令和2年7月豪雨で深刻化する熊本県警備業の人材不足
7月16日、気象庁は7月3日から14日までの12日間に全国964の観測点で観測された合計雨量は、およそ25万3000ミリとなり、2018年6月28日から7月8日までの11日間で観測されたおよそ23万3500ミリを上回ったと発表した。
全容が見えてきた熊本県の豪雨被害(熊本日日新聞)
「令和2年7月豪雨」と命名された今回の集中豪雨。とりわけ被害が大きかったのが九州地方で、中でも甚大だったのが熊本県。県南部の人吉市、球磨町、芦北町では球磨川の氾濫などで浸水や土砂崩れが相次いだ。県内の死者は65名に上り、2名が行方不明のまま。18日には県が自衛隊や県警、消防など1,800人態勢で20、21日に2名の一斉捜索を行うと発表した。
18日現在、熊本県内の住宅被害状況は、全壊が557棟、半壊43棟、床上浸水5,895棟、床下浸水1,990棟、一部損壊104棟が確認されている。交通インフラも各地で寸断。県と市町村が管理する橋は県南の22カ所で流出や損傷があり、県道や県管理の国道は19路線で通行止めになっている。不通となっている国道219号は代替え道路として九州自動車道八代ICと人吉IC間を無料開放しているが、緊急工事により一部区間が17日に仮復旧。緊急車両や村が許可した車両の通行が可能となった。
芦北町商工会によると、会員企業の7割が床上浸水。損害額は50億円を超える見込み。11日の熊本県の発表では、農林水産関係の被害額が115億円に上り、被害額は今後さらに増える見通しだ。
13日には安倍総理が被災地を訪問し4,000億円の支援を約束。15日には赤羽国土交通相が、県が管理する219号の復旧工事については国が代行する方向で検討する考えを示した。関係者によると、道路橋10カ所、県道の一部なども国による代行復旧を検討しているという。
復旧作業が進むとともに懸念される人手不足
甚大な被害をもたらした今回の豪雨が、警備業にどのような影響を及ぼしたのか、死亡者が出た福岡県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県の警備業協会に確認したところ、会員企業で被害にあったという報告はなく、行政からの支援要請についても今のところはないという。業務についても熊本県を除いては大きな影響があったという話は聞かれなかった。
熊本県セキュリティ共同組合の田中暢彦専務理事によると「通行止めの道路に24時間態勢で警備員を交代で配置、海上保安庁がヘリコプターで物資輸送している八代港で警備員が交通誘導を行うなど、降雨の最中にも緊急の依頼を受けた業者があったようです。芦北町に近い水俣市にある会員企業に確認したところでは、道路が寸断されるなどの被害が出た現場の緊急工事の警備の要請や、二次災害の恐れがあるため警備員を配置してほしいという発注があるそうです。それ以外にも、ボランティアで数人のスタッフを被災地に派遣しているという状況でした。これから本格的な復旧工事が始まると、それに伴う警備業務の依頼やボランティア活動が増えていくものと思われます」
豪雨からおよそ2週間が過ぎ、被害の全容が見えてくるとともに本格的な復旧作業が始まったが、懸念されているのが人手不足。
自衛隊が大型災害ゴミの搬出を行い少しずつ復旧作業は進んでいるものの、一般ボランティア受け入れについては新型コロナウイルス感染防止のため、県内在住者に限定されていることもあり人手不足による復旧の長期化が懸念されている。もともと人員不足問題を抱える警備業も、今回の被災によってさらなる人員不足が心配されるところだ。
「2年前の熊本地震以来、警備業界では慢性的な人員不足が続いています。地震の際には県外の業者が警備員を手配して災害復興警備を行っていた時期もありました。今回も県内の警備業者だけで行うのは厳しいと思われます。まして、新型コロナウイルスの影響もありますから。まだどうなるかわかりませんが、おそらく今回も県外業者の協力を得ることになるのではないでしょうか」(田中専務理事)
地震、水害と度重なる自然災害に見舞われた熊本県。復興を支え、安心・安全な暮らしを取り戻すために、行政のサポートやボランティアの支援はもちろんのこと、警備の力も欠かせない。