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自動車にバックカメラ義務化へ | 国連機関の採択受け国交省が保安基準を改正

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自動車にバックカメラ義務化へ | 国連機関の採択受け国交省が保安基準を改正

パブリックコメントも募集

 自動車が後退するときに運転手が車の後方を見て安全を確認する「バックカメラ」の装備が、来年度から義務化されることになった。国土交通省は関係する「道路運送車両の保安基準及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」や「道路運送車両法施行規則」、「装置型式指定規則」などの一部を近く改正する予定で、4月1日から改正案についてのパブリックコメントの募集も始めた。

 自動車がバックするときはどうしても死角があり、車の直後が運転手からは見えにくい。公益財団法人交通事故総合分析センター(本部:東京都千代田区)研究部の木下義彦・主任研究員の報告書「四輪車後退時の死亡重症事故」によると、2017(平成29)年に四輪車の後退により発生した死亡重傷事故は1008件。ペダルの踏み間違いによるものは極めて少なく、ほとんどが発見の遅れだという。死亡重傷を負ったのは大半が歩行者や自転車に乗っていた人で計807人。歩行者に限れば614人と全体の60%にのぼる。こうした後退時事故は四輪車事故全体の数パーセントではあるものの、人が巻き込まれる場合が多い。(連載中の「私の警備道第三章 優成サービス株式会社八木正志会長③」で触れた社員の死亡事故もトラックの後進中に起きたものだった)

 国交省は1991(平成3)年度からASV(Advanced Safety Vehicle=先進安全自動車)推進計画をスタートさせ、その一環としてバックカメラの普及を促進してきた。国交省の「ASV技術普及状況調査」(2018年12月26日現在)によれば、バックカメラの普及率は乗用車で43.1%、大型車だと7.5%だ。さらなる普及率アップを図るなか、日本も参加する自動車基準調和世界フォーラム(WP29)が、2020(令和2)年11月の会合で「後退時車両直後確認装置に係る協定規則第158号」を採択した。WP29は、自動車の安全・環境基準を国際的に整合させることや政府による自動車認証の国際的な相互承認を推進することを目的とする、国連欧州経済委員会の下にある機関。日本政府はWP29の協定規則を踏まえて車両の保安基準を見直しており、今回のバックカメラの義務化も、この流れの一つだ。

バックカメラなどの視野要件を示した図(協定規則第158号から)

 協定規則第158号では、オートバイやサイドカー、大型・小型特殊自動車などを除く自動車に、後退時車両直後確認装置(バックカメラ、検知システムまたはミラー)を備えなければならないと定める。装置の視野についての要件は、車両の後端から3.5mまでの車幅分の区域に、下図のように置かれた9本の円柱型の障害物(直径0.3m、高さ0.8m)が見えること。具体的には、車から0.3mの列の障害物についてはそれぞれの障害物の少なくとも1カ所で0.15m×0.15mに彩られた部分・ないしは上端が見え、その後ろ2列についてはすべての障害物の全体が見えなくてはならない、とする。国交省はこの要件を加えた改正を今年6月上旬に行う予定だ。適用時期は新型車が来年(2022年)5月、継続生産車は2024(令和6)年5月を見込んでいる。

パブリックコメントは電子政府総合窓口(https://www.e-gov.go.jp/)の意見提出フォームかメール(hqt-so_vtrd_rtb_kjh_nga@gxb.mlit.go.jp)、ファクス(03-5253-1639)、郵送(〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 国土交通省自動車局安全・環境基準課 意見募集担当)で。いずれも5月1日(土)(必着)。一連の改正告示案についての資料は電子政府の総合窓口か国交省自動車局安全・環境基準課あるいは審査・リコール課で入手できる。

(阿部 治樹)

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