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完成近づく「AIの眼」を導入した交通誘導システム

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完成近づく「AIの眼」を導入した交通誘導システム

AIカメラで検知し、リアルタイムで解析

交通誘導に「AIの眼」を導入した新しい警備システムの実証実験が進んでいる。このシステムは、山梨県の警備会社とITベンチャー企業がジョイントで開発を進めているKB-eyeシステム。まず車や人の接近をAIカメラで検知し、そのデータをリアルタイムで解析して判別し、どう誘導するかを判断するとともに、LEDパネルに進行、停止の合図をする人の実写映像を表示して誘導する。これまで人による誘導に頼らざるを得なかった工事現場における交通誘導警備の自動化を実現しようとするこのシステムは、すでに枝道、脇道など、比較的交通量が少ないところでの交通誘導は実用化を終え、現在、片側交互通行での実証実験が最終段階に入っている。

警備の質を一定のレベルに

実証実験では、実際の工事現場の両端に機器を設置し、万一のためを想定して、遠隔操作用のリモコンを持った警備員1名が立会い交互通行による交通誘導警備を行った。信号は、車両の通過数などからAIが最適なタイミングを選び、自動で停止・進行を切り替えた。5月20日に行われた初の実験では、8時~17時までの9時間、システムの誤作動はなく、また99%の車両は、LEDが表示した合図どおりに通行した。実験はその後も継続して行われている。

プロジェクトを立ち上げた警備会社、株式会社タスクマスターの秋山一也社長は、この実証実験について、「今回実験を行った工事現場は、そもそも工事用信号機がメインで道路使用許可が出ている場所です。KB-eyeシステムも工事用信号機と同様の扱いで使用しましたが、実際は自動制御で交互通行を行い警備員は不測の事態に備え、真ん中で見守る格好です」と述べ、また、このシステムを利用することによって、「人間には、個々の能力差がありますが、こうしたテクノロジーを利用する場合、その能力は一定の水準に保たれます。高齢化による人材不足の問題をクリアするとともに、警備の質も一定のレベルが担保される」とメリットを生むことも強調された。

なお、事故等が起きた場合の責任について尋ねると秋山氏は、「工事用信号機同様の扱いなので、強制力はなく、基本的には運転手側の判断によるものと考えています。ただ、カメラで映像を記録することから、ドライブレコーダーのように証拠が残ることになるので、事故原因や過失度合いなどの参考にはなるはずです」

 

ゆくゆくはAIだけで交通誘導を

このシステムの開発が始まったのは2017年。翌年には最初のバージョンであるKB-eye for交通誘導警備が製品化され、現在までに10数台が警備会社などに納入されて稼働しているという。株式会社タスクマスターとともにプロジェクトを立ち上げ、システムの開発を担当する株式会社ホワイトボードによると「交通誘導のほか、目的に応じた用途開発も行っており、駐車場の出入りや工事車両のヤードなどでも利用されている」という。

利用に当たっては、プロジェクトの運営会社として設立されたKB-eye株式会社によって取扱者向けの講習も用意され、カメラの設置位置や角度など、適正な運用のためのノウハウも指導している。また、稼働中の機器はクラウドでデータ管理を行っており、稼働実績の向上が、そのままシステム全体のデータの蓄積にもつながっているようである。

同社では、「このAIのシステムは、自分で学習する方式でないため、蓄積されたデータから逐次バージョンアップを行って改善を図っています。スタート時点から機能は充実してきています」と、改善の成果を強調された。

KB-eye for交通誘導警備は、国土交通省の新技術情報提供システムNETIS(New Technology Information System)に登録されている。また、2019年6月には、このプロジェクトは経済産業省の新連携支援事業の対象事業に指定され、補助金などの公的な支援が適用されることとなった。

従来品のKB-eye for 交通誘導警備のバージョンアップと並行して、その蓄積を受け継いで開発が進められているのが、現在実証実験が行われているKB-eye for 交通制御である。実験は警備員が1人立ち会う形で行われているが、株式会社ホワイトボードでは、「今は人間の警備を補助するものであっても、ゆくゆくは、AIだけで交通誘導を行うというのが、私どもの最終目標」と語っている。

 

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