一般

生活困窮者や資金繰りに苦しむ企業を狙ったファクタリング被害が急増

一般
生活困窮者や資金繰りに苦しむ企業を狙ったファクタリング被害が急増

企業が保有する売掛債権を一定の手数料を徴収して買い取り、その管理や回収を行う「ファクタリング」という金融サービスが急速な伸びをみせている。日本における買取ファクタリングの実績は、1995年で約1,600億円、1999年で約4,500億円、2003年で約8,000億円と右肩上がりで増加。その背景には手形取引の縮小による売掛債権流動化での資金調達ニーズ、1998年10月の債権譲渡特例法施行によって、新たに登記による対抗要件制度が創設されるなど、売掛債権譲渡に関する法的整備が進んでいることが挙げられる。

このファクタリングの方式を企業ではなく個人にあてはめたのが「給与ファクタリング」で、個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を、給与の支払日前に一定の手数料を徴収して買い取り、給与が支払われた後に個人を通じて資金の回収を行う。法的には債権の売買(債権譲渡)契約となり、業として行うことは貸金業になるため、財務局長または都道府県知事の登録を受ける必要があるのだが、生活費や資金繰りに困窮する個人や中小企業を狙った、違法な貸付等を行うファクタリングが問題となっている。特に個人の場合は給料の前借り感覚で利用できるとあって、被害が拡大している。

2月9日、大阪地方裁判所は、給与ファクタリングと称して客を集め、2020年3月から6月にかけて20代から40代の男性4人に、計29万円を貸し付け、貸金業法で定める年利の上限(109.5%)を超える利息を受け取った疑いで逮捕された事業者(東京都荒川区)の男性に、高金利(年利換算620%超)で悪質性が高く経営者としての責任は重いとして懲役2年、執行猶予3年、罰金150万円の判決を下した。同日、東京地方裁判所も、給与ファクタリングは貸金業にあたり、法外な金利を求める契約は無効だとして男女9人が業者に返金を求めた訴訟で、貸金業の登録を受けずに違法な金利(年利換算250%超)を受け取ったとして、契約は違法と認め全額返還するよう事業者(東京都新宿区)に命じた。

2020年3月24日、東京地方裁判所は、給与ファクタリングの訴訟で取引は貸金にあたるとの判断を示し、出資法にも違反し刑事罰の対象にもなると判決を下していた。給与ファクタリング業者の手数料が高い背景には、高配当を要求する投資家の存在があり、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」に抵触すれば、投資家にも捜査が及ぶ可能性があるという。

新型コロナウイルス感染症に便乗して、ヤミ金融業者による違法な貸付け等が行われる懸念がある。法外な手数料を支払わされるだけでなく、恫喝や勤務先への連絡といった、私生活を脅かすような悪質な取立て被害を受ける危険性もあるとして、金融庁(https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html)や警視庁(https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/yamikin/kyuyofakuta.html)は、ファクタリングを装ったヤミ金融業者を利用しないよう注意喚起している。

(藤原 広栄)

Security News for professionals main center ad
Security News for professionals main footer ad