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雇用調整助成金の申請簡素化で支給率アップ

雇用調整助成金の申請簡素化で支給率アップ

段階的に簡素化された申請手続き

事業主の申請手続きの負担を軽減するとともに、支給事務の迅速化を図るために段階的に特例措置が実施され、手続き方法が見直されてきた「雇用調整助成金」。特例措置を追加実施するとともに記載事項を半減、記載事項の簡略化、添付書類の削減を行い、手続き方法を大幅に簡素化すると発表されたのが4月10日。5月19日には更なる簡素化が図られ、休業等計画届けの提出が不要となり、小規模事業主(概ね従業員20人以下)の助成額の算定方法と手続き方法がさらに簡略になった。そして、6月12日には助成額の上限引き上げ、解雇等を行っていない中小企業には助成率が10/10に拡充された。

 

当初は「申請の基準や要件を調べるのに苦労した」「書類を集めるのが大変」「書式が難しくて記入に手間がかかる」「助成金の振り込みが遅い」など、不満の声が多く聞かれたが、申請方法がより簡素化されたことで申請数と支給決定数にどれだけ変化があったのだろうか。厚生労働省が公表している7月3日時点での支給申請件数と支給決定件数から支給決定率の推移を算出してみた。

 

7月3時点(週報)

~5月1日 支給決定率:約10%

5月2日~8日 支給決定率:約29%

5月9日~15日 支給決定率:約43%

5月16日~22日 支給決定率:約50%

5月23日~29日 支給決定率:約48%

5月30日~6月5日 支給決定率:約50%

6月6日~12日 支給決定率:約56%

6月13日~19日 支給決定率:約61%

6月20日~26日 支給決定率:約64%

6月27日~7月3日 支給決定率:約64%

 

7月6日時点では約66パーセントとなっており、手続きの簡素化により申請数が上がり審査スピードもアップ。支給決定率が着実に上がっていると見てとれる。

 

厚生労働省・職業安定局雇用開発企画課によると「現在、書類に不備がなければ2週間で支給できるよう作業に努めています。しかし、まだ記入漏れや必要な書類が添付されていないなどの不備はあるようです。審査する側で補正できることであれば対処しますが、対処できない不備があった場合は労働局かハローワークから連絡があります。申請されたものに関しては虚偽や書類に不備がなければ必ずお支払いするスタンスで作業しておりますので、もし連絡があったらすぐに対応していただければと思います」

 

ちなみに、小規模事業主が被保険者を休業させた場合に申請に必要な書類は次の7種類。

1.雇用調整助成金支給申請書【様式新特小第1号】

2.休業実績一覧表【様式新特小第2号】

3.支給要件確認申立書【様式新特小第3号】

4.比較した月の売上などが分かる書類

5.休業させた日や時間が分かる書類

6.休業手当や賃金の額が分かる書類

7.役員名簿(役員等がいる場合)

 

手続きが簡素化されたとはいえ、慣れない作業でこれだけの書類を不備なく揃えるのは簡単なことではない。

社労士への相談や依頼も検討

では実際のところ、どれだけの申請の手間が軽減されたのか、書類を作る際にどんなところで苦労しているのだろうか。新宿区・飯田橋の東社会保険労務士事務所(https://azumasr.jimdofree.com)代表の小高東さんによると「休業等計画届けの提出が不要となり、平均賃金の計算も簡略化されたことで、一概には言えませんが個人的な感覚としてはそれ以前に比べ3割くらいは労力が軽減されたのではないかと思います。会社に義務づけられている法廷3帳簿(賃金台帳、出勤簿、労働者名簿)、就業規則や雇用契約書、労働時間管理を普通にやっている企業が従業員に休業手当を支払って休ませているのであれば、マニュアル等に従って必要な書類を揃えれば問題ないと思います。しかし、小規模事業主の場合はタイムカード、出勤簿、シフト表がない、給与明細、賃金台帳が正確でないといったケースもあり、そんな場合は申請が難しくなります」

 

雇用調整助成金に関する問い合わせは都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)、学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンターで受け付けているほか、厚生労働省公式LINEアカウントでも調べることができる。しかし、それでもよく分からない、手間がかかると感じた場合は、社労士(社会保険労務士)への相談も検討してみよう。全国社会保険労務士会連合会(相談ダイヤル/0570-07-4864 平日11時〜14時)でも相談(無料)を受け付けている。

 

申請書類については都道府県労働局(一部除く)か管轄ハローワークの助成金担当窓口で配布しているほか、厚生労働省のホームページに必要な書類の様式が申請の種別ごとにまとめられており、事業所の規模、休業する対象者を選んでダウンロードできるようになっている。ガイドブックや申請マニュアル、様々な疑問点への回答をまとめたFAQもあるので参考にして欲しい。

 

申請書類の詳細、ダウンロード、問い合わせ先等については厚生労働省HP参照。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html#inquiry

 

貴重な人材を守る助成金

助成額や申請手続きが見直されても、雇用調整助成金は企業が先に従業員に休業手当を支払い、申請をして審査が通った後に助成金が支給されることから、資金繰りが苦しい企業は利用したくてもできないという側面もある。

「雇用調整助成金は、事業主が休業させた従業員に支払った休業手当を助成するものですから、休業手当を支払われていない場合は助成金の支給対象にはなりません。しかし、支給申請については、給与明細の写しなど休業手当の額が確定していることを示す書類があり、判定基礎期間(休業実績を判断する1か月間。毎月の賃金の締め切り翌日から、その次の締切日までの期間)終了後であれば、賃金を支払う前であっても申請できます」(雇用開発企画課)

 

総務省統計局の労働力調査によると、令和2年5月の全国の完全失業率は2.9パーセント、前月比で0.3ポイント上昇。有効求人倍率は1.2倍、前月比で0.12ポイント低下。完全失業者数は197万人となり4ヶ月連続で増加。前月比で19万人増加している。また、厚生労働省が全国のハローワークなどを通じて調べた新型コロナウイルス感染拡大の影響で解雇や雇い止めにあった人は、今年の1月末から7月3日までに3万2,342人(見込み含む)に上り、この1週間で約4,000人増加している。警備業・ビルメンテナンス業の貴重な人材を失わないために、雇用維持が厳しい企業はアルバイトなど雇用保険被保険者以外を対象とした「緊急雇用安定助成金」等も併せて、助成金の活用を検討していただきたい。

 

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