「アジアの経済大国に相応しい国際線旅客空港を目指す成田国際空港」にどう係るか

千葉県庁で開催された4者協議会(国土交通省、成田国際空港会社、周辺市町村)において、訪日外国人の増加が見込まれることから、現在の発着数を30万回から34万回に引き上げる。
平成18年には、将来的には50万回に引き上げることが合意済みである。
すでに成田空港は、B滑走路の延長、3本目(3500メートル)の滑走路の新設など機能強化に動き出している。
しかし、ハード面での機能強化に併せ課題となっているのが人材の確保である。航空業界では、航空機の誘導や受付などの地上勤務を担うグランドハンドリング、手荷物検査を行う空港保安検査業務(空港保安警備業務)への人手不足が深刻な状態となっている。
コロナ禍で空港関係の従事者は激減したが、現在4万人まで回復しているものの、それでも必要な7万人には程遠い状況が続いている。
成田国際空港会社は、「外国人材・定住促進連絡協議会」を発足して、「特定産業分野」に空港を指定し、特定技能外国人の受入れを28年度までの5年間で4,400人としており、この数は全国で働く外国人の5倍近い数である。
政府は、訪日外国人を2030年までに6千万人という目標を立てているが、日本政府観光局(JNTO)が発表した2024年1年間の訪日外国人旅行者数(推計値)は3,686万9,900人となっており、これまでの過去最多だった2019年(3,188万2,049人)を約500万人、15.6パ-セント増加している。その数の約1.6倍に当たる数値である。
警備業界でも人材不足の深刻な状況下にある中で、(一社)全国警備業協会も「特定産業分野」を目指し、準備を進めているとことであるが、今後は、デパートやスーパーマーケット、コンビニ業界なども外国人材の活用を積極的に取り組んでいる実情からすると、特定産業分野と指定されたとしても、2国間協定を結んでいるアジアの国々の送り出し機関と有効な関係締結が実現しない限り、人材の確保は、ままならない。
また、受け入れ活用する業界と企業は、外国人の管理として、日常生活の基盤の整備(寝食場所の整備、日本語のレベルアップ)、就業環境の整備(環境と仕事のバックアップ方法)、技術指導教育体制の整備(教育及び指導制度の確立)等が必要である。特に、警備業では、75パーセントが50人未満の企業であるから、経営基盤の脆弱性から寮や賄いといった寝食の整備を単独で行うことは、厳しい状況にあると言える。そこで、企業のグループ化によって共同で寮や賄いを整えることで、費用負担が軽減され、日常生活の基盤整備が可能となる。
警備業界には、事業協同組合が全国に22団体あるが、このような事業目的で設立された協同組合が主体となって組合員の外国人人材の育成、活用サポートとなれば、おのずと事業協同組合の活性化にも役立つはずである。
警備業は、エッセンシャルワーカーである。その意味からしても安全産業の中核を成す産業として、人材不足による産業の衰退があっては、国民の安全安心に寄与できるのか危惧するところである。