体であることは、前に述べた。
 それらに加えて、これまでご説明させていただいた遭難者捜索等に運用して要救助者の早期発見と救助に、貢献できるものと考える。
 直接、前回記事とした「サンダーバード型ドローン」の様に救助資機材を飛行艇型ドローンが要救助者に向けて投下することはできないが、PLSや国際航空遭難信号発信機などの情報をもとに飛行し、遭難場所や座標を緊急救助機関に送信することで生存者をより多く救助できるのでは、ないか、または、サンダーバード型ドローンと連携して救助につなげることも、近い将来ありうるのではないかと、考える。
 
 

(防災士 小松 昌勝)

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