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先人からのメッセージ~碑に刻まれた災禍の記憶~ ⑭ | 公的記録に残っていない栃木市の干ばつ

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先人からのメッセージ~碑に刻まれた災禍の記憶~ ⑭ |  公的記録に残っていない栃木市の干ばつ

先人からのメッセージ~碑に刻まれた災禍の記憶~ ⑭

 

 「天災は忘れたころにやって来る」。物理学者・寺田寅彦(1878~1935)のことばと伝わります。備えをおこたってはいけないという戒めの名言として知らない人はいないでしょう。ただ、私たちはその重みをどこまで実感しているでしょう。近年の出来事を振り返ると「こんなこと想定外だった」と釈明されることが多すぎはしないでしょうか。実のところ人間は元々そう言いたがる生き物なのかもしれません。そんな本性を知っていたから、先人は消してはいけない記憶を碑に刻んで後世に伝えようとしたのではないでしょうか。先人のそんなメッセージの遺る碑が日本各地にあります。国土地理院は天災を後世に伝えるそうした碑の記号を新たに作り、2019(令和元)年から「自然災害伝承碑」として地理院地図に載せ始めました。私たちも、人々の安全と安心を守るためのセキュリティ・ニュースを発信する会社として、天災はもちろん、人が引き起こした禍の記憶を伝える碑も各地に訪ね、先人からのメッセージを紹介したいと思います。「想定外」が一つでも減ることを願いつつ。

 
 

公的記録に残っていない栃木市の干ばつ

 

助け合って乗り越えた住民の思いがにじむ記念碑

 
 
「大旱魃記念」碑
碑の概要
碑名 大旱魃記念
災禍名 高谷町干ばつ
災禍種別 干ばつ
建立年 1940(昭和15)年?
所在地 栃木県栃木市高谷町、萬福寺門前
伝承内容 昭和15年5月の苗代の時季になっても未曽有の大干ばつで雨が降らず用水が枯渇。50余町歩(約50ha)の水田の田植が不可能の状況になった。その死活問題に直面した住民は協議の結果、2カ所の井戸を掘り、その水を使って協同で田植えをし7月11日に辛うじて完了できた。これは住民が私心を捨て公利のために一致協力した美果であり後代の規範とするに足るものであり、事実を記して記念する
 気候の変動も、人知を超える領域がまだ広く残っている分野だ。2021(令和3)年のノーベル物理学賞が日本出身の気象学者で米国籍の真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう、90歳)氏に贈られたのは、その中の地球温暖化という大問題の解明に、コンピューターを駆使して切り込んだ業績が高く評価されてのことだった。大気と海水の温度が上がることによる弊害はいくつもあるが、干ばつもその一つ。これからさらに増えると予測されているが、メカニズムは真鍋氏たちの努力で解き明かされつつあるものの、防ぐ手立てはさらに難しい。ましてコンピューター以前の世界では、いつ襲われどう対処すればいいのかお手上げの状態だった。そうした干ばつに襲われつつも住民同士が助け合って危機を乗り越えたことを語る記念碑が、栃木県栃木市に建っている。狭い地区のことだったせいか市などの記録には残っていないが、成果を喜ぶ住民の思いがにじむ碑だ。
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