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警備現場でも導入進むドローンに22年度から免許制度|日本が主導の国際規格「ISO23665」も発行

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 警備やビル・インフラ管理の現場で導入が進む小型無人航空機「ドローン」。現在は国による操縦資格がなく、民間の講習団体・スクールが一定の操縦能力に対して認定証などを出す形になっている。政府は2022(令和4)年度から操縦免許制度を始める準備を進めているが、この動きに歩調を合わせるかのように今年2月、スイスにある国際標準化機構(ISO)が、ドローン操縦訓練についての国際規格「ISO23665」を発行した。この規格は日本の民間団体が主導して提案してきたもので、今後、国際ライセンスのあり方や取り方を定める際の標準指針となる。政府は、創設する制度でライセンス取得においては国が認めた民間団体の講習修了者に対して試験の一部または全部を免除することを明らかにしている。今回「日本発」の国際規格が世界標準になったことは、国内の操縦ライセンスビジネスにも大きな影響を及ぼしそうだ。

発行された「ISO23665」について説明する
ISOのウェブサイト画面

 政府は、ドローンを「『空の産業革命』とも言われる新たな可能性を有する技術」と位置づけ、
導入推進の方向性を鮮明にしている。2015(平成27)年には「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を発足させ、様々な分野での活用を円滑にするための制度の検討を続けてきた。協議会は2020(令和2)年3月、そうした制度を設計するに当たっての基本方針を公表し、重要な柱として現行では政府が認めていない飛行レベル4の実現が「空の産業革命」には不可欠であるとした。
これまで政府は、レベル1=(ドローンが見える範囲にある)目視内での操縦飛行、レベル2=目視内での自動/自律飛行、レベル3=無人地帯での目視外飛行までしか認めていなかった。それを、協議会が示した基本方針を踏まえてその上のレベル4=有人地帯での目視外飛行までを2022(令和4)年度をめどに認めることにした。レベル4での活用例としては「高齢化が進む地方の市街地などでの広域巡回警備」「人の手で確認しにくい街中の橋、建物や道の広域的な点検」「陸上輸送が困難な地域での生活物品や医薬品などの配送」などを挙げている。

ドローンのライセンス制度などを説明する国交省の文書

レベル4実現のため、より厳格にドローン飛行の安全性を確保することが必要だとして「機体の安全性に関する認証制度」(機体認証)とともに新たに設けられるのが、「操縦者の技能に関する証明制度」(操縦ライセンス)だ。両制度ともこれから詳細が詰められていくが、機体認証の方は自動車の車検制度をイメージすれば分かりやすい。一方の操縦ライセンスについては、欧米など諸外国の制度も参考にしながら内容が練られている。今のところ、操縦ライセンスはレベル4の飛行を行うことができる「一等資格」とレベル3までの「二等資格」に区分し、飛行方法に応じて限定を付けることが想定されている。
こうした状況の中でISO23665が公表された。ISOは、様々な世界の標準・規格を定める非営利組織で日本を含め世界162カ国が加盟している。近年、日本でもよく目にする「ISO9001」(品質を保つための管理規格)や「ISO14001」(環境悪化を防ぐマネジメント規格)もそうした国際規格で、事業の信頼度を確かなものにする上で非常に重要な役割を担っている。そうしたISOの国際規格案を、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA、鈴木真二代表理事)が2018(令和元)年7月に日本代表として提出し、イギリスと連携して提案から2年半の短期間で発行にこぎつけた。

ALSOKが開発したAI搭載の完全_自律飛行型巡回ドローン。東京スカイツリータウン内で実施された警備システムの実証実験で使われた(ALSOKニュースリリースから)
ALSOKが開発したAI搭載の
完全_自律飛行型巡回ドローン。
東京スカイツリータウン内で実施された
警備システムの実証実験で使われた
(ALSOKニュースリリースから)

JUIDAは、民生分野での無人航空機システム(UAS)の利用を推進し、関連する産業・市場を創造するとともに、UASの健全な発展に寄与することを目的に2014(平成26)年に設立された非営利法人。発展目覚ましいドローンなどUASの国際標準・規格化の必要性を認識し、いち早く行動を起こしたという。JUIDAによると、今回のISO23665にはドローンスクールが備えておくべき施設や講師の要件、評価方法などが9章にわたって盛り込まれた。別紙もあり、これにはスクールが実施するカリキュラムに含まれるべき項目が規定されている。必要に応じて内容が追加されるが、今回は目視内飛行について習得すべき内容が詳細に記述されているという。

国交省が昨年12月に「小型無人機に関する関係府省庁連絡会議」で示した「ドローンの飛行の安全性確保のための新たな制度について」では、操縦ライセンスについて「国の登録を受けた民間講習機関が実施する講習を修了した場合は、試験の一部または全部を免除」と明記している。今回のISO23665と親和性の高いJUIDA提供のカリキュラムを使う認定スクールは2021(令和3)年1月時点で国内に239校、海外にも1校がある。こうしたJUIDAの認定スクールをはじめ、この国際規格に基づいてカリキュラムを実施するスクール・団体の修了証が、今後大きな価値を持つのは間違いない。             

(阿部 治樹)

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