昨年末までの「妨害運転罪」摘発は58件。ゆとりある運転であおり運転をしない、させない
既に各紙等で報道されている通り、警察庁の発表によると、改正道路交通法で創設され2020(令和2)年6月に施行された「妨害運転罪」の摘発が、同年末までの半年間に28都道府県で58件あったことがわかった。都道府県別では大阪7件、岡山・埼玉が各6件、北海道4件、東京・京都・千葉が各3件。年代別では40代が18人、30代・50代が各13人と続いた。摘発の内訳を見てみると、充分に車間距離をとらない「車間距離保持義務違反」が最も多く13件。前方で急にブレーキを踏む「急ブレーキ禁止違反」が11件。幅寄せ等の「安全運転義務違反」が10件。急な車線変更等の「進路変更禁止違反」が9件等。このうち、高速道路上で車を停車させる等「著しい危険」が適用されたのは17件、人身事故が7件だった。全体の9割超の54件は、ドライブレコーダーの映像が摘発の証拠となったという。
「妨害運転罪」とは、通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせる恐れのある幅寄せや割り込み、車間距離の不保持、不必要な急ブレーキ等10種類の違反行為をした場合と規定する。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金。違反すれば即免許取り消しの行政処分となる。特に高速道路でほかの車を停車させる等、著しい危険を生じさせた場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金としている。2017(平成29)年6月、東名高速道路で一家4人が死傷した事故等を受け、厳罰化された。
交通事故弁護士ナビが、全国の運転免許保有者を対象に実施した「あおり運転に関するアンケート」(2020年6月26日〜9月30日にインターネットで調査。有効サンプル数:427人)によると、「運転中にイライラしたことがある」と回答した人は94.1パーセントで、ほとんどのドライバーに該当。運転中にイライラした状況としては「急な割り込み・危険運転をされたとき」45.8パーセント、「前方の車が遅いとき」36.5パーセント等。その際の対処法は、「特に何もしない」43.6パーセント、「深呼吸や音楽をかけてリラックスする」22.7パーセント、「相手や同乗者に文句を言う」15.5パーセント等。「走行中にあおり運転に遭った」ことのある人は74パーセント。その際の対処法は、「特に気にしなかった」34.3パーセント、「一旦停車、速度を落として道をゆずった」34.3パーセント等。ほとんどは冷静に対処しているが、中には「急停車等で反撃した」9.3パーセント、「一旦車を止め、相手に直接文句を言った」4.3パーセント等、対抗的な行動をとった人もいた。あおり運転の厳罰化については、63.7パーセントが肯定的な回答で、「妨害運転罪」の創設に期待を寄せているものと思われる。一方で、「ドライブレコーダーの有無で不利益を被る」といった人も20.4パーセントあり、えん罪で罰せられる不安もあるようだ。
急いでいたのでつい車間距離を詰めてしまった。行き先を間違えそうになり急に車線変更してしまった等、自分では妨害しているつもりがないのに、運転の仕方によってはほかのドライバーを怒らせあおり運転されるきっかけをつくるだけでなく、自分があおり運転をしたとみなされる場合もある。4月6日からは「春の全国交通安全運動」が実施される。あおり運転の被疑者にも被害者にもならないためだけではなく、交通事故を起こさないためにも、ゆとりある運転を心がけたい。
(藤原 広栄)