10月10日は「転倒予防の日」。厚生労働省と消費者庁が日本転倒予防学会と協力して転倒による労働災害防止を呼びかけ
厚生労働省が発表した「令和2年労働災害発生状況」によると、死亡者は802人で前年比43人減少(−5.1パーセント)、休業4日以上の死傷者は131,156人で前年比5,545人増加(+4.4パーセント)したことがわかった。
「令和2年 業種別労働災害発生状況(確定値)」(出典:厚生労働省労働基準局)
災害発生原因をみてみると、死亡者は「墜落・転落」191人(24パーセント)、「交通事故(道路)」164人(20パーセント)、「はさまれ・巻き込まれ」126人(16パーセント)、「激突され」54人(7パーセント)、「崩壊・倒壊」48人(6パーセント)、「飛来・落下」42人(5パーセント)、「その他」177人(22パーセント)。休業4日以上の死傷者は「転倒」30,929人(24パーセント)、「墜落・転落」20,977人(16パーセント)、「動作の反動・無理な動作」19,121人(15パーセント)、「はさまれ・巻き込まれ」13,602人(10パーセント)、「切れ・こすれ」7,592人(6パーセント)、「交通事故(道路)」6,863人(5パーセント)、「その他」32,072人(24パーセント)。死亡者数は過去最少となったものの、休業4日以上の死傷者数については近年増加傾向にある。労働災害で最も多い「転倒」については今年も前年同期比で約20パーセント増加(令和3年9月速報値)。転倒災害の約60パーセントが休業1か月以上と重症化するケースが多く、特に50代以上の女性に多く発生しているという。
「令和2年 事故の型別労働災害発生状況(確定値)」(出典:厚生労働省労働基準局)
新宿労働基準監督署管内(新宿区・中野区・杉並区)における「令和2年の警備業とビルメンテナンス業における労働災害発生状況」をみても「転倒事故」が最も多く、警備業が37パーセント、ビルメンテナンス業が45パーセントを占めている。「動作の反動・無理な動作」「墜落・転落」を含めるといずれも約80パーセントになり、特にビルメンテナンス業は行動災害(不安全行動)が事故原因のほとんどを占めている。死傷者は60歳以上が全体の42パーセントで、高齢者の事故防止対策も喫緊の課題となっている。
警備業の事故 ビルメンテナンス業の事故
「令和2年 警備業・ビルメンテナンス業における労働災害発生状況」(出典:新宿労働基準監督署)
厚生労働省では令和2年3月に「高年齢労働者の安全と健康のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を策定。事業者には安全対策や安全衛生教育の実施に努めるよう、労働者には事業者が実施する労働災害防止対策の取り組みに協力するとともに、自らの健康づくりに積極的に取り組むよう呼びかけているが、日本転倒予防学会が制定している「転倒予防の日」(10月10日)を契機に、このたび消費者庁とともに日本転倒予防学会と協力して、国民に対する転倒予防の呼びかけを行うことにした。厚生労働省のホームページには転倒・腰痛予防体操の動画等、事業者だけでなく個人的にも有益な情報や資料が公開されているので、職場の転倒予防に役立ててほしい。
*厚生労働省「10月10日は『転倒予防の日』、職場での転倒予防に取り組みましょう! https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21393.html
(藤原 広栄)