セキュリティ

「NAMIMONOGATARI2021」の警備の実施は的確だったのか?(続報)

セキュリティ警備業
「NAMIMONOGATARI2021」の警備の実施は的確だったのか?(続報)

前回の記事「NAMIMONOGATARI2021」の警備の実施は的確だったのか?

「スーパーソニック」開催で注目される感染防止対策の徹底と警備

 新型コロナウィルス感染対策が不十分として批判を浴びている「NAMIMONOGATRI2021」だが、イベント絡みのトラブルは今回に限ったことではない。2016年から2019年まで4年にわたって会場を提供していた常滑市によると、飲酒して喧嘩、真夏の開催のため熱中症になった人の病院搬送、イベント終了後に駐車場で騒いで近隣の迷惑になるといった事案があったという。関係者によると、会場を利用する側には安全管理を行う条件で場所を貸しており、警備員については会場を利用する側で発注してもらうことになっている。当時の会場内外の警備については警備員をしっかり配置している感じはなく、特に会場内の観客対応については、主にスタッフ関係者が行っていたように思うという。喧嘩が起きる等の問題が発生すれば、次に会場を借りる条件として利用者側に改善要望を出し、毎年対応はしてもらっていたとのことだが、イベントの規模が年々大きくなっていたこともあり、毎年新たな改善点が発生するような状態だったという。

 今年はコロナ禍での開催となり、今まで起きたトラブル以外に感染防止対策を徹底して実施しなければならなかったにも関わらず、それを怠ったイベント主催者の怠慢は看過できない。愛知県では本イベントに参加した県民希望者に無料でPCR検査を実施したところ、9月10日時点で24人の感染者が出たと発表。全国では38人が感染していることがわかった。はたして、感染防止対策はどこまで行われていたのか、どのような警備体制が敷かれていたのか、来場者だけでなく警備にあたる会場スタッフや警備員の安全は担保されていたのだろうか。警備業に携わる者としては気になるところだ。

 会場を管理する愛知県国際展示場の利用規約によると、「会場警備については、利用者の責任において、警備会社への委託又は警備責任者の配置を行い、交通整理、場内整理を行ってください」とある。感染予防対策運用の手引きには、「来館者の検温等のチェックは主催者側で行うこととし、検温チェックにはサーマルカメラ・非接触型体温計等を使用してください」、マスクの着用についても「来館者については、主催者側の関係者/スタッフにて行ってください」とある。つまり、警備員の手配や感染対策については主催者側が行うことになっている。感染対策や警備状況について愛知県国際展示場に問い合わせると、主催者に問い合わせて欲しいとのことで概要すら聞くことができなかった。そして、主催者とは連絡を取れないままだ。

 9月3日、イベント主催者はコロナ感染を避ける対応が不十分であったこと、独自の判断により酒類を販売したことを認め、県が立ち上げる第三者委員会で事実確認について避けることなく、万難を排して協力すると公式サイトであらためて謝罪。報道では主催者が雲隠れ状態ともあるが、愛知県によると主催者との連絡は取れる状況にあるという。なお、第三者検証委員会は、大学教授、弁護士、公認会計士、医師の4名で構成され、第1回検証委員会は16日にオンライン形式で行われた。

 今回の問題が音楽イベントに及ぼす影響は大きい。9月2日には、4つの音楽団体からNAMIMONOGATARI主催者を非難するとともに、ライブ・エンターテインメント公演事業に理解を求める共同声明が出された。9月11日、12日にZOZOマリンスタジアムで行われる「スーパーソニック」は、9日付で千葉市の名義後援が取り消された。ここにもNAMIMONOGATARIの影響があったのだろうか。
 千葉市役所文化振興課によると、市としてはあくまで新型コロナウィルス感染症の新規感染者数の増加、重症者数の大幅な増加、医療体制のひっ迫等、現在の感染状況を鑑み、開催延期や規模縮小等の要請をしたところ、主催者側が延期は難しく、来場者人数は極力縮小する努力はするものの5000人規模にするのは難しいとのことで後援を取り消したものであり、愛知県のイベントとは無関係。市の要請に応えられない場合の後援取り消しの可能性については、事前に主催者側に伝えていたことだという。開催当日、千葉市では職員を会場に派遣して感染対策の確認や周辺の巡回指導を行う。

 後援の取り下げについて、主催者側は致し方ないところがあると感じており、その後も千葉市と開催に向けた協議が行われているという。感染を危惧するチケット購入者に対しては払い戻しも行われており、当日の来場者は1日あたり1万人弱になると見込んでいる。感染防止対策についての詳細は公式サイトに掲載されているが、スタンディングを予定していたアリーナ内は人と人の距離を確保するために椅子席に変更、会場との直行直帰の呼びかけを強化する等、見直しされた部分もある。感染防止のためには、観客の理解と協力が不可欠。そのためにも、事前の呼びかけと当日の呼びかけで協力をお願いしていくとしている。9月10日には来場が叶わなかった人や地方在住者にも楽しんでもらうため、インターネットでライブ映像を無料配信すると発表。また、アプリでの本人登録(万一感染者が出た場合は保健所へ情報提供される)の受付が開始された。

 一方、警備はどのように行われるのだろうか。主催側によれば、入退場口の各ポイントやステージ前に警備員を配置して観客を安全に誘導。密になる場所があれば声をかける等、常に状況をみながら対応できるように体制を整えているという。基本的には警備会社(複数)に依頼することになるが、主催側のスタッフと情報を共有しながら判断。警備員については、入場時の検温、登録アプリの画面チェック、正しく消毒が行われているか等の業務にも携わることになるが、コロナ禍での他のイベント警備等で積んだ経験が今回のスーパーソニックの警備にもいかされるものと期待している。

 

(藤原 広栄)

Security News for professionals main center ad
Security News for professionals main footer ad