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優成サービス株式会社 八木正志会長(71)⑤ 【私の警備道】~第5回 東日本大震災の現地支援に1年7カ月~

特集記事インタビュー
優成サービス株式会社 八木正志会長(71)⑤ 【私の警備道】~第5回 東日本大震災の現地支援に1年7カ月~

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第4回 「福祉バイオトイレカー」誕生

 

第5回 東日本大震災の現地支援に1年7カ月

 


 

トイレカー2台で宮城・石巻へ

 

トイレカーの活動記録

 2011年3月11日午後2時46分、神奈川県でも揺れは大きく、そして長く続いた。八木会長は「これは並みの地震じゃないぞ」と直感した。時間がたつにつれ、巨大災害の様相が明らかになっていった。各地に避難所が次々と開設され、着の身着のままの被災者が恐怖と寒さに震えながら身を寄せ合っていた。「行かなくては」 八木会長は準備に取りかかった。ただ、やみくもに行っても下手をすれば邪魔になるだけ。何をするためにどこへ何を準備して行くか。地元から出ている国会議員の紹介で、まず宮城県の石巻市に向かうことにした。タイヤをスタッドレスに取り換え、緊急車両の許可ももらって黄色の非常灯を装着し、3月21日にトイレカー2台で出発した。

 現地に入り、八木会長はあまりの惨状に言葉を失った。気が付くと涙が流れていた。多くの人がさらわれた海に向かって合掌し、災害対策拠点のある場所へ向かった。その途中で見た光景に、束の間ながら同じ警備業者として敬意と誇りを感じたという。

 「セコムとアルソックの警備員がそれぞれ3人一組になって、被災家屋の捜索をしていたんですよ。下半身は泥だらけ。それでも上半身はネクタイの制服姿でピシッとして見回っている。さすが教育と訓練が行き届いているなと思いました。一生懸命な様子を見て仕事へのプライドも分かち合う気持ちになりましたね」


 

中学校手始めに女性や障碍者にトイレ提供

 

被災地で活躍したリフト付き
トイレカーと八木会長

 翌22日、避難所となっていた市立稲井中学校へ。断水でトイレが使えない状況だった。まず、我慢を重ねていた女性と体が不自由な障碍者やお年寄り向けにトイレの供用を開始した。トイレの中で泣いたり、被災後初めての着替えをしたり、被災者は1人の空間を様々な形で利用していた。24日には3台目のトイレカーも到着。市のコミュニティアリーナ遊楽館にもトイレカーを設置した。4月には岩手県釜石市に赴き、中旬に整備・補給のためにいったん引き上げたが、8月からは岩手県遠野市を拠点に三陸海岸沿いの被災地を中心に、計1年7カ月にわたってトイレカーを稼働させた。すべて自前での活動。八木会長は明かしたがらなかったが、聞きだしたところでは1千800万円ほどの持ち出しになったという。

 決して財政的に余裕があったわけではない。何か助成金があれば助かると思い、福祉関係の公的機関窓口に相談に行ったが、「裕福な会社だからボランティアやっているんでしょう」「前例がない」といった〝常套句〟で対応され、ほとんど得られなかった。

 「正直なところ、会社をたたまなければいけないなと妻と話していました」

 そんな覚悟をしていた2012年12月2日、渋滞対策で大型連休やお盆、正月にトイレカーを派遣していた笹子トンネルで天井板落下事故が起こった。


 

悲惨な事故に複雑な思い 「会社は息を吹き返したが…」

 

岩手県南三陸町で、女性ボランティア用に
設置したトイレカー

 事故が発生したのは午前8時5分。その日の昼にはNEXCO中日本から「現場にトイレカー3台を出して欲しい」と電話が来たという。夕方6時には3台を現地に運び込んだ。それから2月7日までの2カ月余り1日24時間、救助・復旧工事に携わる警官、消防士、NEXCO中日本関係者、報道陣らにトイレを提供した。巻き込まれた車に乗っていた20代から70代までの男女9人が亡くなり、2人が重軽傷を負った悲惨な大事故だった。

 結果的に、東日本大震災の支援に注いだ経費の穴を笹子トンネル事故派遣の仕事が埋める形になった。いずれも起こるとは思いもしなかった出来事が招いた流れだが、八木会長は今も「何という巡り合わせなんだろうか」と、複雑な感情に駆られる。

 「会社は息を吹き返しましたが、よかった、などとはとても言えません。私としてはただただ、亡くなった方々のご冥福をお祈りするばかりです」


 

熊本や北海道の地震被災地にも派遣

 

宮城県石巻市のコミュニティアリーナ遊楽館。
車いすの人と介助の人にも重宝された

 その後、以前のように各地の祭りやイベント、スポーツ会場などにトイレカーを派遣してきたが、2016(平成28)年4月に熊本地震が起き、約1週間トイレカーを出動させた。2018(平成30)年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震でも厚真(あつま)町に派遣したが、この時は隣接する苫小牧市からの要請に応じたものだった。同市は2016年、市内になかった野外の障碍者用トイレの打開策として優成サービスからトイレカーを購入。福祉トイレカー「とまレット」として活躍させていた。隣町の支援に行く助っ人を、同社に頼んできたのだった。

 「28時間かけて駆けつけましたよ。行ってみると、海老名との温度差が20度。かぜをひいてダウンしてしまいました。私は数日で引き上げましたが、トイレカーは扱い方を知っている苫小牧市の職員に引き継いでその後もしばらく置いておきました」

 
 
 
 

 ハイブリッド警備、そして福祉バイオトイレカー。次第に業務の幅を広げつつ、世の中の安全・安心に関わってきた優成サービスだが、八木会長の目には、この夏に迫ってきた東京オリンピック・パラリンピックも「本領発揮の場」として映っている。

(阿部 治樹)


 

第5回 モットーは「目くばり 気くばり 心くばり」  掲載中こちらをクリック 
オリンピック・パラリンピックにつながる道 / 大手都市銀行のビジネス審査会で受賞 / 5項目で「SDGs」認定 / 東京オリンピック・パラリンピック視野に / 息子に社長継承、当面二頭立てで経営

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