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官民連携のサイバー攻撃対策…きっかけは「ワナクライ」 五輪前に高まる必要性

官民連携のサイバー攻撃対策…きっかけは「ワナクライ」 五輪前に高まる必要性

政府が、サイバー攻撃に関する情報を官民で共有する新組織「サイバーセキュリティ協議会」を発足させ、情報共有体制の強化に動き出す契機となったのは平成29(2017)年に150カ国以上で感染が確認されたコンピューターウイルス「ワナクライ」の猛威だ。

ワナクライは身代金要求型ウイルスの一種で、標的となったパソコン内のファイルなどのデータを勝手に暗号化し、解除の見返りに金銭を要求するウイルス。コンピューターの動作に障害をきたすため、英国の病院では手術が中止されるなど甚大な被害が出た。

国内でも日立製作所の社内システムに異常が生じたほか、JR東日本など重要インフラ、神奈川県川崎市などの自治体にも感染が広がった。

政府はワナクライの封じ込めに有効な対処をとることができず、迅速な情報共有が課題として浮かんだ。ワナクライの攻撃は29年5月12 日の金曜日から大規模に始まったとされ、日立製作所は同日中にウイルスを検知していた。

政府関係者によると、同社のシステム技術者らはその日のうちに感染を防止できる可能性のある対処方法に気づき、情報共有の必要性も認識していた。しかし対処方法が間違っていた場合、情報共有により責任を追及されたり、風評被害を受けたりするリスクがあったため情報共有が遅れた。結果的にワナクライは感染が拡大し、被害が一気に表面化した。

政府が発足させたサイバーセキュリティ協議会の中核となるタスクフォースに守秘義務と情報提供義務を課すのは、ワナクライ被害を教訓に情報が集まりやすい環境を整備するためだ。政府関係者は「同様の枠組みは世界的にも例がない」としている。

五輪などのイベントはサイバー攻撃の標的になりやすく、対策は急務だ。政府関係者は「日本の弱点は政府の情報収集能力だ」とした上で「民間には多くの情報が眠っている。直感的な違和感であったとしても共有していくことが重要だ」と話している(株式会社 産経デジタル – 産経新聞 – 2019年4月2日)。

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