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交通誘導ミスによる死亡事故で警備員に有罪判決

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北九州市八幡東区の県道で2016年12月、交通誘導ミスで2人を死傷させたとして、業務上過失致死傷罪に問われた警備員の男性被告(67)に対し、福岡地裁小倉支部は2021年1月15日、禁錮1年6月、執行猶予3年(求刑・禁錮1年6月)を言い渡した。判決によると、被告は2016年12月9日、片側交互通行の県道で車両誘導をしていた際、介護士の男性(当時39)が運転するバイクへの停止合図が遅れ、反対方向から来た無職の50代男性のバイクと衝突。介護士の男性が死亡し、無職の男性は頭部打撲などの怪我を負った。裁判長は「介護士のバイクの接近をエンジン音等で認識しながら、無職男性のバイクに気を取られて合図が遅れた。過失の程度は大きい」と述べた(読売新聞)。

警備業務は営利を目的として特定人の依頼に基づき、特定人のためにのみ行うもので、公共の安全と秩序の維持にあたる警察業務とは本質が異なる。警備業法第15条に「警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない」とあり、警備員による交通誘導には法的な権限はない。

つまり、運転者側には警備員の誘導に従う義務はなく、警備員による誘導があっても最終的な安全確認等は運転手自身が判断して運転しなければならないことになっている。そのため、交通事故が起きた場合の刑事責任については主に運転者の過失が検討され、警備員の責任については過失の程度等によって負担割合が決められることになる。しかし、死亡事故となると今回の判決のように、警備員の負う責任が重くなるケースもある。

2012年に神奈川県で起きた事故。川崎市内の市道交差点において、横断歩道を母親の後ろについて歩いていた3歳の男児に、交差点を右折進行してきた乗用車が衝突。男児は頭部を強打し事故から2か月後に死亡した。現場は信号機のない交差点で、水道工事が行われており2人の警備員が片側交互通行で交通誘導を行っていた。車は警備員の交通誘導に従って交差点を右折、歩行者の母子も警備員の誘導に従って横断歩道を歩行しており、車と歩行者双方への重複した警備員の誘導により事故が誘発されたと判断。検察官は運転手と警備員の双方を起訴。裁判では運転手に禁錮1年8月執行猶予5年、交通誘導員に禁錮1年執行猶予4年の判決が下された。

工事現場等では誘導員の配置が義務づけられており、安全を保つためには誘導員の指示に従うのが慣習上一般的。あってはならないことだが、警備員も人間だからミスをすることもあるし、それが原因で事故が発生する可能性もある。しかし、過失の度合いによっては損害賠償義務を負うのは警備員だけでなく、警備員を雇用している会社にもあるということを、いま一度肝に銘じていただきたい。

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