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中山泰男会長(全国警備業協会)、警備業の成長戦略である各プランを着実に実践し、成果を確実に出す『アクションプラン骨子(案)』のまとめを発表

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中山泰男会長(全国警備業協会)、警備業の成長戦略である各プランを着実に実践し、成果を確実に出す『アクションプラン骨子(案)』のまとめを発表

(一社)全国警備業協会中山泰男会長は、警備業の成長戦略を検討する委員会である「第5回基本問題諮問委員会」を5月21日(金)に開催し、1年近くに及ぶ検討の集大成「アクションプラン骨子(案)」をまとめたものを発表・説明した。
中山泰男会長は、警備業の成長戦略を検討する委員会で  まとめたアクションプランを実践するに当たり、「『なぜ今、この成長戦略が必要なのか』をまず正しく理解することが最
も重要である。それは、換言すれば、『警備業を取り巻く環境の変化を正しく理解するとともに、警備業の現状を正しく認識した上で、今後の警備業の在るべき姿を描き出し、そこへ至る戦略とアプローチの方法を導き出す』ことの意義と重要性にほかならない。」と言い、五つの作業部会の検討結果を取りまとめた各種取組課題を短期・中長期ごとに整理しており、今後この取りまとめをたたき台として、総務委員会、理事会等及び各都道府県警備業協会等から聴取した意見などを加えて、全警協全体としてのプランに仕立てていくプロセスである。
 
会長主導とした、実践的な警備業の成長戦略を検討するのは業界では初めてのことであり、その戦略が警備員不足をはじめとした短中期的なアクションプランには大いに期待できる。
 特に、外国人の雇用問題については、警備業界だけの問題ではなく、日本の労働産業全体の問題である。その外国人の雇用については、これまで、外国人が増えることは犯罪が増えるなどとして、極めて閉鎖的思考から業界は避けてきた経緯がある。そこに、中山会長は国際的な視野から客観的に警備業の現状を分析し、成長戦略の一つとしてアクションプランにしたことについては、特に注目をしたい。
第5回基本問題諮問委員会の全容は、次のとおり(セキュリティ・タイムから)。

 第5回会議には、中山会長をはじめ委員15名が出席、また、警察庁生活安全企画課担当官1名が今回もオブザーバーとして参加された。事務局からは、福島克臣専務理事、黒木慶秀特別顧問、楯悦男常務理事ほか職員が参加した。
 最初に、中山会長から挨拶があり、「1年近くにわたる検討の集大成といえる『アクションプラン骨子(案)』がここについにまとまった。委員の皆様方のこれまでの長期にわたるご努力、ご尽力に対して改めて敬意を表すとともに厚く感謝申し上げる。」と委員を労う一方、「しかし、これで終わりということではない。アクションプランの目指すものは、警備業の成長戦略である各プランを着実に実践し、成果を確実に出すことにある。その鍵となるのは、アクションプランに関する正しい理解と、理事会・総務委員会及び各種委員会等との緊密な連携である。それを踏まえた上で、引き続き、皆様方の一層のご協力、ご尽力をお願いしたい。」と今後の更なる協力を求めた。

■ 警備業の未来の姿を見据え、今こそ変革する絶好の好機
  続いて、今回まとまった「アクションプラン骨子(案)」の第1章「はじめに」ついて、中山会長自らが説明を行い、「この第1章には、私の熱い想いを込めた。」と述べた。要旨は次のとおり。

■ 第1章
「はじめに」

(1)アクションプランを実践し成果を出すためには、「なぜ今、この成長戦略が必要なのか」をまず正しく理解することが最も重要である。それは、換言すれば、「警備業を取り巻く環境の変化を正しく理解するとともに、警備業の現状を正しく認識した上で、今後の警備業の在るべき姿を描き出し、そこへ至る戦略とアプローチの方法を導き出す」ことの意義と重要性にほかならない。

(2)コロナ前から警備業に大きな影響を与えている二つの潮流がある。一つは、少子高齢化による生産年齢人口の減少であり、もう一つは、AI・IOTなどテクノロジーの急速な進歩である。前者の潮流は、警備業が抱える経営基盤の脆弱性を浮き彫りにした。それを象徴するのが、警備員不足問題である。
 また、後者の潮流を背景に、社会や顧客は企業に生産性及びサービス品質の向上を求めているが、旧来の体質が残る警備業はその要求に十分に応えられていない。こうした二つの潮流の影響を如実に示したのが、今から約3年前に浮上した交通誘導警備員の自家警備問題である。

(3)警備業において、高度化、多様化とともに増加する、ニーズと供給とのギャップが今後更に拡大すると、近い将来、ウーバーイーツやカーシェアリング等に代表される「シェアリングエコノミー」のような新しい業態のサービスを求める声がより強まってくる可能性もある。現在の枠組みが永遠に続くとも限らない。

(4)警備業界が二つの潮流への対応を迫られる中にあって、コロナ禍が起きた。今回のコロナ禍は非接触、被対面でも安全・安心を高めていくことができるのか、その工夫という新たな課題を付加している。
 しかし、展望は決して暗いものばかりではない。コロナ禍にあってエッセンシャルワーカーとしての警備業の位置付けが明確になり、その役割が社会により広く深く認識された。東京2020大会での警備業の役割はもとより、近年、次元が変わったように頻発し激甚化する自然災害の下、安全・安心のプロである警備業への期待も強まっている。さらに、高齢者の見守りなど、新しいニーズも生まれている。

(5)目を閉じて未来の警備業の姿を想像すると、そこには信頼をベースに、警備員一人ひとりが誇りをもって生き生きと働き、社会に寄り添い、隅々まで浸透している生活安全産業の姿がある。今こそ変革の時である。「Now or Never(ナウ オア ネバー)=今やらなければ永遠にできない。今こそ絶好の好機!」の想いで、警備業がチャンスをつかんで進みたい。時代の先を見据えた警備業の在り方を広い視野と志を持って検討し、未来を切り拓くための新たな成長戦略を固め、実行していくことが必要不可欠なのである。

 こうした観点に立ち、成長戦略を検討する委員会と位置付ける基本問題諮問委員会で昨年7月から検討、議論を重ね、このほどまとまったのが「アクションプラン骨子(案)」である。本アクションプランは、五つの作業部会の検討結果を取りまとめたものであり、各種取組課題を短期・中長期ごとに整理している。今後この取りまとめをたたき台とし、総務委員会、理事会等及び各都道府県警備業協会等から聴取した意見などを加えて全警協全体としてのプランに仕立てていく。  
 そして、警備業界一丸となって、各種施策を実行していく。また、中長期的な課題など業界の未来を見据えた成長戦略であるため、各都道府県警備業協会の青年部会の力もお借りしたいと考えている。

■ 短期アクションプランと中長期アクションプラン
 次に、各作業部会の部会長5名が、「アクションプラン骨子(案)」の各論部である第2章から第6章について、それぞれ説明した。
 各論部の章はいずれも、(1)概況(2)検討状況(3)短期アクションプラン(4)中長期アクションプラン(5)今後の各項目で構成されている。概況及び検討状況の主な内容については、これまで適時、本誌上で報告していることから、ここでは、具体的な取組課題となる「短期アクションプラン」及び「中長期アクションプラン」について、その要旨を以下に簡潔に記すこととする。

■ 第2章
「外国人雇用」

発表者:折田康徳部会長(福岡県警備業協会会長)

▼ 短期アクションプラン
 47都道府県協会加盟の4条業者全社(約5500社)に対し実施したアンケート調査結果(回答3072社)から、現状では、多くの企業が外国人雇用に関して様々な多くの不安を抱いている実態がうかがえた。このことを踏まえ、喫緊の課題として、在留資格「特定技能」における制度設計をしっかりと整理し、加盟各社への周知広報等を行うなどして、業界全体の理解を得ていくことが重要と考える。
 また、警備業種によっては、そもそも外国人雇用自体が難しい業種もあることから、まずは外国人雇用において比較的親和性が高いと判断される空港保安業務に試験区分を限定して制度設計を行い、そこを入口として警備業の「特定技能」への参入を図る方向で今後、各種検討を行なっていきたい考えである。

▼ 中長期アクションプラン
  日本語学校へのヒアリング等の結果、日本語学校に通う留学生は、日本で就労するに当たりアドバンテージも大きく、「特定技能」との相性も高いと思われる。日本語学校と警備業界が連携を取り、留学生を在学中にアルバイトで雇った上で、卒業後に「特定技能」で受け入れていくという一連の仕組みを作っていくことが、一つの方向性であると考える。

■ 第3章
「ICT・テクノロジーの活用」

発表者:豊島貴子部会長(山口県警備業協会会長)

▼ 短期アクションプラン
 社会のデジタル化(DX化=デジタルトランスフォーメーション)は、  今や国家方針であり、免れることのできない経営環境である。
 すなわち、「やりたいかどうか」ではなく「どうやるか」という視点において考察を重ねた結果、警備業がDX社会に呼応する業界に進化、変貌するには、段階を踏みながらも、ある一定程度の強制性が必要であり、期限を定め、協会の情報の発信・受信をまずデジタル化することが、必ずや加盟各社の経営基盤を強化する一助となり得る、との結論を得た。全警協、各都道府県協会、警備員特別講習事業センターが連携して主導するとともに、加盟する全社がデジタル環境を整えられるように強力に支援することが重要である。

▼ 中長期アクションプラン
 自助・共助・公助の考えを基に、短期・中期・長期の視点で取組課題の「ロードマップ」を作成した。旧来の体質が残る業界を一定の強制性をもって変革させる必要があることへの理解を広く求めるには、十分な広報活動が必要条件となる。
ICT・テクノロジーについては、今後も目まぐるしい技術革新が予想される。在るべき警備業の未来を見据えた調査・研究を怠ることのないよう、継続した議論の場を持ち、業界一丸となって新技術への関心を高め、かつその活用を図ることにより、エッセンシャルワーカーとしての更なる確固たる地位を獲得したい。

■ 第4章
「成長戦略に資する警備業法の見直し」

発表者:首藤洋一部会長(セコム㈱法務部長)

▼ 短期アクションプラン
 同プランでは、
(1)警備業界の諸課題の解決に向けた警備業法の見直しに関する継続的な検討と要望書の提出
(2)「警備業ガイドライン」(仮称)構想に関する検討及び策定
(3)警備業法の運用平準化のための仕組みづくりに関する検討(生産性向上施策の第2弾)
(4)行政のデジタル化に関する要望書の実現に向けたフォローアップの4項目を取組課題として挙げるとともに、そのロードマップを作成した。

 特に、警備業ガイドライン構想については、全体構成(基本方針や大項目・中項目程度の詳細を含む)及び各項目の具体的内容(安全ガイドラインなどの個別ガイドライン)の策定作業を平行して進め、2022年の時点で策定できている内容をもって、その運用を開始することを目指し、速やかに検討を始めたい。

▼ 中長期アクションプラン
 同プランでは、
(1)警備業法に関する新たな改正要望や課題の研究・情報収集・検討
(2)「警備業ガイドライン」(仮称)に関する1年ごとのフォローアップ調査の実施及び必要に応じての追加・改定
(3)警備業法の運用においてばらつきの残るものについて順次対応の3項目を掲げている。

短期・中長期アクションプランの実行により、諸課題を現実に解決していくことのできる「的確なルール」の策定を推進したい。

■ 第5章
「経営基盤の強化、単価引き上げ策」

発表者:佐々木誠部会長(東京都警備業協会副会長)

▼ 短期アクションプラン
 適正な警備料金を確保し、それを原資として警備員の処遇改善を推進することにより、警備員不足問題を是正するとともに経営基盤を強化することができることは、業界関係者の多くが知るところである。
 しかし、残念ながら現状は、その方向に着実に進んでいるとは言い難い。
最大の障壁となっているのは、これまでも指摘されてきた「経営者の意識と倫理」の問題である。
 その観点に立ち、短期アクションプランでは、
(1)「警備業経営者のための倫理要網」の改訂及び警備員の処遇改善に向けた「スローガン」の設定
(2)経営者研修会等を通じた全国斉一的な「経営者教育」の実践(3)総合的なダンピング防止対策の推進の3項目を挙げている。

▼ 中長期アクションプラン
 同プランでは、自治体等のユーザーが警備業者を適切に選定するための「明確なルール(基準)づくりの検討」を挙げている。全警協として、全国統一的な何らかの基準を設けることができれば、警備業者の適正な価格競争を通じて、業界の発展につながる可能性があることから、基準の策定について検討する必要があると考える。長期的には、㊜マークや経営事項審査の導入についても検討していく必要があると考える。

■ 第6章
「災害時における警備業の役割の明確化」

発表者:松尾浩三部会長(岡山県警備業協会会長)

▼ 短期アクションプラン
 同プランでは、
(1)災害時の出動警備員に関する「安全ガイドライン」の作成について、「成長戦略に資する警備業法の見直し」作業部会と協議していく
(2)本作業部会で作成した見本の「災害支援協定書」と「覚書」及び「災害時等警備実施要領」を全警協防災委員会へ提言する
(3)グループでの対応を可能にするため、防災委員会の下部組織として「防災への取組作業部会」を新設し災害対応を実施したい
(4)防災訓練や災害支援要員の組織づくりを行い、連絡網のチェックや安全確認を実施する
(5)加盟員のBCP(事業継続計画)のために、見本となる「災害時等警備実施要領」を配信し、講習会等を継続的に開催していく
(6)未締結である広域支援協定の締結を完了させることができるよう働きかける
(7)適正料金・適正取引の下、有償出動・派遣(激甚災害等)交渉補助のために本作業部会員等が出向き、警備料金の根拠を説明する
(8)同プランに関するPDCAサイクルへの取組を継続的に行う等の計11項目の取組課題を挙げている。

▼ 中長期アクションプラン
 同プランでは、
(1)各都道府県協会の災害支援協定・細目協定の再締結、又は災害時等に覚書などで対応する
(2)各都道府県協会が指定地方公共機関に指定された上で、全警協が指定公共機関に指定されるよう検討を進める2項目を挙げている。
各プランの実践に向けて今後も継続的に取り組む

 今回は、各部会長が報告・説明を終えるごとに、中山会長をはじめ各委員から様々な意見等が寄せられた。それらの意見等は、事務局でまとめた上で、「アクションプラン骨子(案)」の最終的な精査作業や、各作業部会の今後の活動等に反映させることとした。
全ての部会長の報告・説明が終了した後、アクションプランの実行の進め方や今後の各作業部会の在り方や活動等について、出席者全員で改めて協議を行った。また、オブザーバーとして参加していただいた警察庁生活安全企画担当官からもご意見を賜った。

 最後に、中山会長が総括し、「皆さんの多大なるご努力により、本当に良いものができた。委員の皆さんに改めて深く感謝申し上げたい。本日は全委員で最終確認を行い、今後に向けた有意義な協議ができた。重ねて申し上げるが、本アクションプランを着実に実践し成果を確実に出すためには、委員の皆さんの引き続きのご協力が不可欠である。今後ともよろしくお願い申し上げる。」と述べた。

 以上をもって、第5回本諮問委員会を終了した。

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