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優成サービス株式会社 八木正志会長(71)⑥ 【私の警備道】~第6回 モットーは「目くばり 気くばり 心くばり」~

特集記事インタビュー
優成サービス株式会社 八木正志会長(71)⑥ 【私の警備道】~第6回 モットーは「目くばり 気くばり 心くばり」~

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第5回 東日本大震災の現地支援に1年7カ月

 

第6回 モットーは「目くばり 気くばり 心くばり」

 


 

オリンピック・パラリンピックにつながる道

 

 交通誘導からハイブリッド警備を経て福祉バイオトイレカーへと進んできた優成サービスの軌跡は、オリンピックやパラリンピックが提唱し目指す方向と重なるところがある。オリンピック憲章はオリンピズムの根本原則で「すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。 オリンピック精神においては友情、 連帯、 フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる」と謳う(下線は筆者)。パラリンピックも重視する価値として「勇気」「強い意志」「インスピレーション」とともに「公平」を挙げ、多様性を認め、創意工夫をすれば誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力だと説明する。

 障碍のあるなしで差別されることがなく、スポーツを含めた様々な活動をする機会が公平に得られるようにし、お互いが分かり合える場を持つ。事業展開の中で試行錯誤しながら、八木会長はこうしたことが実現できるための一助となる福祉バイオトイレカーにたどり着いた。一連の活動が、大手都市銀行の目を引いた。


 

大手都市銀行のビジネス審査会で受賞

 

三菱UFJフィナンシャルグループの
「Rise-Up-Festa」でプレゼンテーションをする
八木会長

 2014(平成26)年4月24日、八木会長は東京・丸の内のJPタワーでプレゼンテーションをした。三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)が実施した「BTMUビジネスサポート・プログラム『Rise Up Festa』」だ。三菱UFJファイナンスグループがビジネスパートナーとして支援する中小企業を選考する審査会で、全国から応募し書類選考を通った企業の代表が集まっていた。八木会長のプレゼンテーションは「福祉バイオトイレカーによる外出支援~肢体不自由な高齢者や障がい者が幸せを享受できる社会へ~」。八木会長はパワーポイントを使い、工事現場用車両にトイレを載せようとした背景と規制の障壁などを乗り越えた経験、被災地やスポーツイベントなどでの車いす利用者支援の実績などを織り込みながら、警備業から福祉へと歩んでいく過程を説明。「みなさんの力で誰もが幸せを享受できる社会にしませんか?」と結んだ。

 「応募を勧められ『こんな警備会社もあるんだ』と一般の人に知ってもらうきっかけにでもなればと出たんです。いつになく真面目にしゃべりました」

 八木会長はこう言って笑うが、審査の結果、優秀企業8社の一つに選ばれた。


 

5項目で「SDGs」認定

 

SDGs事業認定証

 2000年代に入り、地球温暖化や環境汚染への人々の関心が高まり、障碍者を含め様々なハンディキャップを持つ人たちとの共生社会の重要性も認識されだした。「循環型社会」「持続可能な発展」といった言葉もしばしば用いられるようになった。2015年の9月には国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、それに記載された17項目が「持続可能な開発目標(SDGs)」とされた。八木会長は日ごろの活動を振り返り、「ウチも当てはまることをやっているのでは」と思って、日本SDGs協会に4項目で認定申請を出した。

 「そうしたら、協会からあなたの会社は5項目が該当しますと返答が来ました。ちょっと驚きましたね」

 2018(平成30)年8月、優成サービスは「すべての人に健康と福祉を」「安全な水とトイレを世界中に」「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられるまちづくりを」「気候変動に具体的な対策を」の五つの目標を実践する企業として認定された。翌年4月には神奈川県が企業・団体等などと連携してSDGsの普及促進活動に取り組む「かながわSDGsパートナー」にも登録された。


 

東京オリンピック・パラリンピック視野に

 

東京都・多摩市合同総合防災訓練で
八木会長(左)の説明を聞く小池都知事

 2019(令和元)年9月1日、八木会長は声をかけられて東京都・多摩市合同総合防災訓練に福祉バイオトイレカーを参加させた。その折、小池百合子知事が立ち寄り、八木会長の説明を熱心に聞いたという。その後、都の職員が海老名市の会社に来て、福祉バイオトイレカーの詳しい仕様や出動可能な期間、場所などを確認していった。明言はしなかったが、オリンピック・パラリンピックでの利用を念頭に置いての視察だったとことは分かった。毎年神奈川県横須賀市で開かれる全国車いすマラソンにトイレカーを出してきた実績もある。2004(平成16)年アテネと2012(同24)年のロンドンのパラリンピックで入賞した国内トップ級の車いすランナー花岡伸和選手から「バイオトイレカーのおかげで安心してレースに出られる」というメッセージももらっていた。自信はある。声がかかればすぐ出せるように心づもりはできていた。

 しかし、コロナ禍でオリ・パラは延期に。終息が見通せずオリ・パラ開催も危ぶまれているが、八木会長はあきらめていない。トイレカーには新型コロナウイルスを不活性化させる効果が確認された「C紫外線」を使う独自の殺菌灯も装備し、スタンバイはできている。

 「複数の大手自動車メーカーから、ウチの車をモデルに電動系のトイレカーを造ってオリ・パラに参入したいというオファーもあります。障碍のあるなしにとらわれないノーマライゼーション社会をアピールする機会として、何とか東京大会が無事に開催できることを願っています」


 

息子に社長継承、当面二頭立てで経営

 

 1年半前、34歳の次男・優(まさる)氏に社長を引き継いだ。警備は「目くばり 気くばり 心配り」だというモットーのもと、15人の少数精鋭で会社を運営する。当面は経営の「ハイブリッド警備」という柱は社長が、もう1本の「福祉バイオトイレカー」という柱は八木会長が担う。現在5台保有する福祉バイオトイレカーにつぎ込んだお金はざっと8千万円。

 「私が作った借金は私が返す」

 返し終えた時、2本の柱とも社長に任せるつもりだ。

 
 

(阿部 治樹)


 

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