空港保安検査を行う空港保安警備員の不祥事が続く

空港保安警備員の不足が顕著な中、空港保安警備員による資質に疑問や、当該警備業務の意義と重要性など根本的な教育の是非が問われる事態が相次ぎ、当該業務に携わる警備業者は危機感を抱いている。
羽田空港の保安検査員として勤務していた空港保安警備員が手荷物検査で乗客がトレーに置かれた現金を抜き取ったとして、令和7年9月15日窃盗容疑で逮捕された。
当該保安警備員は、令和7年4月に入社したばかりであったにもかかわらず、本年8月ごろから70~80件の同様の行為を繰り返し、合計約150万円盗んでいた。犯行の動機として、「スリルを楽しむためだった。」と供述している。

この事件を受け、在籍企業は、新入社員が空港の安全を揺るがす事件を起こしてしまった重要性に鑑みて、改めて警備員の指導及び教育の徹底と現場管理者による管理体制の強化を課題として取組むこととなった。
さらに成田空港でも、保安検査場で乗客の現金を盗んだとして、空港保安警備員が窃盗の疑いで逮捕された。
この事案は、令和7年10月2日午前6時5分~同7時25分ごろにかけて、成田空港第3ターミナルビル2階の保安検査場で発生した。中国籍の女性(73)が置き忘れた現金64万円入りのポーチを盗んだもので、警備員は容疑を認め「ポーチの中身を確認した時、多額の現金が入っているのを知り、持ち主は戻ってこないと思い盗んでしまった。」と供述している。
このような事件は、警備員個人や警備業者の問題だけでなく、空港セキュリティの現場が抱える構造的な脆弱性が顕著化された氷山の一角とも言われている。
長年にわたり、構造的な問題とされているのは、空港保安警備員は、正社員としての雇用形態が大半ではあるものの、航空機の離発着に合わせた勤務シフトが組まれているため、拘束時間が長い割には薄給であることが少なくない点である。そのため、低賃金や不安定な労働環境が指摘されてきた。
空港保安警備業務は、テロやハイジャックを防ぐための重要な役割を担っている中で、その保安警備業務に従事する警備員が容易に不正に手を染める現実が明らかになると、世界に誇る空港保安検査の信頼を揺るがし、テロ犯罪等の予防効果を懸念することすら想起されることとなる。
日本の空港の保安検査は、航空会社が実施主体となり、民間の警備会社などに検査を委託してきた。しかし、慢性的な人手不足や警備業務の契約形態などの課題の改善に加え、一元的なセキュリティを目指し、国土交通省航空局(JCAB)は空港管理者への移行に向けた準備が進められている。
このような状況下において、実務者検討会議は、令和7年6月の中間とりまとめにおいて、次のように報告している。
〇 空港における旅客の保安検査の実施主体の円滑な移行に向けた実務者検討会議
保安検査については、厳しさを増す国際的なテロ等の脅威への対応や、増加するインバウンド需要への対応等を背景として、近年、様々な対策が講じられている。
具体的には、令和2年6月から、「保安検査に関する有識者会議」において、航空分野、セキュリティ分野、法律分野、利用者分野、労働者分野に関する様々な有識者に加え、航空会社、空港会社、検査会社等の関係者により、航空保安の向上に関する検討が行われた。その成果として、令和3年3月に「保安検査に関する有識者会議中間とりまとめ」が公表され、これを踏まえて、令和3年の航空法改正により、保安検査等の法律上の根拠・保安職員の権限が明確化された。
さらに、令和4年3月には、改正航空法に基づく「危害行為防止基本方針」が策定され、各主体の役割分担の明確化が図られるとともに、政府が各主体において的確に航空保安対策が講じられるよう主導的な役割を果たしていくことが示された。その際、保安検査等の実施主体・費用のあり方については、危害行為防止基本方針において、中長期的な課題と位置付けられたため、引き続き、有識者会議において検討が行われた。
その結果、令和5年6月、「空港における旅客の保安検査の実施主体及び費用負担の見直しの方向性」が取りまとめられた。この見直しの方向性においては、諸外国の状況調査・分析の結果を踏まえ、保安検査の実施主体については、空港を一元的に管理する者であり、空港の特性等を十分に把握している空港管理者(※右表の見直し後の実施主体をいう。以下同じ。)に移行することを軸に検討を進めることが示された。また、保安検査に係る費用については、充実かつ安定した財源の確保に向け、直接の受益者である旅客からの透明性を確保した形で負担頂くとともに、実施主体移行後も、空港管理者のみならず国、航空会社といった関係者の一定の負担からなる仕組みの構築を検討することが適当であるとの方向性が示された。
さらに、空港管理者や航空会社との役割分担や、実施主体移行の進め方、保安検査に起因する事故等による損害賠償のあり方、関係者間の費用負担のあり方等については、今後の具体的な検討を進める上での論点として示され、引き続きの検討課題とされた。
これらの状況を踏まえて、本検討会議においては、令和6年11月から、改正航空法や同法に基づく危害行為防止基本方針の内容をベースとして、空港における旅客の保安検査の実施主体の円滑な移行に向けて、実務的な課題についての検討を行ってきた。
本検討会議においては、関係者から多岐に渡る論点について数多くの意見が寄せられた。これらの意見の一つひとつについて一定の整理を行い、中間的なとりまとめを行うものである。
実務的な課題の整理本検討会議においては、まず、令和5年6月の見直しの方向性で示された、今後の具体的な検討を進める上での論点を踏まえ、本検討会議において議論するべき実務的な課題の洗い出しを行い、以下のとおり整理した上で、各項目ごとに議論を行った。
1.実施主体の移行について
<1.1 実施主体移行後の役割分担>
・保安検査の実施主体を空港管理者に移行した場合であっても、機内への持ち込みが禁止されている物品への旅客への周知や、保安検査の効率的な実施のための旅客情報の提供など、引き続き航空会社が担うべきと考えられる役割について、どのように考えるべきか。
<1.2 国管理空港・地方管理空港における空港ビル会社の役割>
・国管理空港・地方管理空港においては、空港ビル施設の管理を空港ビル会社が担っているところ、国・自治体と空港ビル会社の役割分担をどのように考えるべきか。
<1.3 移行の範囲・進め方>
・各空港の特性を踏まえて、移行の範囲や進め方について、どのように考えるべきか。
・一般旅客向けの保安検査場のほか、航空会社専用のプレミアムレーンや、従業員向けの保安検査場、預入手荷物検査などの移行のあり方について、どのように考えるべきか。
・現状、保安検査の実務は航空会社や委託先の検査会社が担っており空港管理者は実務に関与していないケースがほとんどである一方、一部の空港においては、国際線の保安検査場を中心に、検査会社との契約事務を空港管理者が担っている例があるなど、保安検査場ごとに空港管理者の関与の度合いに差があることを踏まえて、どのように移行を進めていくべきか。
<1.4 損害賠償・保険>
・保安検査に係る損害賠償責任について、現状、航空会社と検査会社の間で取り決めが行われているところ、移行後はどのように考えるべきか。また、移行後の損害賠償リスクについて、どのように考えるべきか。
2.費用負担の見直しについて
<2.1 費用負担のあり方>
・各空港における保安検査に係る費用負担については、保安検査が空港内の安全確保のみならず、航空輸送の安全確保にも寄与するという点や、直接の受益者である旅客から透明性のある形で負担いただく観点も踏まえて、どのように考えるべきか。
<2.2 国管理空港の費用>
・国管理空港における保安検査に係る費用については、現状、保安料を原資に、実施主体に対して経費(人件費・検査機器の整備費用)の1/2を負担しているところ、上記の考え方の整理を踏まえて、保安料に含むべき保安検査関係の費用をどのように考えるべきか。
3.実施主体移行に関する実務的な課題について
1 実施主体移行後の役割分担
・保安検査の実施主体を空港管理者に移行した場合であっても、機内への持ち込みが禁止されている物品への旅客への周知や、保安検査の効率的な実施のための旅客情報の提供など、引き続き航空会社が担うべきと考えられる役割について、どのように考えるべきか。
(引き続き航空会社が担うべきと考えられる役割について)
本検討会議においては、航空業界の委員から、しっかり協力していきたい旨の発言があった。また、他の委員からは、実施主体移行後も航空会社との連携は必要不可欠であるとの意見や、空港管理者がどこまで任を追うのか明らかにする観点や、外国航空会社などからの協いて航空会社の義務を明確に規定するべきとの意見があった。また、引き続き航空会社が担うべきと考えられる業務の例としては、
・機内への持ち込みが禁止されている物品の旅客への周知 ・保安検査の効率的な実施のための旅客情報の提供
・インライン検査後に開披検査が必要となった場合の旅客の特定などが挙げられるが、このほかにも、保安事案発生時に再検査が必要になった場合の旅客に対する案内
・誘導や、乗り遅れ防止の呼びかけなどの業務など、引き続き航空会社が担うことが適当と考えられる業務が想定されるため、バスケットクローズの規定を設けるべきではないかといった意見があった。
このため、実施主体移行後の空港管理者と航空会社の役割分担については、危害行為防止基本方においては大まかに規定した上で、役割分担が明確になるように、関係通達等の改訂に向けて、関係者間で検討することが適当である。
(空港管理者・航空会社の連携について)
保安検査の実施については、空港内の秩序を維持する責務を有する空港管理者にとっては、空港内の安全確保にも寄与するという観点からまた、ハイジャック防止等の責務を有する航空会社にとっては、事業運営上裨益するという観点から、空港管理者・航空会社の双方に裨益するものである。このため、保安検査の実施に当たっては、前述の役割分担を踏まえて、空港管理者・航空 会社が連携して取り組むことが重要であり、この点についても、それぞれの役割として危害行為防止基本方針に盛り込む方向で、引き続き検討することが適当である。
(国の役割について)
国は、保安検査の実施主体が空港管理者に移行することを踏まえて、空港間の保安水準が一定以上に確保されるよう、危害行為防止基本方針に基づき、監査等を通じた指導監や、保安検査等の量的・質的向上のための取組の推進等を通じて、各主体において適確に保安検査等が実施されるよう、主導的な役割を果たすことが適当である。







