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業界も要注意(民法第715条使用者責任)

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業界も要注意(民法第715条使用者責任)

 勤務中に事故を起こした従業員が被害者側に損害賠償をした損害を勤務先の会社に応分の負担を求めることができるか否かが争われた訴訟の上告審判決が28日、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)であり、同小法廷は「従業員は会社に対し、損害の公平な分担という観点から相当と認められる額を請求するこができる」との初判断を示した。

業界においては、従業員の損害賠償分をその勤務する会社が応分の負担をするという事案を聞くことは過去になかった。もちろん、使用として業務中従業員が不可抗力で起きた損害を賠償することや警備業務では、保安警備員が誤認逮捕によって、相手に与えた精神的な負担、名誉の回復等を慰謝料として請求され、それを賠償した事例は過去にあった。しかし、民法第715条の使用者責任の判断基準が最高裁で明らかにされたことから、今後、会社が被害者に賠償した後で従業員に負担を求める「求償権」はあるが、今回は逆の構図として「逆求償権」があることが明らかとなった。

この事案の原告の女性は、運送大手の福山通運のトラック運転手として業務中に死亡事故を起こし、被害者遺族に約1500万円の損害を賠償した。同社に賠償した賠償額と同等の支払いを求めた訴訟である。

民法715条は、被用者である従業員等が仕事で第三者に損害を与えた場合、使用者である会社等も賠償の責任を負う「使用者責任」を定めている。いわゆる、従業員の活動で利益を得ている以上、そこから生じた損害についても責任を負うべきだとの考え方に基づくものである。

ところが、2017年9月の1審の大阪地裁判決は「雇用主も相応の責任を負うべきだ」として逆求償の権利を認め、福山通運に約840万円の支払いを命じた。しかし、2018年4月の2審の大阪高裁判決は「本来は従業員が全額の賠償責任を負うべきだ」との考え方から逆求償を認めず、原告側の逆転敗訴なった。

小法廷は裁判官4人全員一致の結論である。小法廷は、使用者責任の規定について、労使双方で公平に損害を分担する趣旨だと指摘。公平分担の見地から相当額を会社に請求できると判断した。その上で、額の算定のため、審理を大阪高裁に差し戻した

最高裁が従業員を救済する判断を示したことで、企業活動に一定の影響を与える可能性がある。

 

 

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