加速する5Gを活用した次世代警備システム開発

パソコンやスマートフォンだけでなく、家電、自動車、医療機器等がネットワークにつながり、データ活用の領域が広がりをみせている中、5G(第5世代移動通信システム)を活用したビジネスがこれからの社会を大きく変えるものとして注目されている。警備業務においても、5Gを活用した次世代警備システムの開発・提供が進んでいる。
スタジアム警備の実証実験が「MCPC award 2020」でグランプリ・総務大臣賞受賞
セコム株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:尾関一郎)、KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:高橋誠)、株式会社KDDI綜合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役社長:中島康之)の3社が、東大阪市の協力のもと2019年8月に東大阪市花園ラグビー場で実施した、5Gを活用した次世代スタジアム警備に関する取り組みが、2020年10月29日、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が開催する「MCPC award 2020」において、ユーザー部門で「モバイルテクノロジー賞」を受賞するとともに、「グランプリ」および「総務大臣賞」に選ばれた。
「MCPC award」は、モバイルコンピューティングの導入により高度なシステムを構築し、顕著な成果を上げている企業や団体を表彰する日本で初めての試みとして2003年度から開催されている。「ユーザー部門」と「サービス&ソリューション部門」の2部門で選考が行われ、「ユーザー部門」においてはモバイルテクノロジー賞、モバイルビジネス賞、モバイルパブリック賞、モバイル中小企業賞が表彰され、さらにその中から「グランプリ」および「総務大臣賞」が選ばれる。
このたびの受賞は、KDDIのスマートドローン、セコムの自律走行型巡視ロボット、および警備員に装備したカメラからの4K映像を、5Gを経由してセコムの移動式モニタリング拠点「オンサイトセンター」に伝送。広範囲なエリアを高精細な映像で確認するとともに、受信した映像をAIを活用した人物の行動認識機能で解析。異状を自動認識して管制員に通知することで、対象警備エリアにおける異状の早期発見、不審者の認識から捕獲等、一連の警備対応が可能になることを実証した成果が認められた。
今後も3社は、5GやAI、ドローン、ロボット等のテクノロジーを活用した、効率的かつ高品質な警備サービスを提供することで、安全安心なイベント開催の実現を目指したいとしている。
「5Gを活用した次世代スタジアム警備」実証実験詳細
https://www.secom.co.jp/corporate/release/2019/nr_20190819.html
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人の行動や動作で不審者を検知するソリューション
株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:井伊基之)は富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:時田隆仁)が提供する「不審者検知ソリューション」を、5Gパートナーソリューションとして2021年1月20日から提供を開始した。
本ソリューションは、人の行動や動作(特有の振動パターン等)を監視カメラの映像から分析・数値化し、その結果をもとに不審な行動を起こす可能性のある人物を検知するというもの。人が発する特有の振動パターンに基づいて不審行動を検知するため、不審行動パターンのような教師データを事前に登録する必要がなく、新規利用や更新時の教師データの開発・登録コストが不要なのが特長。既に導入済みの監視システムのカメラ(一部機種を除く)がある場合でも活用することができる。
従来の監視カメラや人による警備では、常時監視をしていなければ犯罪行動への即時対応は難しく、犯罪行動を未然に防ぐにはその予兆を見抜く高度なスキルが要求される。しかし、人手不足が深刻化している昨今は対応がますます困難になってきており、そのような課題を事前に不審行動を検知するシステムで解決するのが本ソリューション。5Gと組み合わせて活用することで、高精細な映像伝送とそれによる検知制度の向上、安定した無線接続を可能にする。
NTTドコモ「不審者検知ソリューション」詳細
https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/spds/index.html
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羽田空港第3ターミナル駅で警備モデルの高度化を図る実証実験実施
ALSOK(綜合警備保障株式会社、本社:東京都港区、代表取締役社長:青山幸恭)、京浜急行電鉄株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:原田一之)、NTTコミュニケーションズ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:丸岡亨)の3社が、2020年11月20日に合意したローカル5Gで警備業務を高度化するための実証実験を、2021年2月から数回に分けて実施する予定。
今回の実証実験は、「地域が抱える課題を解決するモデルの構築」と「遮蔽物の多い閉鎖空間で電波を効率良く伝搬させるための技術検証」で、京浜急行電鉄の羽田空港第3ターミナル駅にて行われる。
地域の課題を解決する実証については、高精細4K映像を用いたドローンやロボットを使って自動巡回・遠隔巡回を実施。行動検知AIによる不審行動や歩行サポートが必要な人の自動検知システム、対処に最適な警備員に指示をするALSOKスタッフ等連携システム、およびすべての情報を集約する遠隔統制席(監視センター)を構築する。
閉鎖空間で電波を効率よく伝搬させる技術の実証については、羽田空港第3ターミナル駅に、遠隔巡回・遠隔監視を行うローカル5Gシステムを構築し、遮蔽物の多い屋内空間でローカル5Gの電波伝搬等に関する検証を行う。
警備用途におけるローカル5G活用メリットは、①外部からの侵入や無線のなりすましに強いこと。②高精細4K映像を送信しながら移動するドローン・ロボットとの間で安定して通信できること。③ほかの無線電波に影響されず、独立して安定した運用が可能。などが挙げられる。
3社は本実証実験を通じ、さらに高まる警備ニーズへの対応、従来のマンパワーを中心として警備モデルの変革を目指し、ローカル5Gの活用により警備プロセスを高度に発展させることで、安全安心な社会づくりに貢献していきたいとしている。

総務省は、5Gを活用した新たな市場の創出に向けて、様々な分野の関係者が参加する5G総合実証実験を2017年度から実施してきた。警備業において、5Gを活用したサービスがスタンダードになるのは、そう遠い話ではないようだ。
(藤原 広栄)