航空法改正案が閣議決定! | ドローンを飛ばして、機械警備即応対処業務の遅延件数を減らすことは、果たして可能となるのか?
1.改正のあらまし
「航空法等の一部を改正する改正案」が2021年3月9日閣議決定され、第204回通常国会で審議後、可決成立すれば「公布の日から一年六カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされていることから2022年秋ごろには、施行見込みとなった。
これは、無人航空機(ドローン)が現在、飛行を認められていない「有人地帯における補助者無し目視外飛行」(レベル4)を実現すべく、これまで交通政策審議会等において検討が行われてきた。
レベル1は、目視内での操縦飛行、レベル2は、自動・自律での目視飛行、レベル3は、無人地帯における目視外飛行(日本郵便㈱が福島県内の小高郵便局と浪江郵便局間の約9Kmで輸送実験を実施済)を、言う。
2.これまでの警備業におけるドローンの活用等
セコムは、2017年4月27日、自律飛行型ドローンを活用した「巡回監視サービス」の実証実験を山口県の刑務所「美弥社会復帰促進センター」において、事前に経路(速度・高度・方向)を設定しておけば遠隔操作でドローンが離陸して設定経路を定時定線に巡回を行えることを同一施設内の警備室で確認している。
●刑務所における運用イメージ綜合警備保障(ALSOK)も2020年7月30日、東京スカイツリー1階のソラマチ商店街において同様の実証実験をおこなったが、セコムの実験と大きく違うところは、屋内を飛行させている点である。
これは、機体の上下面に取り付けた合計6個の超広角カメラで飛行中に撮影した映像から、空間地図をリアルタイムで作成してその地図をもとに画像から判断した障害物を避けて飛行するというものだ。
●屋内における運用イメージ ●警備業界での主なドローン活用の取り組みに関する時系列表3.機械警備業務
機械警備業務とは、警備業務用機械装置(警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置で内閣府令※で定めるものいう。)を使用して行う施設警備業務をいう。(警備業法第二条 第五項)
※内閣府令で定めるとは、電話その他送信者の音声を送信し、及び受信するための措置以外の装置をいう。(音声のみでの送受信は、該当しない。)
これをもう少し補足すると、警備先の施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報(赤外線センサーやマグネットセンサーからの信号等)を警備先の施設とは、別の基地局(警備会社のガードセンター等)に設置する機器へ自動送受信するための装置のことで、異常事態の発生を感知、検出する装置(赤外線や映像、スイッチ、各種センサーなど)の作動状況を管理し、異常事態が発生したかどうかを識別して、これを情報化する装置(制御盤等)、異常事態発生の情報を送信する装置(伝送装置等)、この情報を受信し表示する装置(受信盤等)これらの装置に電力等を供給する装置(電源装置等)などで警備会社の基地局に設置の受信用センターマシンのことを言いうが、同じ様な装置を使用して同一施設内で常駐する警備員が対処する場合(ローカルシステムと、いう)、機械警備業務には、該当しない。
簡単に言えば、離れた場所にある警備会社基地局の機器で異常を確認できる一連のシステム機器などのことを指す。
4.機械警備業務における即応体制の整備(警備業法第四十三条)
機械警備業者は、都道府県公安委員会で定める基準に従い、基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合に、速やかに、現場における警備員による事実の確認その他の必要な措置が講じられるようにするため、必要な数の警備員、待機所(警備員の待機する施設をいう)及び車両その他の装備を適正に配置しておかなければならない。
(下線は、筆者)
この条文により、機械警備業者は、誤報対策や車両(自転車やバイクを含む警備員の移動手段)の配備と待機場所(駐車場を確保して車両内に待機しても待機場所とは、ならない)の必要数確保とそれに必要な勤務する警備員(業界での呼び方としてセコム系は、「ビート要員」綜合警備系は、「機動隊員」と、呼んでいる。)も同様に配置しなければならないが、これが多いほどコストが掛かるので警備業者としては、全ての費用を押さえたいと考えているが、「遅延」と「遅延率」という、課題を常に最優先で取り組まなければならない現状にある。
5.遅延と遅延率
ここで先ずは、大阪府(他の都道府県も凡そ同じ)の規則をご覧いただく。
○機械警備業者の即応体制の整備の基準等に関する規則
昭和58年1月5日
大阪府公安委員会規則第1号
機械警備業者の即応体制の整備の基準等に関する規則を次のように定める。
機械警備業者の即応体制の整備の基準等に関する規則
第1条 この規則は、警備業法(昭和47年法律第117号)第43条の規定により、機械警備業者が機械警備業務を行う場合の即応体制の整備の基準等を定めるものとする。
(平17公委規則19・一部改正)
(即応体制の整備の基準)
第2条 機械警備業者が機械警備業務を行う場合の警備員、待機所及び車両その他の装備の配置は、基地局において盗難等の事故の発生に関する情報(へき地等に所在し、かつ、基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合に近隣に居住する管理者に連絡して事実の確認をする等必要な措置を講ずることができると大阪府公安委員会が認めた警備業務対象施設に係るものを除く。) を受信した場合にその受信の時から25分以内に当該現場に警備員を到着させることができるように行わなければならない。
(努力義務)第3条 機械警備業者は、基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合における警備員を当該現場に到着させるのに要する時間を短縮し、及び当該現場における警備員による事実の確認その他の措置がより効果的に講じられるようにするため、配置する警備員、待機所及び車両その他の装備を充実するように努めなければならない。
(赤字は、筆者)附 則
(施行期日)
1 この規則は、昭和58年1月15日から施行する。
(経過措置)
2 警備業法第11条の7の警備員、待機所及び車両その他の装備の適正配置に関する基準は、この規則の施行の日から1年間は、第2条の規定にかかわらず、基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合に速やかに警備員を当該現場に向かわせる等必要な措置を講ずることができることとする。
附 則(平成17年公委規則第19号)
この規則は、公布の日から施行する。
この様に書かれており、簡単に言えば「信号を受信したら25分(どこでも大体同じで、北海道や一部の地域と免れる警備先を除いて。)以内に警備員を現着(当該対象現場に到着すること)させて対処させなければならないという、時間の制限が厳しく課せられている。
2008年3月には、現着遅延が出動回数1,030件に対して2割に当たる213件あったとして、福岡県公安委員会が「全日警 福岡支社」に立入検査を実施した結果、同社は、6日間の営業停止処分と福岡県から指名停止となった例もあることから、「即応体制の不備」とならないためにとるべき対策は、機械警備業者にとって非常に重要な位置を占めている。
6.現着遅延となる主な原因
①待機場所から対象施設までの距離が遠い(俗にいう遠隔地物件)
②慢性的に道路渋滞が起こる場所に対象施設がある
③同一エリアにおいて異なる対象施設から、ほぼ同時刻に信号を受信したことにとり、どちらかは、後回しとなってしまう。(俗にいうW発報)
④出動出遅れ(食事中・給油中・仮眠中など)
⑤悪天候(大雪・大雨)や車両故障、交通事故など。
この他にも、遅延が発生する原因や事由は、ありますが主な5点を挙げてみた。
7.遅延対策
5.に示した第3条の「努力義務」に、警備員・待機所・車両とありますが、これらは、全て警備員数・待機施設数・車両台数のことで当然、「遅延が出ない数を準備しなさい!」と言っているわけである。
しかし、警備業者も無尽蔵に費用を掛けられる訳では、ないので機械警備の請負契約料金がそもそも底値のような各社の現状から遅延対策には、コストを抑えて尚且つ効果ある方法を日々探求している。
また、警備業法の第四十二条には、「機械警備業者は、基地局ごとに、警備業務用機械装置の運用を監督し、警備員に対する指令業務を統制し、その他機械警備業務を管理する業務で内閣府令で定めるものを行う機械警備業務管理者を、次項の機械警備業務管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならない。」とあり、やはり離れた場所で監視していることを重要視していて信号等を受信した際には、迅速的確な対応措置が講ぜられなければ効果的な警備業務は、期待できない。
(下線:警備業法の解説より引用)
と、記されており、専門の管理者を選任して適正に業務を実施する制度を設けていることからも遅延対策には、特段に留意しなければならない。