セキュリティ

国土交通省空港保安検査義務化へ。2021年度中に施行される見通し。

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乗客に保安検査を義務づけ、検査を受けなかった場合は、1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科されることになる、航空法の改正法案が閣議決定された。

航空機や空港を標的としたテロ対策のため、乗客に保安検査 を義務づける、航空法の改正法案が閣議決定された。
国交省は、開会中の通常国会に航空法の改正案を提出する方針
空港における保安検査は、その実施に際して、乗客等から「検査を受けたくない」といったことや保安検査に対するクレームが後を絶たず、問題となってきたが、それに対して、法的な拘束力が明確でなかったことから、毅然とした対応が取れないことが、その防止の弊害となっていた。
そこで、閣議決定された改正法案では、乗客に保安検査を義務づけ、検査を受けなかった場合は、1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金が科されることなどの法案が、2021年度中に施行される見通しとなった。
この度、空港の保安検査に関する国土交通省の有識者会議は8日、危険物の持ち込みを制限する「クリーンエリア」に入る乗客や空港従業員らに、保安検査を義務付けるなどの改革案を柱とする中間まとめを公表した。
この改正案では、検査を受けずにエリアに立ち入ったり、検査業務を妨害したりした場合には、罰則を科す内容となっている。
 現行の航空法には、保安検査に関する規定がなく、国交省令に基づき、各航空会社が運送約款に定めて検査を実施していた。したがって、検査を拒否する乗客への対応には、検査員の負担が高まっていたことから、法的根拠を明確にすることで、実効性を担保する狙いがある。
 空港保安警備業務は、検査員の拘束時間が長く、また、難しいクレーム対応を求められるなど、厳しい労働環境にある。そこで、検査の質を高めるため先進機器の導入や検査員の教育と処遇に支援が必要なのである。
これまで、空港の保安検査員が乗客の刃物を見落とすミスが相次いでいる。
世界各国でテロ事件が続発する中、これらは、日本の空港への信頼を傷つけか
ねない重大な事態である。このような事案の発生する背景として、指摘されているのは、保安検査という検査環境の厳しさゆえに、離職率が高く、人材が育っていない現状があると言われてきた。
 2019年9月26日、大阪(伊丹)空港の全日空の保安検査場で、検査員が乗客の手荷物にあった折り畳みナイフを確認したにもかかわらず、誤って返還した。このため発着便30便以上が欠航、さらに羽田空港でもこの乗客のナイフをエックス線検査で見落としたことが判明した。伊丹空港では10月と11月に刃物を見落とすミスが日航の検査場を含め少なくとも計3回発生していた。
 空港の保安検査は航空法に基づき航空会社が責任を負うことになっている。ところが、実際の業務は、民間警備会社などに委託するケースが多い。この伊丹の保安検査は警備会社(本社福岡市)が実施している。こういった初歩的ミスの起きる背景には、早朝や深夜に及ぶ不規則な勤務。旅客の手荷物検査やボディーチェックなどで、クレーム対応が求められるなど、精神的に過酷な業務である。その業務内容に対し、待遇は決していいとはいえない。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、検査員が含まれる警備業の30人以上の事業所の昨年度の平均月給(約23万7千円)は、全産業平均に比べ約13万3千円低かった。
 大規模な空港の場合、警備会社は保安検査場を使用する複数の航空会社から委託を受けており、契約料を引き上げるためには多くの受託先との交渉が必要になるという(空港保安関係者)。
警備業務の中で、定着率の悪い警備業務は交通誘導警備業といわれているが、空港保安警備業務も定着率がよくない。その要因の多くが、前述した拘束時間が長いことと緊張感を長時間維持しなければならない就業環境、そしてクレーム処理である。
検査業務の環境の改善とクレーム対応の合法化に国土交通省空港保安検査の義務化が急がれる。

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