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優成サービス株式会社 八木正志会長(71)③ 【私の警備道】~第3回 建設作業と誘導作業を一体化「ハイブリッド警備」を経営の柱に~

特集記事インタビュー
優成サービス株式会社 八木正志会長(71)③ 【私の警備道】~第3回 建設作業と誘導作業を一体化「ハイブリッド警備」を経営の柱に~

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第2回 警備員のキャリアスタート

 

第3回 建設作業と誘導作業を一体化「ハイブリッド警備」を経営の柱に

 


 

転機になった社員の死亡事故

 

 1993(平成5)年の夏、会社はビル建設現場の仕事を請け負っていた。男性社員が1人、資材を積んだトラックのバック誘導をしていたとき、悲劇が起こった。誘導していた社員が突然フラフラしだして後進してきたトラックに巻き込まれたのだ。暑い中、熱中症になって意識がもうろうとしたらしい。知らせを受けた八木会長は青くなって現場に駆けつけた。社員は即死状態だったという。

 「あの時の気持ちは経験した人しか分からないだろうと思います。順調だった仕事に慢心していたわけではありません。でも、起きてはならない事故が起きてしまった。とんでもないショックを受けました。それでも責任者として事後処理はしなければいけない。オロオロしながらも、どんなお叱りでも受けなくてはならないと覚悟はして、労働基準監督署に行きました」

 しかし、労基署からも警察からもお咎めは来なかった。勤務管理をはじめ労災保険関係など、しておくべき手続きはすべて法令に従ってしてあった。会社と責任者に落ち度はないと判断された。「それでも」と八木会長は言う。
 「自分のところで働いてくれていた人間が1人、命を落としたわけです。事実は消えません。この十字架は一生、背負っていくしかないと思っています」


 

免許と資格の取得にひたすら勉強

 

八木会長が受けたRST講座の修了証

 この事故を機に、八木会長は法令順守(コンプライアンス)に一層気を遣うようになり、安全につながる資格や免許はしっかり取っていくことを会社の方針とした。八木会長は手始めに社員に交通誘導警備2級を取得させるようにし、その後も同1級、雑踏警備2級、JR東日本列車見張員、土木施工管理技士2級、安全衛生管理者、サービス介助士といった資格の取得に力を入れた。八木会長自身も、旧労働省の「労働省方式現場監督者安全衛生教育トレーナー(RST)」講座を修了した。

 「高校まで勉強らしい勉強をしたことがなかった自分が、必死に勉強しました。今も、安全・安心につながる免許と資格は取り続けようと勉強はしています。それがひいては警備員、警備業の社会的地位を高め、労働単価を引き上げることにつながると考えています」

 死亡事故からおよそ1年、「安全」という言葉が頭から離れない八木会長は交通誘導の仕事をして気付いた。工事現場では車や人の流れを導くためにカラーコーンを並べる。その作業は建設業者。そしてそれに沿って交通誘導するのは警備会社。一緒にやったほうが建設作業と誘導業務の連係を取りやすく、安全も確保できるのではないか――。

 「そうか、ウチが建設業の許可を取ればいいんだ‼」

 同社の警備の柱「ハイブリッド警備」のアイディアが生まれた瞬間だった。


 

5年越しの粘り勝ちで建設業許可取得

 

建設業許可証。更新を続けている

 しかし、言うは易(やす)く行うは難(かた)し。八木会長は身をもってこのことわざの意味をかみしめることになる。当時はバブル景気の影響もあってただでさえ建設業者があふれていた時代。政策は業者を減らす方向に流れていた。そんな潮流に逆らうかのような動き。八木会長が県に申請しに行ったとき、担当者に「何を考えているんだ」というような顔をされたという。

 「そりゃそうでしょうね。そんな時代に建設をしたこともない警備会社が許可を取ろうってんですから。当然のように申請の不備や甘いところを突かれて門前払い。でも、簡単にいかないということは織り込み済み。あきれられようが、しつこく意地でも取ってやろうと決めていました」

 申請→差し戻し→再申請→差し戻し→再々申請→差し戻し……。あきらめるのを待つかのようなやり取りが続いた。そしてついに5年後の1999(平成11)年5月。「建設業 神奈川県知事 許可(般-1)第62873号許可」が下りた。取得項目は、土木、とび、舗装。名実ともに「ハイブリッド警備」をする会社が誕生した。あわせて「ハイブリッド警備」を商標登録した。

 土木や建設の知識と免許を持ち、専門用語が通じる警備会社。例えば2車線を1車線に規制する必要がある建設工事現場では、八木会長の会社が、建設業者と打ち合わせをした後にCADで図面を引いて実測もし、一緒に警察に申請に行く。その場で同社が「今度こうした工事をしてこういう規制をしたい。警備員はこことここに何人配置します」と説明すると一発で通ったという。この「能力」に大手の建設会社が大喜びしたそうだ。ほどなく、八木会長の会社は大成建設の土木部会の正会員になった。

 
 
 
 

 会社の業績が順調に伸びてその後の何年かは八木会長も多少、派手な生活をしたという。週に3、4回は接待やお付き合いで飲みに出て、帰りはタクシー。そんな暮らしぶりに変化をもたらしたのが車いすに乗った人の一言だった。

(阿部 治樹)


 

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