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不動産取引での「人の死」告げるべき内容を提示 | 宅建業者に対するガイドライン案が決まる

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不動産取引での「人の死」告げるべき内容を提示 | 宅建業者に対するガイドライン案が決まる

原則は「居住用」での他殺、自死、事故死など

 国交省は2021年5月20日、「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」の案を公表した。事件・事故に巻き込まれて亡くなったり自殺したりする人のほか、近年、高齢者の孤独死の増加もあって、売主・貸主が買主・借主にどこまで告げるべきかが課題となっており、これを巡るトラブルを回避するための「判断基準」が求められていた。ガイドライン案は告げるべき「死」を「居住用」での他殺、自死、事故死などとした。

 国交省は2020(令和2)年2月、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」(座長:中城康彦・明海大学不動産学部長)を設置し、不動産において過去に人の死が生じた場合、その不動産の取引に際して宅地建物取引業者がとるべき対応と、業者が宅地建物取引業法上負うべき責務の解釈について議論を続けてきた。このガイドライン案は、トラブルの未然防止の観点から、現時点において判例や取引実務に照らして一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものだという。

国交省はまた、宅地建物取引業者がこのガイドラインで示した対応を行わなかった場合、それだけで直ちに宅地建物取引業法違反とはならないが、業者の対応を巡ってトラブルとなった場合には、行政庁における監督に当たってこのガイドラインが考慮されることとなる、と「順守」を呼びかけている。加えて、このガイドラインが、宅地建物取引業者のみならず、取引当事者の判断においても参考にされ、トラブルの未然防止につながることも「期待」するとしている。

公表されたガイドライン案よると、居住用不動産とオフィス用不動産を比較した場合、居住用不動産は人が継続的に生活する場として用いられ、買主・借主は、快適性や住み心地の良さなどを期待して入居するため、他殺、自死、事故死などの人の死が取引の判断に影響を及ぼす度合いは高いと考えられることから、ここでは居住用不動産での人の死に関する事案を取り扱うとした。そのうち、集合住宅の取引においては、買主・借主が居住の用に供する専有部分・貸室に加え、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段など日常生活において通常使用する必要があり、住み心地の良さに影響を与えると考えられる部分も対象に含むとした。

では、どんな「死」が告げるべきものになるのか。案では、他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合、原則として告げるものとすると提示した。理由として、そうした不動産取引において説明がなかったり不十分だったりした場合、買主が売主に対して説明義務違反等を理由とする損害賠償などの多くの紛争がみられることを挙げている。一方で、自然死または日常生活の中での不慮の死が発生した場合は告げる必要ないものとして除外した。これまでの判例でも、自然死については心理的瑕疵への該当を否定したものが存在し、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いことを理由としている。
では、告げるべき「死」を把握するために業者はどこまでしなければいけないのか。案は、「自 発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められない」としつつ、通常の情報収集等の調査過程において、売主・貸主や管理業者から知らされた場合と自らこれらの事案が発生したことを認識した場合(例えば、売主である宅地建物取引業者が物件を取得する際に事案の存在を把握した場合等)には、買主・借主に対して告げなければならないと定めた。ただ、媒介を行う宅地建物取引業者は、売主・貸主に対して告知書等に過去に生じた事案についての記載を求めることで調査義務を果たしたものとするとした。告げるべき内容は、発生時期、場所及び死因(不明である場合にはその旨)。いつまでさかのぼればいいのかについては、賃貸についてのみ、おおむね3年前までとした。

ガイドラインは、新たな判例や取引実務の変化を踏まえるとともに社会情勢や人々の意識の変化に応じて適時に見直しを行うという。案については6月19日までパブリック・コメントを募集している。詳細は「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)に関する意見募集について|e-Govパブリック・コメントで。

(阿部 治樹)

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