アバターロボット「ugo」量産モデル4機種発表。人とロボットによるハイブリッド警備が商用化
施設の点検や警備にドローンやロボットを活用する業務サービスが加速化している。ugo(ユーゴー)株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役CEO:松井健)は、11月15日に自社イベント「ugo go! 2021」を開催し、同社が開発したアバターロボット「ugo」 の最新機種と、パートナーシップ会社と共同で開発したugoと連携した業務サービスの紹介が行われた。
モデルチェンジで機能性・安全性が大幅にアップ
今回発表されたugoは第3世代となる4機種で、昨年11月に試作モデルを発表してから多くの実証実験を繰り返してブラッシュアップ、大幅にアップデートされた量産モデル。従来モデルと比較して見た目に大幅に改善されたのがロボットの足となるカート部分で、ここに全てのセンサーや配線が収納されたことによりシンプルなフォルムに生まれ変わった。また、リフターと呼ばれる胴体部分は、生産設備などで使用されるレールを採用したことでシンプルかつ高性能なボディに進化。リフター上部のポール部分も、同じ幅にすることで全体的に一体感のあるフォルムとなった。機能性や安全性も大幅に向上。カート内には周囲約270度カバーする高解像度の2D LiDARを搭載。また、360度全方向をカバーする超音波センサーを採用したことで、障害物だけでなく鏡やガラスも認知しやすくなり衝突防止機能も向上した。本体上部には視覚での注意喚起を促すためにパトランプを装備。加えて360度照射可能なリングライトを搭載したことで、暗がりでもカメラで全方向を見渡すことができ、より鮮明な画像撮影が可能になった。さらに、重量が約10kg軽量化されたことで、走行速度が時速1.5〜2.5kmから時速5kmになり登坂力もアップ。バッテリーも高性能なリン酸鉄リチウムイオン二次電池にしたことで、連続走行時間が約2時間から3〜4時間に、最大稼働時間も約8時間と長くなった。フル充電に要する時間は1.5時間。ugoが自動でドッキングして充電を行う充電ステーションのほかに、持ち歩きできる充電ボックスを使えば、ugoを移動させながら使用することも可能だ。
人×ロボット×AIの融合
ugo開発の中で、ロボットをどのような業務に使えたらいいのか、人とロボットが融合することで(労働環境が)どのような状態になっていけたらいいのかを見据えながら、ロボットを活用する仕組み作りをしてきたという松井CEO。その仕組みとして開発されたのが人とロボットとAIを融合させ、業務の基本要素を現場で柔軟に遠隔化から自動化へシフトチェンジできるDXフレームワーク「ugo Platform」(ユーゴー プラットフォーム)。①事前に登録された地図に従って自動巡回する「Map巡回」、②業務を手順化し、作業スペックとして登録することで誰でも均一に実行できる「Work Plan」、③アイディア次第で様々な応用が可能なシンプルAIコマンド道具箱「AI Toolbox」、④ロボットの稼働状況を記録する「レポート」、⑤レポートデータを外部システムと共有する「システム連携」、⑥AIに学習させて精度を上げる「テレアノテーション」、⑦緊急時にロボットからスマホへ通知する「通知サービス」、⑧任意のテキストで発話させる「音声合成」、⑨日本語、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、中国語、韓国語による「音声合成の8か国語対応」、⑩顔部分のディスプレイに文字を表示する「テキスト顔合成」。以上、10の新機能が追加され、実務機能の向上だけでなくコミュニケーション機能においても表現力が豊かになった。
これら全てを最初からすべて自動化するのではなく、まずは遠隔化から始めて日々の業務でデータを収集してAIを育成、できるところから段階的に自動化・並列化を進めながらオペレーションモデルを構築することができる。この中核となるFlow(フロー)にugoの動作コマンドを登録し、順番につなぎ合わせることで誰でも簡単にロボット業務を自動化することができるという。
企業と連携してロボットによる業務の可能性を検証
ugoが担う業務は、移動、操作、見回り、案内、配送、点検の6用途を想定。同社は様々なテクノロジーをもつ企業とパートナーシップ協定を結び、ロボットの社会実装に取り組んでおり、パートナー企業とのコラボレーション事例も展示・紹介された。
株式会社NTTドコモ
ドコモAIエージェントAPIを活用したロボット案内サービス。
株式会社NTTデータ
データセンターにおける各種点検業務の遠隔化。
大成株式会社
T-Spiderとugoを連携したDX警備ソリューションの推進。
Kudan株式会社
Visual SLAMを活用しロボットの高度な自動走行を実現し、センシング技術や画像解析技術を高度化。
トッパン・フォームズ株式会社
倉庫などでの棚卸作業の自動化の検討。
株式会社ツクイ
有料老人ホームにおける各種業務の省人化の検討。
株式会社Doog
同社の搬送用ロボット「サウザー」を使った屋外での可搬能力をアプリケーションで検証。
アスラテック株式会社
V-Sidoを利用したマスタースレーブ構成でugoのアームを操作し、ドアのレバーを動かしてドアの開閉やドリンクカップを把持する検証など。
警備業務システムとugoが連携したアバターロボット警備
この中で商用化をスタートさせているのがビルメンテナンス業務を主とする大成株式会社のDX警備ソリューション。ロボットによる警備業務推進の背景には警備業界の人手不足があり、様々な警備ロボットが開発されている中で、同社がugoに着目した理由は人の腕に近い2本のアーム。ロボットがエレベーターのボタンを押してフロアの移動ができないものかugo社に相談したところ、「できると思います」という返事をもらい業務提携の話が進み、約2年に渡って実証実験を行うなどして今年の4月に実用化に至った。11月1日には本格商用化に先立ち事業戦略・新CM発表会も行っている。既にugoの導入が決まった企業もあり、実証実験を行いたいという企業も数十社控えているという。同社代表取締役副社長執行役員の加藤憲博氏は、当社が独自に開発した警備業務を一元管理する業務システム「T-Spider」を軸に情報の収集・一元化を図って情報の「見える化」を促進。ドローンなど様々なハードとも連携し、人とロボットによるハイブリッドな警備業務システムを構築するためにugoとの連携をさらに加速化させると意気込みを語った。
製品発表の後は、ugo社の松井CEOと白川CDOが登壇。製造戦略アドバイザーのJENESIS株式会社代表取締役社長・藤岡純一氏がリモートで参加し、ugo開発にまつわる様々なエピソードを語るトークセッションも行われた。
今回発表された4機種の特徴と利用料金は下記の通り。
ugo pro(ユーゴー プロ)
約2mの高さから床面近くまで、ミリ単位の高さ調整が可能なアームで広範囲な作業エリアをカバーする、高機能ハイエンドモデル。月額148,000円(税抜)。
ugo R(ユーゴー アール)
アームを使った軽作業やフロア間の移動が可能な、ugoシリーズ標準モデル。UEOSU(エレベーター搭乗機能)も利用可能。月額138,000円(税抜)。
ugo Stand(ユーゴー スタンド)
フロア間の移動が必要のない場所にリーズナブルな価格で導入できる、エントリーモデル。月額118,000円(税抜)。
ugo EX(ユーゴー イーエックス)
シンプルで拡張性が高く、リーズナブルなモデル。簡単にセットアップ可能で速やかに現場投入できる。工場、プラント、倉庫などでの各種見回り業務に特化したモデル。月額98,000円(税抜)。
いずれも3年契約で、ロボットのレンタル・充電ステーション・ugo Platform基本利用ライセンス・安心サポートパックを含む(DXソリューションは除く)。4G-LET/5G通信は別途モバイルルーターとSIM回線契約が必要。12月29日の18時までにugo 2台(組み合わせ自由)申し込みの場合、先着10組限定で1台の利用料が1年間無料となる「ugo 新機種発表記念キャンペーン」を実施している。
(藤原 広栄)