警備業に外国人の就労を認めた「特定技能1号」はなじまないのであろうか
最近の警備業における人手不足は深刻な問題となっているようだ。県協会を中心に警備員不足の解消となるなるべき対策を協議し、打開を図ろうとする活動が全国的に顕著となっている。
警備員不足は、地方では深刻である。特に、交通誘導警備員の不足である。交通誘導警備員の雇用状況を見ると、警備員不足に加え高齢化が進んでいる。工事等の施工業者が警備員不足によって警備員が確保できないことから、従業員を警備員として使用する「自家警備」が少なからず見られるようになってきた。この自家警備が警備業業界で問題となったことがある。しかし、施工業者は、従業員を警備員として使用すると作業員不足による工事の遅延や施行リスクも伴い、また、不慣れ誘導によって適正な交通の阻害要因にもなるし、交通事故が発生した時には、工事の差し止めや事故の被害者と工事発注者への賠償問題が発生することもある。このような大きなリスクを伴う自家警備は、極力避けたいという。
施設警備等では、AI(人工知能)を活用し、ロボットやバーチャル警備システムによる受付業務、巡回警備や監視業務の代替え実施により、人による業務を軽減させつつ効率化を図る仕組みが推進され、高まるセキュリティのニーズに応えつつあるものの、交通誘導警備業務では、ここ数年で賃金こそ改善に兆しが見えてきたが、以前就業環境は改善される状況下にはなく、交通誘導員の不足が深刻化している。ハローワークに掲載されている求人によれば、交通誘導員が多数を占める平成16年の有効求人倍率でも全国で33.7倍。東京都内に限れば99.9倍(100社で1人の求職者を奪い合っている状態)にハネ上がっている(週間東京経済(ビジネス))。この状況は、依然続いているであろう。
特定技能は、14業種の特定産業分野で認められ、受入れ人数は345,150人となっている。登録支援機構による新たな外国人材受け入れ制度も確立されたことから、14業種の制度導入準備は着々と進んでいる。中でも介護、ビルクリング業は対象外国人に対する日本語及び技能評価試験が始まった。
この制度は、人手不足が顕著な業種で特定技能外国人が適切な業務に従事できることが認められれば特定産業分野の業種として追加されることができる。
厚生労働省が12月1日に発表した人口動態統計によると、2017年に生まれた子どもの出生数は前年よりも3万人余り少ない94万6060人であり過去最少。1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.43と2年連続で低下した。また、出生数から死亡数を差し引いた人口の自然減は39万4373人で、過去最大の減少幅だった。出生率が改善したとしても人口減は当面続くという。
少子高齢化に大きな変化、いわゆる改善・対策といった特効薬はないというのが一般的な解釈である。警備業においては、各種の統計を見ても慢性的な人材不足は東京オリンピック等が終わっても続くものと思われる。
種別ごとの警備業者は、交通誘導警備96.5%、雑踏警備94.5%、空港保安警備83.4%、施設警備81.9%の業者が警備員不足を深刻な問題と捉えている。
外国人の人材活用には多くの課題を整理し、問題点の解消が前提になるが、特定技能の14業種の推進状況を見る限り、打開策の具現化としては、まず、都道府県ごとの警備員不足の事情を考慮した上で、特定技能制度による外国人の活用方法について勉強会等によって情報の収集や検討を経て、導入の是非については全国レベルで検討をするという工程を描く時期と考えられる。外国人の活用を望むのは、もう少数意見ではないのではないか 。
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