高止まり傾向にある万引き犯罪を減らす足立区の取り組み
警察庁が公表した2020(令和2)年の犯罪統計によると、全国の刑法犯認知件数は614,231件で、前年比で134,328件減少(−17.9パーセント)。そのうち、万引犯罪の認知件数は87,280件で、前年比で6,532件の減少(−7パーセント)だった。近年、刑法犯認知件数に急激な減少傾向がみられる一方、万引き件数の減少傾向は緩慢で高止まり状況にある。
東京都足立区も、2001(平成13)年に16,843件だった刑法犯認知件数が、2019(平成31・令和元)年には戦後最少の4,764件までに減少。これは、足立区が地域や警察等と連携して2008(平成20)年から取り組んでいる「ビューティフル・ウィンドウズ運動」(地域清掃等の美化活動、安全パトロール、街角防犯カメラ設置助成、無施錠自転車に警告札の取り付けや鍵かけ等をする活動)の効果も大きいと思われる。しかし、足立区においても万引き件数は高止まりしていることから、2020(令和2)年度は万引き対策を強化。店舗用防犯カメラ等の設置費、万引き防止のための声かけ要員雇用費、不審な行動を検知するAIカメラ設置費を助成(予算総額10,820,000円)し、警察署や事業者と連携して万引き防止に取り組んだ。その結果、2020(令和2)年の足立区内の万引犯罪の認知件数は、前年比で128件減少(−24.2パーセント)し400件に抑えることができた。
この結果に関して足立区危機管理部では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛の影響もあると思われるが、特に警察と連携して各店舗に万引き対策の取り組みを働きかけた成果でもある。今回の対策の好事例は多くの店舗に広げていき、万引き対策だけでなく自転車窃盗対策、特殊詐欺対策とあわせて区民・店舗・警察等と協働しながら、引き続き既存の対策を着実に継続していくとともに、新たな取り組みも検討、推進していくとしている。
足立区内の2020(令和2)年の刑法犯認知件数は3,693件で、前年比で1,071件減少(−22.5パーセント)となり、2年連続で戦後最少を更新。区民3,000人を対象に毎年実施している2020(令和2)年度の世論調査によると、「治安が良い」と感じる人の割合が61.6パーセント(前年比3.3ポイント増)で、こちらも2年連続で過去最高を更新。犯罪認知件数の数値だけでなく、治安の良さを実感している区民が増えていることにも足立区の取り組みの成果がみてとれる。
(藤原 広栄)