警備業関連

セキュリティ

警備人材育成センター令和5年の警備員等資格取得講習会の実施状況を発表

警備業関連セキュリティ警備業
警備人材育成センター令和5年の警備員等資格取得講習会の実施状況を発表

 令和5年の警備員等資格取得講習会事業の実施状況を警備人材育成センター野村晶三事務局長が分析・発表した。
 警備人材育成センターは、検定等資格取得講習会の開催状況を発表した。
令和5年の実施回数は90回(前年82回)、受講者数は3,349人(前年2,799人)、受考者数3,137人(前年2,659人)、合格者数2,366人(前年1,975人)、合格率は75.4パーセント(前年74.3%)でした。
また、9年間の実施推移と種別・級ごとの実施状況は、次のとおりです。
① 9年間の実施推移

実施年 実施回数 受講者数 受考者数 合格者数 合格率(%)
平成27年 25 596 547 321 58.7
平成28年 43 1,485 1,312 918 70.0
平成29年 53 1,663 1,505 1,114 74.0
平成30年 52 1,818 1,716 1,342 78.2
令和元年 77 2,233 2,117 1,700 80.3
令和2年 84 2,613 2,541 2,100 82.6
令和3年 96 3,316 3,186 2,422 76.0
令和4年 82 2,799 2,659 1,975 74.3
令和5年 90 3,349 3,137 2,366 75.4

 

 受講者数は、最も多かった令和3年の推移に戻りました。また、合格率は令和2年をピークに2年連続で下がり続けましたが、令和3年の交通誘導警備業務及び雑踏警備業務講師研修会の研修目的の一つとして掲げました、30パーセントを超える誤答率となった問題の要因を追求するために、その誤答率に係る講師の講義を分析するとともに、65パーセントを下回る修了考査結果が出た場合、その講習会に携わった総括責任者、主任講師及び講師全員に誤答率を通知して、誤答率の高いところを受け持った講師に自己の講義の研鑽をさせるとともに、携わった関係者全員が講習会を振り返り反省点を共有するなどして、取り組んだ成果が令和5年の交通誘導警備業務1・2級及び踏警備業務2級の比較的合格率が低かった種別の合格率アップに繋がったといえます。一方では、これまで合格率の高かった空港保安警備業務1・2級及び施設警備業務2級並びに雑踏警備業務1級では、合格率が下がったために、全体の合格率のアップは1パーセント程度にとどまっています。これらが昨年同様の合格率を維持したならば、平均合格率はおおよそ79パーセント程度となり、最も高かった令和2年に迫る合格率となっていたはずです。
 空港保安警備業務などの合格率が下がった要因は明らかではありませんが、合格率が高いための危機感や緊張感の不足などや試験が伴うという意識付けがおろそかになっていたなど、漠然としたものではないかと受けとめておりますが、令和6年度の講師研修会は、施設警備業務、貴重品運搬警備業務及び空港保安警備業務の3種別となっていますので、それまでに合格率低下の要因を深堀して追及し、講師研修会の課題とするとともに一定の成果を上げるつもりです。
 次に、1開催当たりの採算性に目を向けますと、講習会の定員数はおおむね40人(ポリテク関東は50人)として開催しておりますが、令和3年の1回当たりの平均受講者数は34.5人、令和4年36.2人、そして、令和5年は37.2人となっており、採算効率は年々上がっています。この要因としては、指定会場での定期的な種別の講習会の開催をすることによって、受講される企業が計画的に受講者を出していただけるようになったことと、2号業務(交通・雑踏)は土曜日も平日と変わりなく警備業務の発注があるので、事前講習はできるだけ日曜日に行うこととしたため、受講環境もある程度整備されたことから受講しやすくなったようです。そして、大阪、中部、熊本地区における講習会の定期開催化による受講者数の増加も1開催当たりの効率を支えていると言えます。
 しかしながら、まだ定員の40人をクリアできておりません。その要因としては、施設警備業務を除く1級開催の受講者数が増えないことが一番大きく影響しております。
 これにつきましては、配置基準との兼ね合いがありますので容易に解決はできないものの、かといって、何もしないわけにはまいりません。
 ご案内のように、1級検定合格警備員は、現場における統括管理者と位置付けられており、また、本来の配置基準に求められているのは1級検定合格者であることを踏まえるならば、登録講習機関としては、1級検定合格警備員の育成という観点から講習会の開催を使命感を持って実施しなければなりません。よって、令和6年におきましても1級の受講者数が増えるよう種別別、級別の合同講習会を開催するとともに、℮-ラーニングで学科講義を事前受講できるようデジタル化を図るなどして、講習会の情報をできる限りオープンにして、受講しやすい環境整備を図りたいと考えております。

② 種別・級ごとの実施結果

実施種別・級 回数 受講者数 受考者数 合格者数 合格率(前年比)
空港保安警備業務1級 R4 4 42 39 35 89.7
R5 3 35 31 20 64.5
空港保安警備業務2級 R4 6 131 120 99 82.5
R5 6 203 192 151 78.6
施設警備業務1級 R4 7 186 177 135 76.3
R5 4 209 185 148 80.0
施設警備業務2級 R4 16 526 502 411 81.9
R5 15 579 556 435 78.2
雑踏警備業務1級 R4 1 13 13 11 84.6
R5 3 38 37 30 81.1
雑踏警備業務2級 R4 3 116 113 89 78.8
R5 7 226 218 189 86.7
交通誘導警備業務1級 R4 2 43 42 30 71.4
R5 3 73 66 52 78.8
交通誘導警備業務2級 R4 42 1,732 1,644 1,162 70.7
R5 48 1,965 1,833 1,330 72.6
貴重品運搬警備業務2級 R4 1 10 9 3 33.3
R5 1 21 19 11 57.9

 

 次に、種別・級ごとの実施結果です。全体の平均合格率は75.4パーセント(前年74.3%)と、前年比1.1パーセント上がりました。これは雑踏警備業務2級及び交通誘導警備業務1・2級の合格率が上がったことが要因となっていることは、冒頭に述べましたとおりです。
 次に、学科試験と実技試験の合格率の状況を種別、級ごとに分析すると、次のようになります。

③ 学科試験と実技試験の合格率

実施種別・級 受考者数 学科合格者・率 実技合格者・率 考査の合格者と合格率
空港保安警備業務1級 31 20人・64.5% 28人・90.3% 20人・64.5%
空港保安警備業務2級 192 159人・82.8% 170人・88.5% 151人・78.6%
施設警備業務1級 185 152人・82.2% 176人・95.1% 148人・80.0%
施設警備業務2級 556 449人・80.8% 521人・93.7% 435人・78.2%
雑踏警備業務1級 37 31人・83.8% 35人・94.6% 30人・81.1%
雑踏警備業務2級 218 189人・86.7% 215人・98.6% 189人・86.7%
交通誘導警備業務1級 66 52人・78.8% 66人・100.0% 52人・78.8%
交通誘導警備業務2級 1,833 1,371人・74.8% 1,666人・90.9% 1,330人・72.6%
貴重品運搬警備業務2級 19 11人・57.9% 14人・73.7% 11人・57.9%

 

 以上のとおり、いずれの種別及び級ともに実技試験より学科試験の方が合格率は低く、学科試験の種別から見えてくるものは、昨年まで合格率が比較的高かった空港保安警備業務と施設警備業務が下がり、そして、空港や施設警備業務より比較的低かった交通誘導警備業務と雑踏警備業務が高くなっていることです。その要因については、先に述べたとおりです。
 ここで注視すべき点は、空港保安警備業務1・2級と交通誘導警備業務2級において、受講者の約10パーセントが実技試験で不合格となっていることです。
せっかく学科試験の合格点をクリアしたにもかかわらず、実技試験で不合格となっている理由が実技試験を軽んじていると断定するわけではありませんが、受講される方はこの点にも留意し、改めて実技試験の重要性について認識していただきたい。
 次に、施設警備業務と交通誘導警備業務の学科試験の誤答率の高い傾向にある講習項目を挙げると、次のようになっております。

④ 学科試験の誤答率の高い傾向にある講習項目

施設警備業務1級 ・銃砲刀剣類所持等取締法
・主な重要施設の警備状況 ・業務管理
・その他事故の発生時における応急措置
交通誘導警備業務1級 ・憲法 ・交通誘導警備業務用資機材
・交通誘導警備業務実施上の留意事項
・業務管理
施設警備業務2級 ・服装・護身用具 ・書面の交付 ・労働三権
・巡回業務実施上の留意事項
・負傷者の救護と危険防止等の措置
・その他事故発生時における応急措置
交通誘導警備業務2級 ・労働三権  ・刑法第36条(正当防衛)
・合図実施中における受傷事故防止
・小旗、大旗による合図の方法 
・事故現場における二次災害防止及び交通誘導 
・消火器の機能及び使用方法

 

 以上のように、法令にかかわる項目よりも、業務の実施にかかわる項目に誤答率が高くなっていることが分かります。実務に関することは分かっているようで実は幅広い範囲から出題されるので、正確に理解又は把握していないことや、実際に行っていることと実務の基本的なこととの隔たりがあることが要因となっていると推測します。
 そこで、実技試験の難易度を減点状況によって分析すると、施設警備業務1級において1位「巡回実施要領」、2位「警察機関等への追加連絡要領」、3位「警戒じょうの操作要領(応用)」となっており、令和4年と同様の順位となっております。
 また、交通誘導警備業務1級では、1位「交互通行による交通誘導要領」、2位「警察機関等への追加連絡要領」、3位「徒手による護身術(応用)」となっています。
 続いて、受講者数の多い施設警備業務2級と交通誘導警備業務2級の実技試験を種目別に減点数を分析すると、次のようになります。

⑤ 施設警備業務2級の種目別の減点状況

施設警備業務2級種目 受考者数 減点総数 減点総人数 平均減点数 減点率(%)
出入管理要領 556 329 140 2.4 25.2
自動火災報知設備の操作要領 351 89 3.9 16.0
巡回実施要領(DVD) 662 192 3.4 34.5
警察機関等への連絡要領 147 77 1.9 13.8
負傷者の搬送要領 155 109 1.4 19.6
警戒じょうの操作要領 194 94 2.1 16.9

 

⑥ 交通誘導警備業務2級の種目別の減点状況

交通誘導警備業務2級種目 受考者数 減点総数 減点総人数 平均減点数 減点率(%)
大旗による車両の誘導要領 1,833 1,886 466 4.0 25.4
素手による車両の後進誘導要領 1,465 345 4.2 18.8
二次災害防止要領 606 312 1.9 17.0
警察機関等への連絡要領 770 206 3.7 11.2
負傷者の搬送要領 1,539 470 3.3 25.6
徒手の護身術(基本) 928 433 2.1 23.6

 

 以上のとおり、施設警備業務2級及び交通誘導警備業務2級を中心に1年間のデータに基づき分析しました。
 ここで注視していただきたいのは、施設警備業務2級では、出入管理要領及び巡回実施要領(DVD)の減点率。そして、交通誘導警備業務2級の大旗による車両の誘導要領及び負傷者の搬送要領並びに徒手の護身術(基本)の減点率です。
 施設警備業務2級の巡回実施要領(DVD)は最も高い減点率で3人に1人が減点されており、出入管理要領と交通誘導警備業務の3種別では、4人に1人が減点となっていることです。
 実技試験は、受講者1人当たり100点を持って受講します。そして、試験では点表に示された項目ができなかった場合、その項目に配転されている減点数を持ち点の100点から減点する方法による試験です。つまり、実技試験6種別の実技試験を受けて累積10点以上減点されると、学科試験が100点満点でも不合格(講習の課程を修了できない)となる試験です。よって、減点率の高い種別に注意が必要です。この点も是非参考にしていただきたい。
 受講上の研鑽の基本は、講習教本をできるだけ早く取り寄せ、何度も読み込み、教本に示されている「要点」を把握した上で、「涵養問題集」をやってみる。やってみた結果、全ての問題の5つの枝が全部理解できるかを確認し、できていないところは、さらに教本を読み込み、必要事項を正確に記憶することが肝要です。
 それでも人間は、忘れる動物です。そこで忘れないための努力が欠かせません。それこそが講師の講義のポイントを整理して復習をすることです。
 また、実技は、身体で覚えることが大切です。自己流では合格できません。あくまでも基本に忠実に体得することが必要です。そのためには、2級についてはまず講習教本の後ろに「実技訓練編」として、実技4種目の展開図等を添付しています。それを参考にして一連の動き、文言を覚えておくことです。そして、事前講習や本講習において、その習得したものを必要に応じて修正したり、新たに覚えたりして完成度を高めることが効果的です。
 私どももこの結果に基づいて、同種別の講師研修会において生かし、より効果的かつ適正な講習会を実施することに努めています。
これから受講される方々は、この分析結果を参考にされ、効果的な事前勉強をされて、多くの方々が合格されることを希望いたします。

Security News for professionals main center ad
Security News for professionals main footer ad